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2015-1st Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Hikaru Hasegawa - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Apr. 13th 2015、17:00 - 19:00

Title
Brachinite中のカンラン石結晶方位配向性
Abstract
Brachinite は主にカンラン石から構成される primitive achondrite の1グループであるが,母天体の形成過程についての理解はあまり進んでいない.brachinite に属する隕石は,ペアを除くと現在 30 個ほど見つかっているが,そ れ以外に “brachinite-like” と呼ばれる ungrouped の brachinite に似た隕石がいくつか存在している (Day et al,2012; Keil, 2014).これらは岩石学的特徴や酸素同位体比,微量元素組成などに brachinite との関連性が見られるが,完全には一致せずに ungrouped となっているものである.これらの隕石を詳細に研究し,brachinite と比較していくことでbrachinite の形成過程を含めた太陽系惑星分化過程へ理解が得られることが期待される.
その一つである Divnoe は 1981年にロシアで発見された隕石で,brachinite との関連性が指摘されているが,現在 ungrouped に分類されている(Graham,1983; Petaev et al., 1994).Divnoeは大部分がカンラン石で構成されているが,薄片試料を観察するとカンラン石の各粒子が特定の方位性を持つ様子が見られる.近年,diogenite中のカンラン石粒子の結晶方位性に着目した研究によって,その隕石が母天体において固体状態にあった時に塑性変形を受けたことが指摘されて いる (Tkalcecet al., 2013).このように,隕石中のかんらん石結晶方位を研究することは,その隕石母天体における火成活動,形成過程に強い制約を与えることが期待される.そこで本研究では,Divnoe隕石のカンラン石の結晶方位定向配列 (crystallographic preferred orientation: CPO) に着目した.鉱物のCPO は鉱物が転位クリープによって変形する過程で発達する岩石組織のひとつである (大内, 2013).転位クリープとは地球の下部地殻や上部マントルにおけるカンラン石の最も一般的な変形メカニズムであるため,隕石中の CPO を地球岩石中のものと比較することは,隕石母天体での形成過程を考えていく上で非常に重要である (Karato et al., 1986).本研究では,電子線後方散(EBSD)を用いて薄片試料の分析を行なってカンラン石の結晶方位の配列を調べ,鉱物学と全岩化学組成,さらにはカンラン石の結晶方位定向配列などを組み合わせて考察を行なっていく予定である.そこで,今回のセミナーでは brachiniteやかんらん石結晶方位配向性などに関するレビューを発表するつもりである.




2015-2nd Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Yuki Hibiya - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Apr. 21st 2015、10:30-12:00

Title
初期太陽系年代学における絶対年代基準の有用性
Abstract
短寿命放射性核種 (26Al, 53Mn, 60Fe, 182Hf など) は、半減期が短いため、初期太陽系進化諸過程の高精度な年代決定に利用される。しかし、その年代計は相対年代のみを与える上、年代測定の際には「初期太陽系における短寿命親核種の均質な空間分布」を仮定する必要がある。短寿命核種相対年代を「今から〜年前」といった絶対年代に変換するには、消滅核種年代測定と U-Pb 絶対年代測定の両方が適用可能な隕石 (絶対年代基準)が必要となる。現在、絶対年代基準として最もよく用いられるのはアングライト隕石 D’Orbigny (4564.42 ± 0.12Ma; Amelinet al., 2008) であるが、初期太陽系における親核種均質性の評価の為には、他の天体から飛来した絶対年代基準となり得る古い隕石が必要である。そのためには、アングライト隕石と同等の古い結晶化年代をもち、その後の風化・変成の少ない隕石を探す必要がある。本研究の対象試料である NWA 6704 は、2010年に発見された超苦鉄質な始原的エコンドライト隕石であり、風化や衝突による鉱物組織への影響が少なく、4563.75 ± 0.41Ma と非常に古い U-Pb 年代を示す (Iizuka et al. 2013) 。
本研究ではこれまでに、鉱物観察および主要・微量元素定量分析を行い、その結果に基づいてこの隕石の絶対年代基準としての有用性を明らかにしてきた。さらに、最近ではより詳細な鉱物観察およびEBSD分析による三次元的な構造把握を通し、その結晶成長過程および熱履歴・熱源の考察を行っている。今回のセミナーでは、初期太陽系年代学における絶対年代基準の有用性について、レビューを発表する。




2015-3rd Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker 1: Masaru Inoue - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Apr. 28th 2015、10:30-11:15

Title
深成岩体におけるクリプトパーサイトの不均質性
Abstract
 多くの花崗岩やアルカリ岩に含まれるアルカリ長石には,パーサイト組織と呼ばれる特徴的な組織がみられる.パーサイト組織は,カリ長石中にラメラ状のナトリウム長石が含まれるものをいう.ラメラの大きさはさまざまで,肉眼で確認できるものから、顕微鏡サイズのもの,または電子顕微鏡サイズまである.このうち,肉眼で観察できるほど粗大化したものは,パッチパーサイト(patchperhite)と呼ばれ,その成因はしばしば岩体冷却ステージ末期の熱水変質(deuteric coarsening)と関連付けられる(例えばParsons and Lee 2009).
 一方,電子顕微鏡で観察されるサブミクロンオーダーのラメラは,クリプトパーサイト(cryptoperthite)と呼ばれる.形成のメカニズムにかかわらず,ラメラの一次的な粗大化(primary coarsening)は拡散によるため,温度と時間に依存すると考えられる.そのため,岩体の冷却速度を見積もるために,その粗大化カイネティクスを明らかにする試みがなされてきた(Yund and Chapple 1984など).特に,Yund (1974)やYund and Davidson(1978)では,クリプトパーサイトの再現実験が行われており,火山岩などの比較的急速な冷却を示す岩石の粗大化カイネティクスについてはよく理解されている.
 しかし,深成岩などの徐冷された岩石中での粗大化カイネティクスについての理解は乏しい.その要因として,徐冷に伴う両相の結晶系の変化,冷却ステージ後期に被る熱水変質が障害となっていると考えられる.特に後者は,クリプトパーサイトの組織を乱すため(secondary coarsening),温度低下によって生じる一次的な粗大化と区別されるべきである.つまり、クリプトパーサイトの粗大化カイネティクスを明らかにするためには,二次的な変質を受けていない,よりフレッシュな組織を扱わなければならない.そこで,本研究では,岩手県北部に分布する一戸岩体のクリプトパーサイトをSEM観察することによって,一次的な粗大化の実像を明らかにする.また、クリプトパーサイトの地質速度計としての有用性についても議論する




2015-3rd Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker 2: Haruka Ono - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Apr. 28th 2015、11:15-12:00

