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2014-1st Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo

Speaker: Naoji Sugiura - UTokyo
Place: Room 851 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Apr. 14th 2014、17:00 - 19:00

Title
 Formation of the mesosiderite parent body
Abstract
 We are interested in mesosiderites because they formed early in the solar system and close to the surface of the parent body. There still remain unanswered problems; (1) the source of metal, (2) mechanism and timing of reheating, (3) the cause of slow cooling at low temperatures. Recently, a few more samples were studied. Based on the compiled data, we try to understand these problems.



2014-2nd Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Hajime Hiyagon, UTokyo
Place: Room 851 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Apr. 21st 2014、17:00 - 19:00

Title
 NWA801(CR2)コンドライトに見つかった高圧鉱物を含む岩片の起源:月サイズの天体からの破片?
Abstract
NWA801(CR2)コンドライト中に見つかった岩片は Na-Al-rich pyroxene (omphacite)や garnet を含み、地球のエクロジャイトに酷似している。さまざまな鉱物組合せから見積もられた生成条件は、約1000度C、3-4GPa であった (Kimura et al., 2013,Amer. Mineral. 98, 387-393)。この岩片の起源(高圧の原因)は何か?大きな微惑星内部の静水圧? あるいは微惑星どうしの衝突における衝撃圧?静水圧で説明するには、半径1500kmに達する月サイズの巨大な微惑星を考えなくてはならない。衝撃圧の場合には、高温・高圧条件の継続時間が短い(最大10秒程度?)ため、元素の移動を伴う高圧相の生成が可能か検討を要する。希土類元素分析、酸素同位体分析データや、拡散データなどを用いて考察した結果、高圧の起源は巨大微惑星中心付近の静水圧によるものであるとの結論を得た。前回のセミナーから、グラファイトを含む岩相と含まない岩相の間の化学組成のコントラストからの議論、酸素同位体組成のばらつきの起源に関する考察、微惑星の熱史・生成時期に関する考察などが新しくなっている。




2014-3rd Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Hikari Hasegawa - Mikouchi Laboratory, UTokyo
Place: Room 851 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: May 12th 2014、17:00 - 19:00

Title
 NWA7325の鉱物学的研究
Abstract
NWA7325は2012年2月に西サハラで回収された35個の岩片 (総量345g) からなる暗緑色のエコンドライトである.この隕石は既存のどのエコンドライトグループにも属さない隕石であり,Al/Si, Mg/Si比の値やFeが非常に乏しい点がNASAのMessenger探査機による水星の表面組成データとよく一致していることから,これまでに見つかっていない水星起源隕石の可能性が指摘され (Irving et al. 2013, Weider et al. 2012),注目を浴びている.NWA7325が本当に水星起源であるのかどうかを証明することは水星からのサンプルリターンがない現段階では難しいが,母天体に関する情報がほとんど得られていないこの隕石を鉱物学的視点から観察・分析し,その結果を他の隕石と比較することで,初期太陽系で形成されていた隕石母天体上の火成活動についての重要な知見を得られることが期待される.本研究の目的はNWA7325の詳細な鉱物学的研究を行うことで,この隕石の形成環境を明らかにし,どのような母天体の環境が考えられるか検証することである.




2014-4th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Akinori Yamada, UTokyo
Place: Room 851 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: May 19th 2014、17:00 - 19:00

Title
 太陽大気中のCO同位体比観測
Abstract
 隕石中の酸素同位体比測定から, 鉱物ごとに測定された酸素同位体比異常(Δ17O)は -40‰ から 90‰ 隕石全岩測定では -5‰ から 3‰ を示すことが明らかとなっている。しかし、隕石の分析からは原始太陽系星雲の初期の酸素同位体比を測定することはできない。
 太陽系の質量の99%以上は太陽にあるので、太陽の酸素同位体比を測定できれば、太陽系初期の酸素同位体を知ることができる。太陽の酸素同位体比測定には、太陽風と赤外線分光が考えられる。太陽風の酸素同位体比はGenesisミッションによって測定された。しかし、太陽から太陽風への同位体分別は明らかでない。赤外分光については、これまで研究は3件あり、δ18O 〜 100‰ (Ayresetal., 2006), δ18O 〜 0 (Scott et al., 2006), δ18O 〜 -24‰ と発表した(Ayreset al., 2013)。いずれも誤差が大きく、初期太陽系でのガスから粒子への化学反応を議論することはできていない。本研究は、太陽大気の赤外分光観測によって、CO分子の同位体比を誤差20‰程度で測定することを目指している。これまでの赤外分光による太陽大気の同位体比観測はスペースシャトル搭載の赤外分光計ATMOSのデータを用いて行われた。本研究ではカナダの人工衛星ACEに搭載されているFTSのデータを用いる。もっとも大きなアドバンテージはデータが多いことである。観測のエラーがランダムなばらつきであれば、「多数のデータの平均をとるという操作で誤差を小さくできる」という作戦です。一次元の放射伝達方程式を解く。ACE-FTSの観測のみから太陽の大気構造を求めることはできないので、Russell et al. (2013) が報告しているH密度、電子密度、温度の鉛直分布を用いる。温度とmicroturbulence をACE-FTSのスペクトルとのフィッティングパラメータとする。ACE-FTSスペクトルの周波数分解能により、温度とmicroturbulenceをスペクトルのフィッティングのみから決定することはできないので、 1) CO分子の全角運動量J、主量子数nそれぞれの吸収線から求められる炭素の存在度が一定となるように、 2) δ13C = 0となるように、 温度とmicroturbulenceを決定する。この温度とmicroturbulenceを用いて、δ18O = -53 +/- 120 ‰ を得た。これは13本のスペクトルを用いて計算した結果で、この方法を用いてACE-FTSスペクトルから太陽の酸素同位体を求めることができることを示した。今後は、ACEの多数のスペクトルを用いて、統計的な議論をしたい。また、C17Oの吸収線は存在量が少なくノイズに埋もれてしまった。多数のスペクトルを積算してδ17Oも求めたい。




