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Visible spectra of boulders on the asteroid Ryugu:
リュウグウ表面の可視光スペクトル解析

 小惑星探査機「はやぶさ2」に搭載された光学航法カメラONC(Optical Navigation Camera)によってリュウグウ表面の 可視光スペクトルが様々なスケールで調査されています。はやぶさ2は2018年6月下旬にリュウグウから20 km離れた ホームポジション(ホバリングを続ける定常位置)に到着しました。到着までのアプローチフェーズ観測(分解能~1 km/pix)ではリュウグウが全球的に 一様なスペクトルを持つことが示されました。その後のより高分解能な観測(分解能 ≦2 m/pix)では、赤道リッジ・クレーター・ボルダーなどで 局地的スペクトル多様性が発見されました[1]。
 赤道リッジとはリュウグウの赤道域に存在する比較的明るい領域のことで、可視光スペクトルが全球平均に比べて青いという特徴を持ちます(Fig. 1)。 またリュウグウ上のいくつかの小さなクレーターは内部が比較的青いスペクトルを持つことが確認されています[2]。リュウグウ上で最大の岩塊で あるOtohimeは面によって異なる反射率とスペクトルの傾きを持っており[3]、その他の比較的大きなボルダー達のスペクトルの傾きや反射率などの特徴量分布には 系統的傾向が見られます(Fig. 2, 3)。
 こうした色の不均一性を生む原因の候補として熱変性と宇宙風化があります。リュウグウを含むC型小惑星は低いアルベドと平坦なスペクトル形から 炭素質コンドライトの起源であると予想されています。すなわち、リュウグウは炭素質コンドライトのような物質で構成されていると考えられているのです。 地上実験により、炭素質コンドライトのスペクトルは加熱や宇宙風化を模したレーザー照射によって変化することが明らかになっています(Fig. 4)[4]。 熱変性は小惑星の形成史に深く関与しうる要素であり、宇宙風化についてはC型小惑星においてどの様に作用するのか未だ一般的な解釈が乏しく リュウグウ上での作用が注目されています。
 赤道リッジやクレーターの色の違いは、表面のレゴリスが流動や天体衝突で取り除かれたことで宇宙風化の度合いが異なる面が露出した結果なのかもしれません。 一方でボルダーの色の多様性は熱変性度の違いを表しているのかもしれません。リュウグウは破壊された母天体の破片が再集積して形成されたラブルパイル天体と されているため[5]、母天体内での26Alの放射壊変による内部加熱や母天体破壊時の衝突による加熱により異なった熱変性度を持つ破片を含んでいる可能性があるのです。
 このようにリュウグウの可視光スペクトルを調べることは小惑星の形成史や表面変化現象の理解のヒントになります。杉田研究室はONCの開発・運用に長らく関わっており、 装置の裏側を知っている強みを生かしてこうした解析を行っています。

文責:杉本

[1] S.Sugita et al., Science, Vol. 364, Issue 6437, eaaw0422, 2019
[2] T. Morota et al., JpGU, PPS03-08, 2019
[3] E. Tatsumi et al., LPSC, 50, 1753, 2019
[4] E.A. Cloutis et al., Icarus, Vol. 220, pp. 586–617, 2012
[5] S. Watanabe et al., Science, Vol. 364, Issue 6437, pp. 268-272, 2019

リュウグウの赤道リッジ


Fig.1 赤道リッジ[1]: リュウグウの赤道域の比較的明るい部分は赤道リッジと呼ばれます。 反射率係数はおよそ2.0 %です(リュウグウ全体平均は1.9 %)。ただし、ここでいう反射率係数は実験室標準条件 (入射角度, 反射角度, 位相角度)=(30 deg, 0 deg, 30 deg)での値です。 リュウグウには東経150度および西経60度を通るトラフと呼ばれる溝が存在し、 これによって東西半球に二分されています。赤道リッジは西より東バルジで目立っています。赤い矢印で示されているのは最大岩塊のOtohimeです。
ボルダーの反射率係数とスペクトルの傾き
Fig.2 ボルダーの反射率係数とスペクトルの傾き[1]: 横軸は波長550 nmでの反射率係数、縦軸はONC-Tの7バンドのうちb~xバンド間での傾きです。 青いプロットはOtohimeボルダー(Fig. 1中赤矢印)上の8地点を示しています。Otohimeはサイズが大きく、ひとつのボルダーですが面(地点)によって異なった 光学特性を示すため複数の地点を調べています。赤色のプロットは比較的サイズの大きい24個のボルダーを1ボルダーあたり1プロットで示しています。 背景の二次元ヒストグラムはリュウグウ全体の分布を示し、主にレゴリスの特徴を反映していると考えられます。

ボルダーの反射率係数とスペクトルの傾き
Fig.3 C型小惑星とリュウグウ上のボルダーのPCA[1]: SMASSII (Small Main-belt Asteroid Spectroscopic Survey II)という 小惑星サーベイのデータアーカイブのC型小惑星398個のスペクトルを使用し、これらの特徴をよく表すPC (Principal Component)軸を作成しました。 そのうちPC2, PC3空間での小惑星・リュウグウ上のボルダー・隕石の加熱実験および宇宙風化模擬レーザー実験の分布を示したのが上図です。 ボルダーとOtohimeのデータ点はFig.2と同じ24個のボルダーとOtohime上の8地点です。
Murchison隕石とIvuna隕石の加熱によるスペクトル変化
Fig.4 Murchison隕石(右)とIvuna隕石(左)の加熱による光学特性変化(Brown大学の隕石・鉱物などのスペクトルデータアーカイブRELABより): Murchison, Ivuna共に500度までは温度が上がるほどアルベドが暗くなり、それ以上の高温では明るく変化します。加熱によって短波長側の吸収が弱くなり、 スペクトルの傾きが平たくなります。[Hiroi et al. 1996]

 

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