Title
プラズマ発生過程における周波数シフト量の計算
Abstract
 高次高調波発生はX線領域のコヒーレント光を生み出すための手段である。高調波の短波長化のため基本波の強度を上げると、媒質の電離に伴うプラズマ密度の増加によって屈折率が小さくなり、基本波の位相速度が速くなる。その結果、基本波の中心周波数が短波長側へシフトする。この現象をプラズマ誘起ブルーシフトという。この時の周波数のシフト量を数値計算により見積もることが本研究の目的である。イオン化を考慮した非線形シュレディンガー方程式を用いて、時間と共に変化するパルス幅を含めた周波数シフト量を見積もった。
 パルス幅38 fs、実験でのピーク強度4.7×10^14 (W/cm^2)、1.0× 10^15 (W/cm^2)。媒質はArである。背圧5 atmの場合のノズル先端部を想定して、0.15 atmとした。実験結果と近いシフト量を概算した。計算結果を強度別に、シフト量と次数のグラフにすると、強度と次数があがるとシフト量が増加していくことがわかる。これは、強度と次数が上がると電離度が上がるのでプラズマによるブルーシフトが大きくなるということを示している。時間と共に変化するパルス幅を含め、実験値に近似する式も導出することでシフト量を概算することができた。




2015-4th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker 1: Yoshitaka Honma - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: May 12th 2015、10:30-11:15

Title
コンドライト隕石へのラマン分光炭質物温度計の適用
Abstract
 始原的な隕石には炭素が不溶性有機物として多く含まれており、隕石の母天体 が経験した変成作用を読み解く手がかりの一つとして用いられている。炭質物は熱変性を受けると黒鉛化が起こるが、この反応が不可逆であるため、炭質物の構造を読み解くことで温度計として利用しようとする研究がなされている。炭質物のラマンスペクトルには特徴的な2本のバンドが見られ(D-band,G-band)、このバンドの強度比や半値幅を用い、最高変性温度を求めることが可能であることが地球上の変成岩やコンドライト隕石についてわかっている。
 ごく最近になって地球上の変成岩中の炭質物の解析手法の改良が行われ、最大5本のバンドを用いて広い温度領域で温度計が適用可能となった(Kouketsu et al., 2014)。一方で隕石中の炭質物のラマンスペクトルの詳細な解析は行われておらず、低変成のコンドライト隕石については未だ成果が出ていない。そこで当研究では地球上の変成岩におけるラマン分光炭質物温度計の発展を参考に、炭質物のラマンスペクトルを最大4つのピークを用いた詳細な解析を行うことで、炭質物温度計の適用可能な範囲を低変成側に拡張することを試みた。




2015-4th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker 2: Akinobu Hayakawa - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: May 12th 2015、11:15-12:00

Title
ビスターピリジン金属配位結合を介したヒト血清アルブミン二量体の合成
Abstract
 多彩かつ高度な機能を有する蛋白質は、バイオマテリアルの基本ユニットとして広く応用されている。また近年、蛋白質を用いた新たな機能生体材料を合理的に設計する研究が注目を集めている。しかし、表面の化学的および構造的不均一性は、蛋白質の自己組織化を制御することを極めて困難とした。そのため蛋白質を一次元に規則正しく連結した超構造体の例は極めて少なく、分子量の小さな結晶化されたものに限られてきた。
 一方、ヒト血清アルブミン(HSA)は血漿蛋白質の約60%を占める分子量66.5 kDaの単純蛋白質であり、高い水溶性、光・熱に対する安定性、様々な薬物を包接できる多分子結合能を持っている。血漿中では細胞内外の浸透圧を維持する役割、薬物や代謝産物の運搬や貯蔵する役割を担っている。また還元型のシステインを34番目に一つしか持たないという構造的な特徴がある。我々は遺伝子組み換えにより、もうひとつ還元型のシステインを有する人工ヒト血清アルブミンの合成に成功している。この還元型のシステインに架橋配位子を修飾させることで、HSAを一次元に規則正しく連結させることができれば、水中で安定な蛋白質超構造体が合成できるものと期待される。
 そこで本研究は、Cys-34残基にターピリジル基を有するHSA(HSA-Tpy)を合成し、金属イオンとの配位結合を介して構造明確なHSA二量体を構築することを目的とした。




2015-5th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Mizuho Koike - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: May 19th 2015、10:30-12:00

Title
軽元素安定同位体比から探る、地球型惑星の表層環境
Abstract
 地球型惑星において、液体の表層水の存在は、気候変動や生命存在と密接に関わり、惑星の表層環境を特徴付ける重要な要素である。火星は、現在は乾燥寒冷気候を持つが、かつては表層水を保持し温暖湿潤であったとされる。地球や火星における水の起源と振る舞い(脱ガス・海洋形成・散逸等)を理解することは、過去〜将来の表層環境進化を論じるために重要である。
 水素・炭素・窒素等の軽元素安定同位体比は、現在の火星表層では大気散逸の結果として重くなっていることが知られている。惑星表層における軽元素安定同位体比の時間進化が分かれば、表層環境進化史の推定が可能になると期待される。更に、これらの同位体比は、太陽系諸天体の間で大きな変動幅を持つことが知られている。そのため、惑星の形成初期の(初生水等の)同位体比を決定できれば、水の起源の推定が可能になると注目されている。
 セミナーでは、これまでの研究成果の概要、および、太陽系内の軽元素安定同位体に関する現在の理解、今後の研究計画についてお話しさせていただく。




2015-6th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Atsushi Takenouchi - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: June 9th 2015、10:30-12:00

Title
隕石における衝撃組織と高圧鉱物、及び衝撃の推定
Abstract
 天体衝突現象は太陽系形成史に於いて重要な役割を果たしてきた基本的な現象の1つであり、多くの隕石にその情報が記録されています。それらの衝撃の痕跡は過去から現在までの天体の形成・進化史を読み解く上で隕石の母天体や挙動に関する重要な情報源ですが、衝突現象ではとても短いスケールで温度圧力が大きく変化するために全てを正確に読み解くのは難しく、完全な理解には至っていません。しかしこれまでに多角的な研究がなされており、定性的・半定量的には多くのことが分かってきています。
 今回のセミナーでは、その天体衝突現象について基本的となる考え方から、それらが隕石に与える影響(特に組織について)を簡単に紹介し、隕石観察による衝撃の推定はどのようになされてきているかを紹介する予定です(衝撃についてほとんど知らない人向けかと思われます)。また、自身の研究対象である衝撃により黒色化したカンラン石についても紹介し、今後の研究についても少し話す予定です。




2015-7th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Ryota Moriwaki - Tokyo Tech
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: June 16th 2015、10:30-12:00