2014-5th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Tsuyoshi Iizuka, UTokyo
Place: Room 851 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: May 26th 2014、17:00 - 19:00

Title
 初期太陽系年代学の統一的理解に向けて:エコンドライトのU-Pb及びNb-Zr同位体学
Abstract
 鉄隕石や玄武岩質隕石などの分化隕石の形成年代は,微惑星〜原始惑星の形成・分化の時間スケールについての情報を与える.高精度の隕石年代測定には,U-Pb同位体が有効であるが,鉄隕石のようにUを高濃度で含む相がない隕石にはこの同位体年代学は適用できない.そこで,鉄隕石の同位体年代測定には,182Hfや92Nb(それぞれ182Wと92Zrに壊変)などの消滅核種を利用した同位体年代学が適用されてきた.しかし,消滅核種を用いた年代測定は相対年代しか与えない.初期太陽系の進化を包括的に議論するためには,U-Pb(絶対)同位体時計と様々な消滅核種相対時計の時間をあわせる必要がある.具体的には,U-Pb年代測定と消滅核種年代測定の両方をある1つの隕石に適用することで,相対年代に絶対年代基準を与える必要がある.また,複数の隕石について同様に絶対・相対年代測定をすることで,消滅核種が初期太陽系に均質に分布していたか評価することが可能となる.しかしこれまでは,信頼性の高い絶対年代基準を与えうる隕石は非常に限られていた.
 そこで我々は,様々な隕石についてU-Pb年代測定及び微量元素濃度分析を実施し,信頼性の高い絶対年代基準を与えうる隕石を探してきた.そして,92Nb相対年代学を実施する上では,アングライト隕石NWA4590,HEDユークライト隕石Agoult, non-HEDユークライト隕石Ibitiraが有力な候補であることが分かった.さらに,実際にこれらの隕石についてNb-Zr同位体測定を行い,初期太陽系における92Nbの存在量を求め(絶対年代基準を与え),さらにはその均質性の評価を行った.本発表ではこれらの結果を報告し,さらにNb-Zr相対年代測定法の応用可能性について議論する




2014-6th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Yuki Hibiya - Iizuka Laboratory, UTokyo
Place: Room 851 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Jun. 2nd 2014、17:00 - 19:00

Title
 含水小惑星の加熱脱水過程の解明ー Murchison隕石の加熱実験による鉱物及び含水量変化 ー
Abstract
 C型小惑星の多くは、反射スペクトルの特徴に基づいて、熱変成を受けた含水炭素質コンドライトのスペクトルと最も良く一致する表面を持つということが知られている。これは、C型小惑星が、形成後の水質変成に続いて熱変成による加熱脱水過程を経たということを示唆する。先行研究では、この加熱脱水過程における鉱物変化や反射スペクトル変化を調べる研究が行われてきたが、反射スペクトル変化と含水量変化を比較した研究に関しては、未だ報告が無い。
 そこで本研究では、CM2含水炭素質コンドライトであるMurchison隕石の段階加熱実験を行うことで、C型小惑星における水質変成後の加熱脱水過程を再現し、加熱温度の違いによるX線回折パターンの変化および反射スペクトル変化を読み取った。また、カールフィッシャー滴定法により、未加熱および加熱後の各試料の含水量測定を行った。得られたマーチソン隕石の反射スペクトルの水の吸収帯深さと含水量の関係を、実際のC型小惑星のスペクトルデータに適用することで、実際のC型小惑星表面物質の含水量の推定を試みた。さらに、本研究で得られた加熱後のMurchison隕石試料の反射スペクトルを、いくつかのC型小惑星のスペクトルと比較することにより、本研究の加熱温度を経験したと推定されるC型小惑星を探索した。




2014-7th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Atsushi Takenouchi, UTokyo
Place: Room 851 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Jun. 9th 2014、17:00 - 19:00

Title
 火星隕石中黒色カンラン石の形成過程と形成条件
Abstract
 一部の火星隕石では衝撃によりカンラン石が黒色化し、反射スペクトルや磁化率が変化している。それは衝撃によりカンラン石中にナノスケールの鉄粒子が形成されるためと考えられているが、その形成過程については不明な点が多い。本研究では黒色化したカンラン石の詳細観察により鉄粒子が様々な形態をとることを発見し、それらが鉄の拡散により形成されるという仮説をたてることができた(卒論後の発表)。一方で、その黒色化がどのような条件で起こるのかは未だに明らかになっていない。カンラン石の黒色化は火星隕石にのみ見られる特異な現象であるため、その形成条件は火星における衝突の特有な情報を反映している(大きな母天体サイズ、酸素分圧、水の存在など)と考えられる。そのため現在いくつかの火星隕石と衝撃を受けた隕石を観察、比較し、黒色化の条件に制約を与えることを試みている。今回はその経過を発表し、今後の計画も少し発表する。




2014-8th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Takanori Kagoshima, UTokyo
Place: Room 851 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Jun. 16th 2014、17:00 - 19:00