Title
火星隕石TissintのPb同位体分析に基づいた火星マントル化学進化の解明
Abstract
 地球型惑星の化学進化・分化過程の理解には、地球とは異なる初期条件を持つ惑星に着目した比較惑星学的なアプローチが有効となる。火星は隕石試料が存在し、現在地球との物質的な比較が可能な唯一の惑星である。これまで、火星マントルを起源とする玄武岩であるシャーゴッタイト隕石の地球化学的研究により、火星内部の化学進化について多くの知見が得られてきた(McSween and McLennan, 2007)。
 過去に火星で起きた大規模な溶融イベント(マグマオーシャンなど)は火星内部リザバー間の元素分別を引き起こし、現在の火星マントルに同位体組成として記録されている。シャーゴッタイト隕石試料の分析から火星マントルの同位体組成を推定することで、このような惑星イベントの時期・程度に制約を与え、火星内部の化学進化について議論を行うことが可能である。先行研究では、Nd・Hf同位体システマティクス等を用いた研究が行われている(Debaille et al., 2008)。一方で、固相−液相間の元素分別を強く反映するPb同位体システマティクスについての研究は、現在までほとんど行われていない。これは、Pb同位体組成が地球上での汚染・火星表層での変質作用の影響を非常に受け易く、シャーゴッタイトソースマントルの同位体組成を求めることが困難であるためである(Gaffney et al., 2007)。
 Tissint隕石は、カンラン石玄武岩シャーゴッタイトに分類され、落下隕石であることから地球上での汚染の影響が極めて小さいと考えられている。本研究では、地球汚染成分・火星表層成分を取り込んだ変質鉱物等を取り除くために、Tissint隕石の全岩粉末試料に対して5段階の酸処理を行った。最終的な残留物は耐酸性鉱物(輝石・斜長石など)のみで構成されるため、Tissint隕石の親マグマを生成したソースマントルの組成を反映していると考えられる。この残留物について表面電離型質量分析計(TIMS)を用いてPb同位体組成の測定を行った。
 残留物から得られた非常に放射性起源のPbに乏しい初生同位体組成(e.g., 206Pb/204Pb = 10.843)は、Tissint隕石が液相濃集元素に枯渇したマントルを由来としていることを表している。Tissint隕石のソースマントルがこのようなPb同位体組成を保持するためには、マグマオーシャンの固化の際(4.535 Ga)に生じた液相濃集元素に枯渇したマントルリザバーが、岩石形成時(574 Ma)まで保存されていなければならない。つまり、マグマオーシャンの固化以降、火星マントルは化学的に閉鎖系が保たれ、45億年前に形成されたマントルリザバーが現在でも保存されていることを意味する。




2015-8th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Takanori Kagoshima - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: June 23rd 2015、10:30-12:00

Title
NanoSIMSで紐解く海洋化学進化
Abstract
 海洋炭酸塩・リン酸塩試料の微小領域をNanoSIMSを用いて分析することにより、試料形成時の海洋環境を高い時間分解能で復元することが可能である。たとえば、2ミクロンのスポット分析を化石シャコ貝殻に適用することで、Sr/Ca比の変動を基に、シャコ貝の成長速度に影響を与えた当時の日射量の日周変動を復元することができる(Hori et al., 2015; Sano et al., 2012)。また、カンブリア紀のプロトコノドントに対して、U-Pb年代法とSr同位体分析を適用することで、試料形成年代と当時の海水の87Sr/86Sr比とを関連付けることに成功している(Sano et al., 2014)。このように、NanoSIMSでは試料の年代を決定しつつ、当時の海洋環境を一日以下の数時間の時間スケールで復元することが可能になっている。本セミナーでは、今後NanoSIMSによる高分解能の海洋環境解析を行っていくうえで必要と考えられる研究課題と方針を提案する。
[Ref.] Hori et al. (2015) Sci. Rep. 5, 8734.; Sano et al. (2012) Nat. Commun. 3, 761.; Sano et al. (2014) J. Asian Earth Sci. 92, 10-17.




2015-9th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Kohei Fukuda - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: June 30th 2015、10:30-12:00

Title
マルチ同位体分析から考察するヒボナイト包有物およびFUN CAIの形成過程
Abstract
 太陽系の主要元素同位体組成は一部を除いて0.01%の程度で均一なことがわかっている。一方で、隕石中に見出される難揮発性包有物(Calcium-Aluminum-rich Inclusion: CAI)には太陽系平均同位体組成から逸脱した同位体組成を示すものが存在する。太陽系最初期に形成したと考えられているCAIの一種に同位体異常が存在するという事実は、初期太陽系において時空間的な同位体不均一が存在した可能性を示唆する。初期太陽系における同位体不均一レベルを評価する研究は、CAI形成時およびそれ以降の物質進化のトレーサーとしての役割はもちろん、短寿命放射性核種を用いた年代測定法の妥当性の評価、ならびに母天体の熱史を考察する上で重要である。
 私はCAIのなかでもとりわけ同位体異常の大きい、ヒボナイトに富んだCAIならびにFUN CAIとよばれるものについてSIMSを用いた同位体的研究を行ってきた。本発表ではこれまで得られた同位体データと先行研究のデータを比較し、わかってきたことを整理する。また、それを踏まえ今後どの部分に重きを置いて研究すべきかについてみなさまと議論したい。




2015-10th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Tsuyoshi Iizuka - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: July 7th 2015、10:30-12:00

Title
隕石ジルコンから読み取る惑星の初期地殻進化
Abstract
 ジルコンは酸性ー中性火成岩や高変成度変成岩に産する副成分鉱物であり,その結晶化年代をウラン-鉛同位体組成から高精度で決定できる。また,その微量元素組成から結晶化時の温度や酸化還元状態に制約を与えられ,ハフニウム同位体組成から親マグマの起源物質を推定することができる。このため,地球岩石中のジルコン試料について,ウランー鉛年代学・微量元素地球化学・ハフニウム同位体化学の研究が数多く行われてきた。本研究では,小惑星ベスタから飛来したとされるユークライト隕石について,世界で初めてとなるジルコンの高精度ウランー鉛年代学・微量元素地球化学・ハフニウム同位体化学を実施した。ウランー鉛年代及び微量元素濃度分析の結果,ユークライトジルコンは45.545 +/- 0.020億年前に,還元的な環境下(fO2 ≦ IW)において,約900 ℃で結晶化したことが明らかになった。この結晶化温度は,数多くのユークライトが経験した変成作用の温度と一致しており,太陽系形成から1200万年後に小惑星ベスタの地殻内において広域高温変成作用が起きたことを示唆する。また,ハフニウム同位体分析の結果から,太陽系の初生ハフニウム同位体組成を決定することに成功した。さらに,太陽系の初生ハフニウム同位体比と地球最古のジルコンのそれとを比較し,地球において地殻−マントル分化が45億年前には起きていたことを明らかにした。



2015-11th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Gaku Mikouchi - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: July 14th 2015、10:30-12:00

Title
アングライト隕石中の含Siカルシウムリン酸塩の鉱物結晶学
Abstract
 玄武岩質エコンドライトの1グループであるアングライトは、特異な化学組成と 非常に古い結晶化年代を持っていることから、太陽系最初期の分化イベントやマグマ結晶化過程を明らかにする上で重要である。アングライトには少量であるが、Siを含む特異なリン酸塩が含まれており、Pbを用いた放射性年代の測定や親 マグマの含水量見積りに用いられている。Siを含むリン酸塩は隕石だけでなく、 天然において非常に稀であるが、鉄精錬の過程で得られる脱リンスラグには普遍的に含まれている。しかし、これらのスラグ中に存在するSiリン酸塩 (nagelschmidtiteなど)とアングライト中に含まれる相の化学組成は異なって おり、別の鉱物種と考えられる。アングライト中の含Siリン酸塩は、特に急冷した試料(D'OrbignyやAsuka-881371など)に六角柱状の自形結晶として、結晶化最後期の鉱物(fayalite, kirschsteinite、Al, Tiに富んだhedenbergiteなど)と共存して存在している。大きさは最大で数十マイクロメートル程度しかない。 EPMAによる分析では、SiO2を約10-15 wt%含み、その分、Pの量が少なく、Pのおよそ半分がSiに置換している量に相当する。また、少量のFe (FeO=~5 wt%)とTi (TiO2~1.5 wt%)を含んでいる。ラマンやEBSDを用いたこれまでの分析によると apatiteと同じ結晶構造を持つことが示唆されているが、鉱物化学的特徴につい ては、まだ明らかになっていない点が多い。今回のセミナーでは、これらのSiリン酸塩についてのこれまでの分析結果と、新たにFIB-TEMなどを用いて分析して、apatite構造であることを決定した結果について紹介する。



2015-12th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Hajime Hiyagon - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: July 21st 2015、10:30-12:00

Title
SIMSによるコンドライトのメタル粒子中の親鉄性元素分析
Abstract
 コンドライトに含まれるメタル粒子の中の微量親鉄性元素(白金族元素など)の濃度をSIMSを用いて分析し、親鉄性元素の分別という観点から原始太陽系星雲内での物質進化について考察しようと考え、研究を始めている。今回は、まだ初歩段階のデータしか出ていないが、研究のねらいと概要を紹介したい。
 (1)まず、SIMSによるメタル(Fe主成分)中の微量親鉄性元素分析のためのスタンダードを作成した。
 (2)スタンダードを用いてSIMS分析における各元素イオンの相対感度係数を求めた。
 (3)Y 81020 (CO 3.05) コンドライト中のメタル粒子に対する分析をおこなった。コンドルール内のメタル粒子数個と、マトリックス中に独立して存在する比較的大きなメタル粒子の分析結果を紹介。(Pt, Ir の分析結果が中心。)
 (4)結果は少ないが、現時点での考察を少々。




2015-13th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: -
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: July 28st 2015、10:30-12:00

Title
論文講読
Abstract
-



2015-14th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: October 5th 2015, 17:00-19:00

Speaker1: Masaru Inoue - UTokyo
Title
Augite-bearing Ureiliteの岩石学・鉱物学的研究ーMain group Ureiliteとの成因的関係の解明にむけてー
Abstract
 Ureiliteは、achondriteの中ではHED隕石に次いで、2番目に数が豊富な隕石である。ureiliteは火成岩的な組織を持つものの、始原的な化学的性質を併せ持つことから、primitive achondriteに分類されることも多い。しかし、CCAMに沿った酸素同位体組成や、粒間に存在する炭素の存在など、他のprimitive achondriteには無い特徴も兼ね備えているユニークな隕石であるといえる。そのため、多数の試料が発見されている割には、その成因は未だによく理解されていない。また、ureiliteはolivineとpyroxeneで構成されるultramafic rockであるが、輝石の種類によって、olivine+low-Ca pyroxene ureilite(main group)と、augite-bearing ureiliteに大別される。augiteを含むureiliteは、全体の1割程度に過ぎないが、main group ureiliteにはみられない特徴を持っている。本研究では、main group ureiliteとaugite-bearing ureiliteとの岩石学的な関係性を明らかにすることを最終的な目標としているが、main group ureiliteの成因の解明にも貢献をしたいと考えている。
 今回の発表では、ureiliteの一般的な特徴や、augite-bearing ureiliteの性質についてレビューしながら、今後の研究計画と、現時点での研究成果についてわずかだが報告する。


Speaker2: Akinobu Hayakawa - UTokyo
Title
初期太陽系におけるAl-Mg 同位体組成とその年代学的意義
Abstract
コンドライト隕石は落下隕石全体の9割を占める主要グループであり、その組成から分化を経験していない母天体が起源とされている。そのため太陽系形成最初期の情報をよく記録した貴重な研究対象といえる。コンドライト隕石の構成要素であるCAIs(Calcium, Aluminum-rich inclusions)とコンドルールは太陽系形成過程において最初期にできた物質として多くの研究がなされてきたが、それらの生成メカニズムは明らかになっていない点が多い。
そのメカニズムの解明につながる方法の一つに放射性核種を用いた年代測定法がある。年代測定法には長寿命放射性核種を用いた絶対年代測定法と、短寿命放射性核種を用いた相対年代測定法とがあり、その中でもAl, Mgを用いた相対年代測定(Al-Mg年代測定)は主要な年代決定法として広く用いられている。AlとMgはCAIsやコンドルールの主要構成元素であり、26Alが半減期0.73 Maをもって26Mgに壊変するため、太陽系形成最初期におけるイベントを議論するツールとして非常に有用である。しかし、短寿命放射性核種はすでに消滅してしまっている。そのため、相対年代法を時計として用いるためには、原始太陽系形成時に親核種と娘核種が均質に分布していたという前提が必要である。近年、CAIsやコンドルールを対象とした高精度Al-Mg同位体測定が可能となってきたため、親核種および娘核種の均質-不均質にも議論の余地がでてきた。
今回のセミナーでは、近年行われてきた高精度Al-Mg同位体比測定についてのレビューを行う。また、私がこれから取り組む予定である「SIMSとICPMSを併用した高精度Al-Mg同位体測定法の検討」について紹介する。




2015-15th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: October 19th 2015, 17:00-19:00

Speaker1: Haruka Ono - UTokyo
Title
エコンドライト中のSiO2鉱物多形から探る熱履歴
Abstract
 SiO2鉱物は地球では主要な造岩鉱物の一つとして存在しており、様々な温度圧力条件によって23種以上の多形を持つことが知られている。地球外の物質中での報告例はあまり多くはないが(e.g., エンスタタイトコンドライト中:Kimura et al., 2005)、分化した隕石であるエコンドライト中でのSiO2鉱物としては、主に輝石や斜長石を含む玄武岩での結晶化末期の副成分鉱物としての報告がある(e.g., Leroux and Cordier, 2006)。さらにそれらのSiO2鉱物は隕石ごとに幾つかの異なる多形(α-quartz, tridymite, cristbalite etc.)として存在することが知られているが、通常は"silica minerals"と報告されるだけのことが多く、詳細な議論はほとんど行われていない。このため、地球外物質中のSiO2鉱物は、その隕石が含まれていた岩体の温度圧力履歴や形成環境を推測する一つの指標になり得ると考えられるものの、あまり注目されていないのが実状である。
 私の研究では、月、火星、HED隕石、地球のそれぞれの玄武岩中に存在するSiO2多形を比較することによって、各天体ごとの玄武岩形成時における温度圧力履歴および冷却過程の差を検討していきたいと考えている。冷却速度の差による違いを考慮するために、それぞれの天体起源の隕石(岩石)から、粗粒な玄武岩と細粒な玄武岩の少なくとも2種類ずつを用いて研究を行う予定である。今回の発表では、SiO2鉱物についての簡単なレビューとこれまでの研究成果について報告する。