Title
MORBのハロゲン・ヘリウム組成
Abstract
 ハロゲン元素のマントルからの脱ガス過程はよく分かっていない。我々は海嶺からのハロゲンのフラックスを制約するためにMORBの気泡に含まれるヘリウム・ハロゲン組成を決定した。世界中の8か所(東太平洋海膨の13oN-17oS; 大西洋中央海嶺の15oN-37oN; 中央インド洋海嶺の24-25oS)で採取された試料をNaOHまたはNH3溶液中に投入し、液体窒素の温度で溶液を凍結させた状態で破砕して気泡中の揮発性物質を抽出した。そしてHeの同位体組成を希ガスMS: VG-5400で、F, Clの含有量をイオンクロマトグラフィーICS2100で測定した。固体ガラス部分の組成はNanoSIMSで分析した。気泡中のF/3He比とCl/3He比は(1.4±0.5)E6, (2.9±0.6)E7と得られた。これらの比と既知の3He放出量530 mol/y [1] から、F, Clフラックスとして(7.1±2.8)E8 mol/y, (1.5±0.4)E10 mol/yが得られた。これらは海嶺フラックスの下限値と考えられる。F, Clのガラス中含有量が気泡中含有量に対してそれぞれ7000倍以上, 100倍以上であることが、海洋地殻中の揮発性元素のごく一部が海洋中へと放出されるだけでフラックスが大きく上がってしまうことを示しているためである。気泡中とガラス中とでF/Cl比が大きく異なるのはF, Clの気泡―ガラス間の分配係数の違いを反映している。また中性子照射によってハロゲンを希ガスに変換するNoble gas methodによる分析結果 [2] から、気泡中のBr/Cl比とI/Cl比は(1.8±0.1)E-3, (5.4±0.1)E-5と計算された。これらの値は固体ガラス中の元素比とほぼ同じであり、MORBマグマにおけるCl, Br, Iの気泡―ガラス間の分配係数が似ていることを示唆している。Br/Cl比、I/Cl比および本研究で得られたClフラックスを基に、Br, Iフラックスは(2.7±0.8)E7 mol/y, (8.3±2.4)E5 mol/yと計算された。溶液中での破砕法とNoble gas methodとを組み合わせて同一試料を分析することで、ハロゲン元素の固体地球内部からの脱ガス過程・物質循環について新たな知見が得られるだろう。
 また、MORBなどのCl同位体組成を決定することは、マントルのCl同位体組成の推定およびマグマ―海水間の相互作用に伴う物質循環の議論を行う上で有用である。Pyrohydrolysis-IRMS法やIMS1270, IMS1280を用いた分析によって、MORBのCl濃度とδ37Cl値との間には正の相関があることが示唆されており、上部マントルのδ37Cl値として≦-1.6‰ [3] や ≦-3.0‰ [4] などが示されている。これらは極めてCl濃度の低いMORBの同位体比を基に与えられた制約条件であり、海水の混合の程度とマグマの組成を議論するためには1‰の精度が必要である。我々はMORBやアパタイトのCl同位体比をNanoSIMSを用いて高精度で決定することを目指しており、本発表ではそのことについても触れたい。




2014-9th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Kohei Fukuda, UTokyo
Place: Room 851 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Jun. 23th 2014、17:00 - 19:00

Title
初期太陽系における同位体不均一について
Abstract
 太陽系の初期進化に関する物質科学的研究から、大部分の太陽系固体物質に含まれる主要元素同位体組成は0.01%の程度で一様なことがわかっている。この事実は、太陽系形成の最初期段階において惑星や隕石母天体の材料物質が大規模に混合され、同位体比が均一化されたことを意味する。一方で、近年の同位体分析の高精度化に伴い、バルク隕石ならびに隕石構成物質の分析からいくつかの元素においてあるトレンドをもった同位体異常が存在することがわかってきた(e.g., Dauphas+, 2002; Trinquier+, 2009; Burkhardt+, 2012)。また、太陽系最初期凝縮物と考えられているCalcium-Aluminum-rich Inclusion (CAI)の中には、均一化された同位体比から最大で20%の同位体異常を示す物質が発見されている(e.g., Lee+, 1978; Ireland, 1988; Liu+, 2009)。以上のように、太陽系の材料物質は完全に均一化されたわけではなく、太陽系最初期段階において時間的・空間的な同位体不均一が存在していたことが伺える。同位体均一化の程度を評価することは、太陽系形成最初期段階における物質進化過程を理解することはもちろん、短寿命核種を用いた年代測定法の有用性を評価するという意味で意義を持つ。
 我々は隕石中のヒボナイト包有物に対するマルチ同位体分析から初期太陽系における同位体不均一および物質進化史について考察している。本発表では、同位体不均一に関する近年の研究を紹介し、博士研究の方向性を議論したい。




2014-10th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Takao Yamaguchi - Iizuka Laboratory, UTokyo
Place: Room 851 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Jun. 30th 2014、17:00 - 19:00