Speaker2: Yoshitaka Homma - UTokyo
Title
石鉄隕石のHf-W同位体年代学:鉄隕石モデル年代の見直し
Abstract
 初期太陽系における微惑星の集積と分化を理解するにあたり、メタルが分離した時期を制約することは重要な問題である。鉄隕石は太陽系初期数十万年に形成され、分離が起こったと言われているため、これの母天体のコア-マントル形成タイミングを知ることが重要視されている。
現在メタルの分離を推定する年代計で最も優れているのがHf-W同位体年代系である。 これは、Hf-W同位体系が
1.)半減期が8.9Myrである
2.)親核種のHfは親石性元素、娘核種のWは親鉄性元素である
3.)Hf, W共に難揮発性元素である
といった特徴をもつためである。しかしながら鉄隕石単独ではアイソクロンを引くことが出来ず、現在ではコンドライトの値を併用したモデル年代で議論が行われている。このモデル年代は鉄隕石の母天体とコンドライトの母天体が同一の初生Hf-W同位体組成を持っていたという仮定の下で成り立っているが、当然この仮定が異なれば誤った値を使用して議論を行っていることになる。
そこで当研究では、IIIAB鉄隕石と起源を同一とすると考えられているパラサイトを用いて、このモデル年代が妥当であるか検討することを目標とする。石鉄隕石であるパラサイトはSilicateとMetalの両方を持つため、単一の隕石でアイソクロンを引くことができ、モデル年代の妥当性を検討することが出来る。今回での発表はHf-W年代法によるコア形成時期の推定についてのレビューと今後の計画を紹介する。




2015-16th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Yuki Hibiya - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: November 2nd 2015、17:00-19:00

Title
隕石の高精度 Cr, Ti 安定同位体比分析
Abstract
 近年、始原的隕石および分化隕石の全岩試料について、54Cr や 50Ti などの遷移金属安定同位体異常が報告されている。これらの安定同位体は、年代測定に利用されることはないものの、異なる元素合成起源をもつため、太陽系形成初期の環境に化学的制約を与えるトレーサーとしての役割を果たす。また、酸素同位体と同様、隕石種ごとに異なる 54Cr, 50Ti 安定同位体組成は、隕石母天体同士の類縁関係を探る新たなツールとしても注目を集めている。しかし、未だ精密な Cr, Ti 安定同位体組成が求められている隕石試料は少なく、特に私の研究対象である「始原的エコンドライト」に関しては皆無である。そこで本研究では、「多重検出誘導結合プラズマ質量分析計MC-ICP-MS を用いた高精度 Cr, Ti 安定同位体比測定法」を確立し、隕石試料に応用することを目的とする。
 質量分析計で Cr, Ti 安定同位体比測定を行う際、質量数が同じ同重体は測定対象元素の妨害イオンとなってしまう。そのため、化学分離ではこれらの妨害イオンを完全に取り除く必要がある。特に、54Cr, 50Ti には同重体が多いために化学分離が難しく、カラムケミストリーでは Fe, Ti, V, Cr 4元素の分離をする必要がある。そこで現在、イオン交換樹脂および溶媒抽出樹脂を用いた 5 段階カラムクロマトグラフィーを行い、測定対象元素である Cr と Ti の高純度な分離抽出を試みている。今後は、一連の測定法を確立し、隕石試料に応用していく予定である。本発表では、隕石の Cr, Ti 安定同位体についてのレビューと、現在の研究経過を報告する。




2015-17th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Hikari Hasegawa - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: November 9th 2015、17:00-19:00

Title
*NWA 6112 **始原的エコンドライトの鉱物学的研究*
Abstract
Brachiniteは主にカンラン石から構成される始原的エコンドライトの1グループである(e.g., Meteoritical BulletinDatabase).また近年,Brachiniteの他に類似した隕石として “Brachinite-like”と呼ばれる隕石がいくつか発見されてきている(e.g.,Day et al., 2012; Keil, 2014).これらの隕石を詳細に研究し,Brachiniteと比較していくことでBrachiniteの形成過程を含めた惑星分化過程全般への理解が得られることが期待される.本研究では、Brachinite-likeの可能性のある始原的エコンドライトNWA6112を対象に鉱物学的視点から観察・分析を行なった.具体的には、光学顕微鏡、SEM-EBSDによる観察・分析,EPMAによる元素マッピングや定量分析を行なった.その結果,カンラン石・単斜輝石のFe#や微量元素(Cr,Mnなど)組成,酸素同位体組成はBrachiniteに似ているということが明らかになった.特に酸素同位体組成はDivnoe(Brachinite-like,ungrouped)と非常に近い.カンラン石については、EBSDによる方位解析も行い、c軸が極集中し,a,b軸が大円上に配列されるパターンを持つということが明らかになった.同様の結果はDivnoeにも見られるものである.以上のように,NWA 6112はBrachiniteやBrachinite-likeと鉱物組成や鉱物量比が似ており,特にMIL090340/090206 (Brachinite-like) と構成鉱物やその鉱物組成,岩石組織が非常に近い(e.g., Goodrich etal., 2012; Warren et al.,2012).また、Divnoeとの共通点も多く存在している.おそらく,これらの隕石は共通の母天体(Brachinite母天体)で同じ形成過程を経た可能性があると考えられる.



2015-18th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Atsushi Takenouchi - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: December 7th 2015、17:00-19:00

Title
火星隕石中黒色カンラン石の詳細分析と形成過程、衝撃との関係
Abstract
火星隕石には黒く着色したカンラン石(黒色カンラン石)が多く報告されている。これまでの電子顕微鏡による詳細な研究によると、黒色カンラン石中には金属鉄や磁鉄鉱のナノ粒子の存在が報告されており、それらは火星から飛び出す際の強い衝突イベントにより形成され、カンラン石の黒色化の原因になっていると考えられている。そのため黒色カンラン石の形成過程や形成条件を探ることは火星隕石の衝撃履歴の解明に繋がると考えられる。黒色化(ナノ粒子の晶出)には様々な形成過程が考えられているが、私達のこれまでの研究で、黒色化は高温での高圧相転移(その後高圧相は低圧相に再度相転移する)に伴い引き起こされる可能性が示唆された。特に、NWA 1950(シャーゴッタイト)の黒色カンラン石中には高圧相転移の証拠と考えられるラメラ組織が見つかっており、Tissint(シャーゴッタイト)中のわずかに着色した領域にも同様のラメラが見られている。今回のセミナーでは火星隕石のSEM、TEM、STEM、顕微Raman、XANESでの分析を元に黒色カンラン石についてを紹介し、その形成過程とそれを引き起こす衝突現象についてを紹介します。特にRamanとXANES分析に新たに特徴が見られたため、形成史を考察しながら紹介します。



2015-19th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Takaomi Yokoyama - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: December 14th 2015、17:00-19:00

Title
普通コンドライトに含まれるFe-Ni金属相中の親鉄性元素の比較
Abstract
Fe-Ni金属相はコンドライトの主要な構成物質の一つであり,コンドリュール形成時にコンドリュールから分離したものと予想されている.CampbellらによるLA-ICPMSを用いた一連の研究(Campbell and Humayun, 2002; Campbell et al., 2003)により,普通コンドライト中のFe-Ni金属相の親鉄性元素,特に難揮発性親鉄性元素の濃度が粒子ごとに大きく異なることが見出された.また,粒子ごとの難揮発性親鉄性元素濃度の違いはCRコンドライトからも見出されているが(Connolly et al., 2001),その濃度差が形成過程の温度環境を反映したものなのか,粒子ごとに異なる前駆体を持っていたことによるものなのかが明確ではなく,金属相の形成過程を系統的に理解するには至っていない.本研究では,LA-ICPMSを用いて粒子毎の親鉄性元素を定量分析し, 得られた親鉄性元素パターンを金属相の産状と比較することによりその特徴をまとめた.まず,Salaices H4, Julesberg L3.6, Richfield LL3.7に含まれる金属相を系統的に分析した結果について報告する.いずれのコンドライトにおいても,粒子ごとに難揮発性親鉄性元素の濃度の大きな変動が確認された.Re,Os, IrおよびPt濃度は,非平衡コンドライト(Julesberg、Richfield)の金属粒子間で数桁のオーダーで変動し,なおかつ測定した全ての金属粒子において相互に強い相間を示した.一方で、Os, Ir, Ptの3元素は同じ挙動をするのに対し,Ru, Rhは濃度変動幅が小さい(1桁程度)うえ,相互に濃度相関がなく,Os, Ir, Ptの3元素とは明らかに異なる挙動をとっている.このような粒子ごとの親鉄性元素濃度の大きな違いの原因を探るために,新たにJulesbergの金属相を網羅的に分析し,粒子の大きさやコンドリュールの内外,あるいは硫化物を伴っているか否かといった産状,カマサイト-テーナイト間における元素分別といった各金属相の粒子ごとの特徴と照らし合わせることで,元素分別との関連性を検討した.



2015-20th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: January 18th 2016, 17:00-19:00

Speaker1: Yoshitaka Homma - UTokyo
Title
石鉄隕石のHf-W同位体年代学:鉄隕石モデル年代の見直し
Abstract
初期太陽系における微惑星の集積と分化を理解するにあたり、メタルが分離した時期を制約することは重要な問題である。鉄隕石は太陽系初期数十万年に形成され、分離が起こったと言われているため、これの母天体のコア-マントル形成タイミングを知ることが重要視されている。現在メタルの分離を推定する年代計で最も優れているのがHf-W同位体年代系である。 これは、Hf-W同位体系が
1.)半減期が8.9Myrである
2.)親核種のHfは親石性元素、娘核種のWは親鉄性元素である
3.)Hf, W共に難揮発性元素である
といった特徴をもつためである。しかしながら鉄隕石単独ではアイソクロンを引くことが出来ず、現在ではコンドライトの値を併用したモデル年代で議論が行われている。このモデル年代は鉄隕石の母天体とコンドライトの母天体が同一の初生Hf-W同位体組成を持っていたという仮定の下で成り立っているが、当然この仮定が異なれば誤った値を使用して議論を行っていることになる。そこで当研究では、IIIAB鉄隕石と起源を同一とすると考えられているパラサイトを用いて、このモデル年代が妥当であるか検討することを目標とする。石鉄隕石であるパラサイトはSilicateとMetalの両方を持つため、単一の隕石でアイソクロンを引くことができ、モデル年代の妥当性を検討することが出来る。今回の発表ではBrenha(Pallasite)とVaca Muerta (Mesosiderite)に対して行った測定の現時点での結果を紹介します。


Speaker2: Yu Inoue - UTokyo
Title
Augite-bearing ureiliteの岩石・鉱物学的研究
Abstract
Ureiliteは主にかんらん石、輝石、炭素相で構成されるウルトラマフィックな隕石である。エコンドライトの中では、HED隕石に次いで多くの隕石が発見されている割に、その成因については謎に包まれている部分が多い。Ureiliteを構成する主要な輝石相を基に、olivine-pigeoniteureilite, olivine-opx ureilite, augite-bearing ureiliteの3つのサブグループに分けられる。この中でも、augite-bearing ureiliteは他のureiliteといくつかの組織的・化学的特徴によって区別される。ユレイライト中のケイ酸塩鉱物はMg-richで、Fe/Mg比について大きなバリエーションを示すが(olivine Fo74-97)、これは酸化還元状態の変化を反映していると考えられる。Augite-bearing ureiliteのかんらん石が示すFe/Mn-Fe/Mgトレンドは、部分溶融残渣であると考えられているolivine-low Ca pyroxene ureiliteが示すトレンドとかけ離れており、これは火成活動による分別を示唆していると解釈される。また、augite-bearing ureiliteにはポイキリティック組織が多くみられ、中には、opxとaugiteの反応組織を示すものもある。これに加え、augite-bearing ureiliteのケイ酸塩鉱物には、しばしばメルトインクルージョンが含まれる。これらの特徴から、augite-bearing ureiliteは部分溶融残渣でなく、キュムレイトあるいはパラキュムレイトであると解釈されている。しかし、全ての試料がこのような特徴を示すわけではない。したがって、より多くのaugite-bearingureiliteについて観察を行い、その組織的・化学的特徴を明確にすることは、ureilite母天体での火成活動を理解するうえで重要である。今回の発表では、いくつかの試料についてこれまでおこなってきた偏光顕微鏡・電子顕微鏡観察と、EPMAによる分析結果を発表する。



2015-21th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: January 25th 2016, 17:00-19:00