Title
Lu-Hf isotope systematics of 3.4Ga Barberton Basalts:Implications for Early Mantle Evolution
Abstract
Bulk Silicate Earth(以下,BSE)の分化過程は、地球全体における元素分布を支配し, 地球内部の温度分布や熱進化, マントル対流などのダイナミクスを大きく左右したと考えられる。従って, BSEの分化過程を理解することは, 地球の進化を議論する上で必要不可欠である。そのための強力な手法の一つにLu-Hf放射性同位体地球化学がある。この手法は2000年以降急速にその研究報告が増え, 従来から用いられてきたSm-Nd系と組み合わせることで,地球形成初期の深部溶融の可能性等, 幾つか新しい知見がLu-Hf系列の研究によって得られている(Rizo et al., 2011)。
しかし, Lu-Hf壊変系列を太古代試料に適用した先行研究のデータをコンパイルしていくと, 二つの不確実性の存在が浮かび上がる。一つは、変成変質の影響を評価している試料とそうでない試料が混在したまま, 議論論が展開されている点。もう一つは, コマチアイトのHf同位体組成と玄武岩のHf同位体組成を同列に扱って議論をしている点である。変成変質の影響を吟味した試料だけで議論していくことは当然として,地球史を通じたマントルの分化を議論する際, 異なるタイプの岩石の同位体比を同列に扱うことの妥当性にはまだ不明な点が多く, どちらかの試料で揃えて議論していくことも必要であろう。特に, 今回行った先行研究のコンパイルからは, εHfが顕著に正を示し始め, 幾つかの先行研究で現世のプレートテクトニクスが始まったと主張されている35億年前後の試料が, 他の年代の試料と異なり, コマチアイトに限られていることが確認された。
そこで, 本研究では, 35億年前後の玄武岩のHf同位体比を提出するため, 34.5億年前の南アフリカバーバートンのOnverwacht Suiteに属するHoggenoegg Complex 及びKromberg Complexの玄武岩の高精度Hf同位体分析を行った。現時点で, 二つの岩体からから採取された18種29サンプルの分析を終え, その結果はHoggenoegg Complexで3221±200Ma(MSWD25.3, 2σ,N=8), Kromberg Complexで 2794±530Ma(MSWD49,2σ,N=10)という年代値を得た。そして, 岩石学的地球化学的情報からより初生的な情報を保持していると判断される試料のみを用いると, そのアイソクロン年代はHoggenoegg Complexで3184±230Ma(MSWD=28.6,2σ,N=7), Kromberg Complexで3175±390Ma(MSWD=1.9,2σ,N=5)となった。更に, 分析試料の形成年代を3450Maとして計算した初生176Hf/177Hfはそれぞれ、0.280597±0.00051, 0.280638±0.00035となり、 この結果をコンドライトからεHf(3445Ma)は1.55±1.7, 3.16±0.8となる。これにより, バーバートンの玄武岩のソースマントルが35億年より以前に既に溶融を経験し, 液相濃集元素に枯渇していたことを示した。今回の発表では、これらの情報や既に報告されているNd同位体比を用いて、バーバートン玄武岩のソースマントルの分化年代について、幾つかの推定を行い紹介する。また、同じバーバートン地域に多産するコマチアイト岩石との比較についても触れる予定である。




2014-11th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Takaomi Yokoyama - Takahashi Laboratory, UTokyo
Place: Room 851 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Jul. 7th 2014、17:00 - 19:00

Title
In-situ quantitative analysis of trace elements in metal grains from H, L and LL ordinary chondrites using femtosecond laser ablation-ICP-mas
Abstract
 始源的隕石(コンドライト)中に見られる金属相はコンドライトの主要な構成鉱物の一つである。金属相には親鉄性元素が選択的に分配され、またその分配挙動は温度・圧力・酸素分圧等の物理化学的条件によって大きく変化する。従って、金属相に含まれる親鉄性元素の濃度・分配挙動を調べることで、金属相の形成過程に直接的な知見を引き出すことができる。コンドライトに含まれるmmサイズの金属相ついては、金属粒子毎に親鉄性元素濃度が大きく変化し、その分別挙動が粒子毎の成因を反映したものなのか、生成領域を反映したものかが明確ではなく、金属相の形成過程を系統的に理解するには至っていない。この背景には、金属相中の微量親鉄性元素の正確な定量分析が難しいという分析学的な問題がある。そこで本研究では、各金属粒子内での均質性・不均質性を評価しつつ正確な微量親鉄性元素濃度を決定するための新しいレーザーアブレーション-ICP質量分析法を開発し、親鉄性元素の分配挙動、各粒子内での不均質性を評価することとした。また本研究では、先行研究で殆ど報告例がない非平衡コンドライトに注目し、金属相中の親鉄性元素を分析した。
 本研究では不定形な金属粒子の微量元素を分析するため、ガルバノメトリック光学系を導入し、複数の固体試料をほぼ同時にレーザーアブレーションできる多点同時アブレーション装置の開発を行った。これにより、不定形な鉱物や、複数の鉱物から高い分析空間分解能を保持したままレーザーサンプリング効率を向上することが可能になったうえ、固体試料においても分析元素の希釈や内標準元素の添加が可能になるなど、定量分析の汎用性が大きく拡張できた。本章では、多点同時アブレーション装置の分析性能を評価するために、二つの応用分析を行った。一つ目は、異なる固体試料を同時にアブレーションすることで、固体試料を「混合」する手法であり、本研究では固体試料中の微量元素分析に際し標準添加法の適用を試みた。二つ目の応用分析は、複数の微小鉱物試料を同時にレーザーアブレーションする手法である。複数の試料から放出された試料エアロゾルを「積分」することで、個々のレーザー照射径を10 μm以下にまで絞り込みつつ、分析に必要な試料量を確保することが可能となった
 LA-ICPMS法を用いた定量分析の主流は相対法であり、定量結果の信頼性は、標準試料の質が鍵を握る。本研究では、隕石中の金属相に含まれる微量親鉄性元素の分析を目的としているため、正確な元素濃度情報を引き出すには、均質な金属標準物質が不可欠である。しかしながら、本研究で分析対象とする親鉄性元素が網羅された金属質標準試料は市販されていない。こうした背景から、本研究では分析対象となる親鉄性元素を網羅したFe-Ni合金の金属標準物質の合成を行った。さらに隕石に含まれる金属相の不均質性を正確に評価するためには、レーザービーム径(10 μm程度)での試料の均質性を保証する必要がある。このため、様々な親鉄性元素を添加した鉄・ニッケル粉末をアーク溶融によって固体化するとともに、EPMAおよびLA-ICPMS法を用いて分析元素の均質性の評価を行った。金属試料を圧延後1200°Cで20時間の熱処理を行い、拡散による均質化を図った結果、作成した合金試料内の親鉄性元素を数μm以下のスケールまで均質化することに成功し、LA-ICPMSによる金属相中の微量親鉄性元素定量分析に適用できる金属標準試料を合成することができた。
 本研究において開発した多点同時分析レーザーアブレーション法と合成した金属質標準物質に基づいて、普通コンドライト金属相中の親鉄性元素分析を試みた。本研究では、これまで分析例が殆どない非平衡コンドライトに注目し、Salaices H4, Julesberg L3.6, Richfield LL3.7に含まれる金属相を系統的に分析した。この結果、いずれのコンドライトにおいても、主成分濃度(Fe-Ni-Co)および揮発性元素(Au, Pd, Cu, Ge)の変動を伴わない難揮発性親鉄性元素の濃度変動が確認できた。Re, Os, IrおよびPt濃度は、非平衡コンドライト(Julesberg、Richfield)の金属粒子間で数桁のオーダーで変動し、なおかつ測定した全ての金属粒子において相互に強い相間を示した。一方で、Os, Ir, Ptの3元素は同じ挙動をするのに対し、Ru, Rhは濃度変動幅が小さい(1桁程度)うえ、相互に濃度相関がなく、Os, Ir, Ptの3元素とは明らかに異なる挙動をとっている。本研究で見られる重PGEおよびReと軽PGEの分別に近い親鉄性元素パターンを持つ物質として現在知られているものは、CVコンドライトEfremovkaに存在するFremdringe(難揮発性新鉄元素に富む塊)の外縁部に存在する金属相、およびschreiberite ((Fe, Ni)3P)のみである。本研究で得られた重PGEおよびReに乏しい親鉄性元素パターンを示す普通コンドライト中の金属粒子の前駆物質は、金属相形成以前、あるいは溶融時に形成したschreibersiteとの関連が示唆される。