Speaker1: Hikari Hasegawa - UTokyo
Title
かんらん石に富む始原的エコンドライトの鉱物学的研究
Abstract
始原的エコンドライトと呼ばれる隕石グループは全岩組成が始原的な物質であるとされるコンドライトに類似しているにもかかわらず,分化隕石であるエコンドライトの特徴である火成岩組織をもっている.そのため,コンドライトのような太陽系始原物質からエコンドライトに至る初期惑星物質分化過程に関する重要な情報を持つと考えられている.特に,始原的エコンドライトの中の brachinite と呼ばれる隕石グループは,グループ内の酸素同位体組成のばらつきが他のグループと比較して大きく、形成過程について統一的理解が得られていない. brachinite はカンラン石を主構成鉱物とする隕石グループだが, Brachinite としては分類されていない隕石の中にもカンラン石を主構成鉱物とする隕石はいくつもみつかっており,brachiniteとの関連性が指摘されている(”Brachinite-like”と呼ばれている).こうした隕石に対して岩石鉱物学的視点から研究を行なっていくことで,brachiniteやその関連隕石の形成環境に制約を与えていくことは太陽系惑星分化過程の理解に重要である.地球上の岩石の形成環境,特に物理環境の推定を行う際に,petrofabricの解析というのは一つの有効な手段であり,主にカンラン岩に対してたくさんの研究が為されてきている.この手法を地球外物質である隕石にも適用できれば,形成環境を強く制約することが期待される.しかし、petrofabricを作るようなプロセスは地球のような高度に分化した天体で起こるのは普遍的であるが、隕石母天体でも同様に起こるっていたとは限らない。ところが、最近のpetrofabricの研究で、いくつかの隕石種にそのような petrofabric があることが指摘され始めてきた.本研究では隕石中のpetrofabricを含めた岩石鉱物学的研究である.研究対象とした隕石はDivnoe, Northwest Africa (NWA) 6112, Miller Range090206/090340/090405であり,いずれもbrachinite-likeとされているものである.これらの隕石に対して,光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡による観察,EPMAによるマッピングと定量分析,斜長石に対する放射光FeマイクロXANES実験を行なった.また,カンラン石結晶方位配列の測定は走査型電子顕微鏡に付属するEBSDシステムを用いて行なった.その結果,これまで詳細な研究報告のなかったNWA 6112がその他の隕石を非常に似た鉱物化学組成をもつことが明らかとなった.そして,DivnoeとNWA 6112中のカンラン石にはc軸が一方向に集中的に配向していることがわかった.それに対し,Miller Rangeの3つの隕石中のカンラン石は地球の集積岩に見られるようなb軸が一方向に集中する配列が見つかった.これらのことからDivnoeとNWA 6112が母天体上で流れを持ったメルト中で形成されていたこと,MillerRangeの3つの隕石が結晶面の平らな面がそろうようなコンパクションを受けた集積岩であることが示唆され.これらのことを総合すると、brachinite-like隕石の母天体は、集積岩を作るような分化を経験していたが,形成環境に多様性があり,酸素同位体の異常をある程度保った状態での分化であったことが考えられる.また,本研究で分析を行った隕石は,いずれもbrachiniteと鉱物学的特徴が非常に良く似ていることが示され,他の類似した隕石も含めてbrachiniteと分類することが可能であることが示唆された.

Speaker2: Yuki Hibiya - UTokyo
Title
始原的エコンドライトの起源解明に向けたNWA 6704の鉱物学的および同位体宇宙化学的研究
Abstract
始原的エコンドライト隕石 NWA 6704 は、非常に古いU-Pb 年代を示し (4563.75 ± 0.41 Ma)、形成後の衝突変成や風化作用の影響を殆ど被っていないために、火成岩形成時の初生的な熱史を記録していることが期待できる極めて希少な隕石である。本研究では、始原的エコンドライト隕石の起源に新たな制約を与えることを目的として、NWA6704 薄片試料の SEM-EDS-EBSD による組織観察と結晶方位解析・EPMAによる主要元素定量分析を行い、結果に基づいて NWA 6704の結晶化・核形成機構、母天体小惑星の熱源、結晶化時の酸化還元状態、冷却史の推定を行った。さらに本研究では、近年母天体起源を探る新規トレーサーとして着目されている54Cr, 50Tiの、惑星物質からの高回収率同時分離法を開発した。この分離法をNWA6704 隕石に適用し、母天体起源に制約を与えることを目的として、MC-ICP-MSを用いた高精度50Ti安定同位体比測定を行った。本研究の結果から、NWA 6704 は、炭素質コンドライトライクな母天体中で、衝突による急加熱を受け、1325 ?C以上の部分溶融状態から急速に結晶化し、急冷過程 (> 2 ?C / hr) を経た後に、結晶化後期で遅冷過程(1.14×10-4 ? 2.0×10-2?C/ hr) を経て形成されたという一連の形成過程を新たに明らかにすることができた。本研究の結果は、太陽系形成から数Ma後に炭素質コンドライトライクな未分化母天体が確かに存在していたことの証拠となるものであり、さらには、未だ明らかにされていなかった始原的エコンドライトの起源に「未分化天体への衝突加熱による部分溶融状態からの形成」という、新たな制約を与えたものである。



2015-22th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: February 1st 2016, 17:00-19:00

Speaker1: Akinobu Hayakawa - UTokyo
Title
高精度Al-Mg同位体測定を用いた初期太陽系における26Al分布の解明
Abstract
短寿命放射性核種である26Alは半減期73万年を経て26Mgに壊変する。この壊変系は主にコンドライト隕石に含まれている太陽系最初期に形成した物質Calcium,Aluminum-rich Inclusions(CAIs)とコンドルールの相対的な年代を議論するために用いられてきた。二次イオン質量分析計(SIMS)を用いたその場分析から、それらの年代差は200~300万年であることまで分かってきた。また誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いたCAIsの高精度な同位体測定では、初期太陽系における26Alの初生比(26Al/27Al)0が5.25 x 10-5であったことまで分かっている(Jacobsenet al. 2008; Larssen et al. 2011)。しかし近年、エコンドライトの母天体集積時における26Alの存在比について議論がされている。絶対年代が分かっているエコンドライトの26Al/27Alの存在比から逆算した26Al初生比は1~2 x 10-5であることが明らかとなった(e.g. Schiller et al. 2015)。この値はCAIsから求められた初生比よりも有意に低い値を示し、原始太陽系円盤における26Al/27Alの均一性について議論の余地が出てきた。そこで本研究は26Alの分布を明らかにすることを目的として、ICP-MSによる高精度Al-Mg同位体測定の準備を進めている。今回の発表では現時点での分析精度と、未だ検討中である今後の研究対象について報告する。