2014-12th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Takashi Mikouchi, UTokyo
Place: Room 851 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Jul. 14th 2014、17:00 - 19:00

Title
Mineralogical study of seven Itokawa asteroidal particles: Reconfirmation of their similarities to equilibrated LL chondrites
Abstract
 はやぶさ探査機が2010年にサンプルリターンした7粒の小惑星イトカワ塵に対して、光学顕微鏡、SEM、EPMA、ラマン分光、放射光XRD・XANESによる鉱物学的研究を行った。分析した塵は主にカンラン石と斜長石から成り、輝石は含まれていなかった。いずれの塵もカンラン石・斜長石が波状消光を示すことから弱い衝撃変成を受けていることが推測され、衝撃ステージはS2に相当する。カンラン石はFo70-73で、放射光XRDで得られた格子サイズと調和的であった。また、斜長石はAn13-10Or5-7で、SR-XRDによって得られた結晶構造から見積もられる平衡温度は約800度であった。これは普通コンドライトのピーク熱変成温度に近い。斜長石の放射光Fe-XANES実験からは高いFe3+/Fe2+比が得られ、酸化的環境で形成されたことが示唆されるが、カンラン石組成と合わせていずれもLLコンドライトと類似している。また、斜長石は20ミクロン以上の大きさがあり、カンラン石がほぼ均質化していることと合わせて、岩石学タイプは5以上である。
 以上のことから、分析した塵はいずれも弱い衝撃を受けた平衡LLコンドライトである可能性を示しており、初期分析チームによって得られた結果を再確認するに至った。




2014-13th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Minoru Ojima, UTokyo
Place: Room 851 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Jul. 28th 2014、17:00 - 19:00

Title
化石は実験室で創れるか?
Abstract
惑星の形成と進化の研究を進める上で、研究対象(原始太陽系星雲)および実験室的現象が、1.時間スケール(?1010年),2.空間スケール(?1020メートル)の点で極端に異なることに特別の注意が必要である。とりわけ実験試料としては隕石、実験装置としては極微小領域観測のSIMS(種々のMSを含む)を主な研究手法とする宇宙地球物質科学研究グループにはさける事の出来ない基本的な問題であるが、これまでこのセミナーではあまり深く議論される機会がなかった様に思う。本日のセミナーでこの問題をとりあげたい。空間スケールの違いは、スケ-リング則の適用でミクロは毛細管中の血液流から大は銀河の運動までNavier-Stokes方程式で記述出来ることはよくしられている。しかし時間については地質学的現象と実験室内現象の間に時間の流れの不可逆性による本質的な違いが絡みあい、単純なアナロジーを困難にしている。一例として“化石は実験室で創れるか?”という今日のセミナーの題目で象徴的に示した。この問題については以前にアーレニウスの化学反応速度論をもとに石油生成の議論を参考に考察を加えたが、この機会にあらためて議論する(1)。時間スケールの問題はさらに現象の平衡?非平衡状態の議論とも絡み合い複雑になる。現今の惑星形成論では実験、計算を問わず種々の物理・化学常数、たとえば元素分配係数などは平衡状態下で求められた実験値に基づいて行われるのが一般的である。こうした実験的パラメター値を基にして、SIMSなどのサブミクロン・スケールの観測結果を原始太陽系星雲の状態とどのように結びつけ解釈出来るか常に意識して研究を進める事が重要である。これは惑星進化シナリオがモデル依存?循環論法から逃れる為に不可欠である事を強調したい。また、時間の不可逆性の必然的結果として、進化現象を結果から探るという逆問題であることも注意すべきであろう。例えば拡散の結果としての鉱物間の元素分布のプロファイルから温度履歴の推定を試みるばあい、逆問題の通例として一つの結果(実験観測)をもたらした原因は複数の解(原因)が可能であることを忘れてはならない。昨今の酸素同位体比問題(delta18O)を例にとり少し詳しく議論する。
今回のセミナーは今学期最後のものとして通例とはやや異なったテーマ・形式になりますが、将来スケールの大きい研究者として成功をめざす方々には避けて通れない課題です。セミナー自体は約1時間で終りますので、残り時間にはこのテーマについて質問、コメンはもとより自由討論も大歓迎です。ご用意下さい。
1. Ozima M., Geohistory, Springer Verlag, 1987.