Speaker2: Haruka Ono - UTokyo
Title
エコンドライト中のSiO2鉱物の多形体
Abstract
シリカ鉱物は地球上では地殻を構成する主要な造岩鉱物の一つとして存在しており、様々な温度圧力条件によって23種以上の多形を持つことが知られている(SosmanR. B. 1965)。しかし地球外物質中でのシリカ鉱物の報告例はあまり多くはない(Kimura. et al.2005)。なぜなら、シリカ鉱物は部分溶融によって晶出しやすいため、未分化では出にくく、また分化隕石はシリカ成分の少ない玄武岩質のものが多いからである。分化した隕石であるエコンドライト中でのシリカ鉱物としては、主に輝石や斜長石を含む玄武岩での結晶化末期の副成分鉱物としての報告がある(LerouxH. and Cordier P. 2006)。それらのシリカ鉱物は隕石ごとに幾つかの異なる多形(α-quartz, tridymite,cristbalite etc.)として存在することが知られている。また、ユークライト中では熱水により沈殿したと考えられているQuartzの報告もある(TreimanA. et al. 2004)。しかし、多くの場合、それらは"silica minerals"と報告されるのみであり、詳細な分析や、シリカ鉱物を用いた議論はほとんど行われていない。このため、地球外物質中のシリカ鉱物は、その隕石が含まれていた岩体の温度圧力履歴の条件や形成環境を推測する一つの指標になり得ると考えられるものの、あまり注目されていないのが実状である。本研究では、月、火星、HED隕石、地球のそれぞれの玄武岩中に存在するSiO2多形を比較することによって、各天体ごとの玄武岩形成時における温度圧力履歴の条件および冷却過程の差と形成環境について検討していきたいと考えている。冷却速度の差による違いを考慮するために、それぞれの天体起源の隕石(岩石)から、粗粒な玄武岩と細粒な玄武岩の少なくとも2種類ずつを用いて研究を行う予定である。今回の発表では、SiO2鉱物についての簡単なレビューとこれまでの研究成果について、主に3つのcumulate Eucrite中のSilica mineralsに着目し、その岩石の冷却過程や形成環境とSilica mineralsの転移速度について考察する。



2015-23th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: February 8th 2016, 17:00-19:00

Speaker1: Minoru Ojima - UTokyo
Title
火星隕石は本当に火星から来たのか?
Abstract
いわゆる“火星隕石”が火星から放出されたとする仮説は、惑星科学界にひろく信じられているが、この仮説については幾つかの根本的な問題が残されている。特に重要な問題としては、1)地球からの距離が火星と月では3桁以上も異なるのに何故かこれまで採集された火星、月隕石はほぼ同数(現時点でほぼ80個)なのか?(1)、2)火星から脱出速度以上で打ち出された物体が地球に到着する“トラベル・タイムは、数値シミレーションから数百万?2千万年程度と推察されているが(2)、EETA79001(火星大気成分を含む故に最も火星起源の可能性が高いと一般に信じられている)の宇宙線照射年代は65万年にすぎない(3)。これらの未解決の問題については、火星隕石の発見以来多くの研究者により説明が試みられてきたが、いずれも間接証拠の枠を出ない。さらに昨年9月にはNASAは特別発表で現在の火星には水が豊富に存在すると発表し、従来の酸化して乾燥した火星表層(ゆえに“赤い惑星”と呼ばれてきた)のイメージが根本的に見直されるべきことを強調した(4)。未だに決定的証拠無しになんとなく一般に受け入れられてきた“火星隕石”もこの例外ではなく、過去の常識に捉われない、再検討が必要であることを強調したい。1) Wieler R, Rev. in Mineralogy & Geochemistry, Vol.47, 160-170, 2002. 2)Gladman B., ICARUS 130, 228-246, 1997. 3) Nyquist L.E et al, SpaceScience Rev., 105-164, 2001. 4) Lujendra Ojha, et al, Nature Geoscience 28September 2015.

Speaker2: Mizuho Koike - UTokyo
Title
火星隕石リン酸塩鉱物中のリチウムおよび鉛同位体比
Abstract
火星は、過去の海洋を示唆する証拠(e.g. Squyres et al., 2004)が多数見つかっているほか、近年では現在の流水活動の可能性(Ojhaet al., 2015)も指摘されている。火星の表層水と環境変動との関わりは現在非常に注目されている問題と言える。 リチウムは適度に水に溶けやすい親石元素であり、リチウム安定同位体比(6Liと7Liの比; δ7Li)は、その大きな相対質量差から化学反応に伴い同位体分別を生じやすい。鉱物のδ7Liは、マグマの結晶分化過程では分別しない一方、二次的なプロセス(e.g. 風化)にて?数10‰変動し、地球の表層環境変動のトレーサーとして広く利用されている(Nishio, 2006)。これまでに、幾つかの火星隕石(shergottite, nakhlite)のolivineやpyroxene斑晶について、結晶中のLi濃度・δ7Li変動がSIMS分析にて調べられてきた(Beck et al., 2004, 2006; Udry et al., 2016)。これらの鉱物は結晶分化過程初期に形成し、マグマチャンバの進化過程(e.g. H2Oの脱ガス)やその後の拡散を記録する。一方で、火星隕石のリン酸塩鉱物は最終段階で晶出し、高い水素同位体比に示されるように、火星表層物質の混入を経験したと考えられる。さらにshergottiteのradiogenicな鉛同位体比も、リン酸塩鉱物への火星表層物質の混入を示唆する(Moriwaki et al., 2014)。リン酸塩鉱物に取り込まれた表層物質の同位体比から、鉱物形成時の火星表層環境を推定できると期待される。本研究では、shergottiteのリン酸塩鉱物について、NanoSIMSにてδ7Li, U-Pb分析を行っている。今回の発表では、depletedshergottiteであるTissintでのpreliminaryな結果を提示し、皆様のご意見を伺いたい。



2015-24th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Kohei Fukuda - UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: February 15th 2015、17:00-19:00

Title
マルチ同位体分析から考察する隕石中High temperature componentsの形成場および原始太陽系円盤環境
Abstract
未分化隕石中に含まれるHigh temperature components (HTCs)である難揮発性包有物やコンドルールは、太陽系固体物質の中で最も古い絶対年代を示すことがわかっている。したがって、HTCsの形成過程の理解は、原始太陽系円盤の初期進化(主に高温イベント)を理解する上で重要である。これまでHTCsに対する鉱物科学的および同位体的研究がなされてきたが、形成過程は未だ議論の最中であり、特に形成場に関する情報が欠けている。HTCsの様々な同位体システムを組み合わせることで、形成場に関する情報が得られるかもしれない。10Beは短寿命放射性核種のひとつで、高エネルギー宇宙線による核破砕反応によって生成される核種であり、星内部の核合成では生成しない。このことから、初期太陽系における主な10Beの生成場は原始太陽近傍での太陽宇宙線照射領域と予想される。したがって、惑星物質の10Be存在度の決定は、原始太陽の活動度や惑星物質の形成場を制約できるという点で重要である。この10Be存在度と近年隕石母天体の分類にも用いられ始めた安定同位体比(酸素、チタンおよびクロム同位体比など)を同時に決定することができれば、HTCsの形成場に関する新たな知見が得られると期待される。このような背景を受け、私はHTCsに対する10Be-10B系と各種安定同位体比を組み合わせたマルチ同位体分析を計画している。本発表では大気海洋研究所設置のNanoSIMS 50を用いたCOおよびCHコンドライト中CAIおよびオリビンインクルージョンの10Be-10B分析結果を報告する。



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