2014-14th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Yuji Sano, UTokyo
Place: Room 851 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Oct. 6th 2014、17:00 - 19:00

Title
1. Helium anomalies suggest a ?uid pathway from mantle to trench during the 2011 Tohoku-Oki earthquake
2. Past daily light cycle recorded in the strontium/calcium ratios of giant clam shells
Abstract
1. Geophysical evidence suggests that ?uids along fault planes have animportant role in generating earthquakes; however, the nature of these ?uids has not been well de?ned. The 2011 magnitude 9.0 Tohoku-Okiearthquake ruptured the interface between the subducting Paci?c plate and the overlying Okhotsk plate. Here we report a sharp increase in mantle-derived helium in bottom seawater near the rupture zone 1 month after the earthquake. The timing and location indicate that ?uids were released from the mantle on the sea?oor along the plate interface. The movement of the ?uids was rapid, with a velocity of ~4 km per day and an uncertainty factor of four. This rate is much faster than what would be expected from pressure-gradient propagation, suggesting that over-pressurized ?uid is discharged along the plate interface. 2. The historical record of daily light cycle in tropical and subtropical regions is short. moreover, it remains difficult to extract this cycle in the past from natural archives such as biogenic marine carbonates. Here we describe the precise analysis of Sr/Ca, mg/Ca, and Ba/Ca ratios in a cultivated giant clam shell, using a laterally high-resolution secondary ion mass spectrometer with 2 μm resolution. The Sr/Ca ratio exhibits striking diurnal variations, reflecting the daily light cycle. A clear seasonal variation in Sr/Ca is also observed in another longer set of measurements with 50 μm resolution. Light-enhanced calcification and elemental transportation processes, in giant clam and symbiotic algae, may explain these diurnal and annual variations. This opens the possibility to develop the Sr/Ca ratio from a giant clam shell as an effective proxy for parameters of the daily light cycle.




2014-15th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Akinori Yamada, UTokyo
Place: Room 851 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Oct. 20th 2014、17:00 - 19:00

Title
ACE衛星の赤外分光スヘ?クトルから求める太陽大気中の酸素同位体比
Abstract
酸素同位体は、太陽系の初期進化を探る重要なトレーサーて?ある。質量に依存し ない同位体比の変動は同位体比異常と呼は?れ、隕石中の物質の酸素同位体比異常(?17 O)は ?36 permil から 0 permil に及ふ?。しかし、太陽系の始原的な酸素同位体比は不明のため、この酸素同位体比異常の起源は未解明て?ある。太陽大気 中の酸素同位体比は原始太陽系星雲生成時の酸素同位体比を保存していると考えられる。1435本のスペクトルを用いて、太陽大気中の酸素同位体比を解析したので報告します。




2014-16th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Hikari Hasegawa, UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Oct. 27th 2014、17:00 - 19:00

Title
NWA 7325エコンドライトの鉱物学及び希ガス同位体組成から見た形成過程について
Abstract
現在,エコンドライトの中には既存の分類グループに属さない隕石がいくつか存在している.これらの隕石を研究することは,太陽系物質進化過程において形成された小天体の多様性や原始惑星での火成活動に関しての新たな知見が期待できるという点で非常に重要である.本研究で分析したNorthwest Africa 7325 (NWA7325)は2012年に発見されたUngroupedなエコンドライトであり,水星起源の可能性が指摘されたことで注目を集めている [1].しかし,54Cr/52Cr比や古いU-Pb年代からはユレイライトとの関係性が指摘されている [2].
本研究では,この隕石の母天体での火成活動の理解に向けて,薄片試料の光学顕微鏡による観察,EPMAによる元素マッピングおよび鉱物ごとの定量分析,FEG-SEMによる微細組織の観察を行うとともに,希ガス同位体組成の測定も行った.光学顕微鏡,FEG-SEMによる観察から,NWA 7325は集積岩組織を示すmmサイズの均質なDiopside (Fs-1Wo-45, 0.95 wt% Cr2O3), Anorthite (An-90), Forsterite (Fo-97)から成ることがわかった.斜長石は元の結晶方位を維持しているものの内部は細粒化しており,輝石が部分的に形成されている.また,鉱物境界には細粒の結晶が析出しており,共融系による二次的な部分融解を経験していることが示唆される.光学顕微鏡による観察では,鉱物境界の溶融部分が大きく移動した痕跡は見られず,5μm程度の結晶サイズしかないので,メルトの移動が起こる前に急冷されたと考えられる.これらの観察結果はいずれも,元々の隕石がマグマの徐冷により集積岩として結晶化した後に,衝撃により母天体が破壊されるような急冷イベントを経験して上記の鉱物学的特徴を形成したと考えられる.希ガス捕獲成分が非常に良く脱ガスされており,短寿命核種129Iのβ壊変による129Xeが存在することや,244Puの核分裂起源Xeがほとんど見られないことから,この隕石は太陽系最初期に分化が進行した母天体のマントルに相当する部分に存在したものであろう.その後何度かの破壊を経験した母天体から,最終的にこの隕石が飛び出したのは約2千万年前である.
文献:[1] Irving A. J. et al. 2013. LPSC XLIV, 2164. [2] Kita N. et al. 2014.LPSC XLV, 1455.




2014-17th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Yuki Hibiya, UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Nov. 10th 2014、17:00 - 19:00

Title
始原的エコンドライト NWA 6704 の鉱物化学的研究 - 初期太陽系年代学への適用に向けて -
Abstract
消滅核種年代法は隕石の高精度年代測定に利用て?きるか?、相対年代のみを与えるため、絶対年代に変換するには、消滅核種年代測定と U-Pb絶対年代測定の両方か?適用可能な隕石(絶対年代基準)か?必要となる。現在、絶対年代基準として最もよく用いられるのはアンク?ライト隕石 D’Orbigny (4564.42 ± 0.12Ma; Amelin et al., 2008) て?あるか?、初期太陽系における消滅核種の均質性を評価する為には、他の天体から飛来した絶対年代基準となり得る古い隕石か?必要て?ある。NWA 6704 は、2010 年に発見された超苦鉄質な始原的エコント?ライト隕石て?あり、4563.75 ± 0.41Ma と非常に古い U-Pb年代を示す(Iizuka et al. 2013)。また、かんらん石(Olv), 輝石(Px), 斜長石(Pl), クロマイト(Chr), メタル,リン酸塩鉱物, なと?様々な鉱物を含み、衝突変成の影響か?小さく結晶質な隕石て?あるため、消滅核種年代法の絶対年代基準となり得る。そこて?本研究て?は、SEM-EDSによる鉱物観察?主要元素定量分析と LA-ICP-MS による主要?微量元素定量分析を行い、NWA6704 の絶対年代基準としての有用性を評価した。




2014-18th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Atsushi Takenouchi, UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Nov. 17th 2014、17:00 - 19:00

Title
火星隕石カンラン石に記録された衝撃履歴
Abstract
強い衝撃を受けた隕石は衝撃変成作用によりカンラン石のモザイク化や斜長石のマスケリナイト化(ガラス化),高圧相転移など様々な特徴を示す.加えて一部の火星隕石ではカンラン石の黒色化という現象が見られる.これは衝撃によりカンラン石中にナノスケールの鉄粒子(金属鉄・磁鉄鉱)が晶出することが原因とされている.鉄ナノ粒子の形成は火星隕石に特有であり,火星での衝突に特有の条件を反映していると考えられる.しかし,鉄ナノ粒子の形成過程・条件,鉄ナノ粒子密度とカンラン石との着色度との関係など明らかになっていないことが多い.そのため我々は黒色カンラン石の詳細観察及びカンラン石が着色した隕石とそうでない隕石の比較観察を行い,ナノ粒子形成の条件や形成過程の解明を進め,火星における天体衝突現象の理解を深める事を目的として研究を進めている.
試料はショックメルトを含み斜長石がマスケリナイト化した強い衝撃を受けたと推定される火星隕石7つ (NWA1950, LAR06139,LAR12095, LEW88516, RBT04262, NWA 1068, Tissint) とコンドライト1つ (L6; NWA4719)を用いた.火星隕石はすべてシャーゴッタイトでカンラン石が着色しているものとしていないものがあり,コンドライトのカンラン石は着色していない.SEM観察によるとショックメルトにおいて,着色カンラン石を含まない隕石には高圧鉱物(リングウッダイト,ワズレアイト)が多く存在し,着色カンラン石を含む隕石ではあまり見つからない傾向が見られた.これは着色したカンラン石を含む隕石では含まない隕石に比べて冷却が遅く、高圧鉱物が生成してもほとんど分解してしまったためと考えられる.実際,高圧鉱物の分解相と思われる組織は広く存在した.このショックメルトでの記録から隕石全体の冷却も相対的に遅かったと考えられ,そのような温度圧力履歴がカンラン石の黒色化=ナノ粒子形成に関わっていた可能性がある.冷却速度を遅らせた原因としては,到達圧力が高く衝撃残留熱による到達温度も高くなり温度がすぐには下がらなかったことなどが考えられ、これらの考察を進めて発表する.




2014-19th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Naoji Sugiura, UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Dec. 8th 2014、17:00 - 19:00

Title
メソシデライト加熱の熱源について
Abstract
Mesosideritesの形成については 大きな謎がたくさん残されている。特に重要なのはmetalとsilicatesのmixingの後に再加熱した熱源を知ることである。熱源を推定するには最高到達温度と冷却速度を知ることが重要であるが、この2つの効果を分離するのは簡単ではない。metal中のPの量、pyroxeneのcompositional gradient, pyroxene lamellae、taenitemorphology, schreibersite morphology and composition等を使った研究の成果を報告する。




2014-20th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Takanori Kagoshima, UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Jan. 19th 2015、17:00 - 19:00

Title
地球表層における炭素・硫黄の物質循環
Abstract
中央海嶺からの炭素フラックスは、MORBおよび熱水中のCO2/3He比と海嶺における3Heフラックスとを掛け合わせることで得られる。また火山ガスのヘリウム同位体比および大陸地殻と海洋地殻の生産速度の比より、火山弧からの3Heフラックスは海嶺の20%であることが知られており (Torgersen, 1989, *Chem. Geol.*), これと火山ガス中のC/3He比から炭素のフラックスを推定できる。しかしながら近年、海水中のヘリウム同位体比, 14C, フロンの分布を基にしたモデル計算により3Heのフラックスが1000mol/yから500 mol/yへと修正された (Bianchi et al., 2010, *EPSL*)ので、それを基に推定されてきた炭素フラックスも修正する必要がある。
本研究では修正された3Heフラックスと世界各地で採取された200℃以上の火山ガスのデータを用いて火山弧からの炭素フラックスを推定した。火山ガスの組成は上部マントルを含む複数成分の混合で説明でき、炭素同位体比およびC/3He比は炭素フラックスにおける上部マントルの寄与を推定する上で有用である。得られた上部マントルの寄与は10%であり、固体地球内部からの正味の炭素フラックスは海嶺の20%であると計算された。地球表層における炭素インベントリーの定常状態を仮定するとき、沈み込む炭素の40%が地球深部に到達しなければならない。発表時には凍結破砕法 (Kagoshima et al., 2012, *Geochem. J.*) で測定したMORBのデータを基に硫黄の物質循環についても議論し、炭素との比較を行う。




2014-21st Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Atsushi Takenouchi, UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Jan. 26th 2015、17:00 - 19:00

Title
火星隕石黒色カンラン石の鉱物学的観察による形成過程と衝撃温度圧力履歴の制約
Abstract
多くの火星隕石は非常に強い衝撃を受けており様々な衝撃変成組織を示すが、カンラン石の黒色化は火星隕石でのみ報告され特異である。黒色化は火星での衝撃変成作用により形成された直径5−20 nmほどの金属鉄または磁鉄鉱のナノ粒子の晶出が原因と考えられているが、形成条件や形成過程の詳細については不明な点が多く、これらを解明することで火星での天体衝突現象に新たな制約を与えることができる可能性がある。本研究では、黒色カンラン石を含む火星隕石と含まない火星隕石、強い衝撃を受けた普通コンドライトを観察、比較し、黒色カンラン石の形成過程と形成条件を明らかにすることで、火星での天体衝突現象の特異性を探ることを試みた。観察には火星隕石8つ(NWA 1950、LAR 06319、LEW 88516、Y984028、NWA 1068、RBT 04262、LAR 12095、Tissint)とLコンドライト1つ(NWA 4719)を用いた。
SEM観察の結果、黒色化(鉄ナノ粒子の形成)にはある程度の高温が必要であることが推測された。また、黒色化は不均一に起きているため温度の不均一を反映できる時間スケールでナノ粒子が形成されたと予想された。ナノ粒子の形成は周囲にSiの濃集相が見られないこと、鉄が拡散で移動している様子がみられることから、カンラン石の還元実験の初期に見られる機構に近いと考えられ、その場合、鉄粒子の形成速度はカンラン石中の鉄の拡散が律速することが知られている。しかし、カンラン石中での鉄の拡散は遅く温度の不均一を反映できないため、拡散速度がより速い高圧相(wadsleyiteやringwoodite)に転移した際に拡散が起こったこと等が必要である。黒色カンラン石中にはレンズ状の低結晶度領域が確認されており、それらはもともと高圧相であった可能性がある。そのため、黒色カンラン石を含む火星隕石は、隕石全体のカンラン石が不均一に高圧相転移するような高温高圧の状態に瞬間的に(~ 数ms)置かれたと考えられる。この瞬間的な高温高圧はおそらく衝撃波伝播の直後に引き起こされるもので、今までどのような衝撃組織にも記録されていないと考えられていた。黒色カンラン石はそのような一時的な高温高圧を記録し、天体衝突現象の初期段階の情報を持っている可能性がある。また、このような情報を持つ隕石は火星サイズ天体での表面での衝突現象が他の隕石が受けている衝突現象と比べて特異である可能性を示唆している。




2014-22nd Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Kohei Fukuda, UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Feb. 2nd 2015、17:00 - 19:00

Title
質量依存同位体分別から考察するFUN CAIsの始原的化学組成
Abstract
コンドライト隕石中には太陽系形成過程の初期段階に固化したと考えられている難揮発性包有物が存在する [1,2]。難揮発性包有物のうち、Calcium-Aluminum-rich inclusions(CAIs)と呼ばれるものの多くは星雲ガスからの凝縮後に再加熱を経験した証拠が多数報告されている[e.g., 3,4]。従って、CAIsの多くは再加熱プロセスを被ったことで始原的な化学組成を維持していないことが示唆される。CAIsの始原的化学組成を見積もることは、それらの形成過程を議論する上で重要であるが、すでにGrossmanらによって質量依存同位体分別の度合いから一般的なCAIsの始原的な化学組成を見積もる研究が為されている[5]。我々はCAIsの中でも同位体的に特異な特徴を示す、いわゆるFUN (Fractionation and UnidentifiedNuclear effects) CAIsに関して、同様の手法で始原的な化学組成を見積もることを試みた。FUNCAIsはその同位体的特徴から一般的なCAIsよりも前に形成した可能性が議論されており [6, 7]、FUNCAIsの始原的化学組成を見積もることで、太陽系最初期の物質形成過程に関する知見を得られることが期待される。
本発表ではAllende隕石中に見つかったForsterite-richなCAI(AL1B-F,[8])中のForsteriteおよびFassaiteに対して二次イオン質量分析計(NanoSIMS 50@大気海洋研究所)を用いたケイ素同位体分析を行い、他の主要元素(マグネシウム、酸素)の同位体分別度合いと比較することで、包有物の始原的化学組成を見積もったのでその結果を報告する。
References: [1] Bouvier and Wadhwa (2010), Nature GeoScience. [2] Connelly+(2012), Science. [3] MacPherson (2003), Treatise on Geochem. [4] Krot+(2009), GCA. [5] Grossman+ (2008), GCA. [6] Sahijpal and Goswami (1998),ApJL. [7] Kita+ (2013), MAPS. [8] Hiyagon and Hashimoto (2008), MetsocAbstract.




2014-23rd Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: a few people
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Feb. 9th 2015、17:00 - 19:00

Title
Discussion on the LPSC2015
Abstract
-



2014-24th Experimental Planetary Sciences Seminar, UTokyo


Speaker: Hajime Hiyagon, UTokyo
Place: Room 839 Faculty of Science Bldg.1, UTokyo
Time: Feb. 16th 2015、17:00 - 19:00

Title
希土類元素からみた細粒CAIの生成環境
Abstract
だいぶ以前にセミナーでもお話ししたことのある、Allende 隕石中にみつかった巨大な細粒CAI (AFG-1) の希土類元素分析の話題です。このCAI (AFG−1)は、サイズが 4mm ほどもあり、数百ミクロン〜1mmサイズの無数の「ノジュール」から構成されています。各ノジュールは、細粒のスピネルが主成分で、リムがあり、よく似た構造をしています。多くのノジュールはほぼフラットな(Eu, Yb のみに欠乏がある)希土類元素パターンを示しますが、中心付近の Hendrix と名づけられたノジュールは、超難揮発性のパターン、大きなペロブスカイトを含む二つのノジュールは、やや難揮発性の独特のパターンを持ちます。これらの個性的なノジュールが、ひとつの巨大なインクルージョンを形成しているところがミソで、このインクル‐ジョンの形成過程を考える上で大きな制約を与えることになります。セミナーでは、希土類元素を使って何がわかるかという基礎的なところも含めて、細粒CAI の形成プロセスについて考えていることを紹介します。



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