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第1回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 三河内 岳
Place: Room 951 理学部1号館
Time: 2013年 4月 15日〔木)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「第54次南極地域観測隊によるナンセン氷原での隕石探査とアングライト中のカンラン石外来結晶についての最近の研究結果」
内容:
 2012年12月から翌年2月まで第54次南極地域観測隊のメンバーとして、セール・ロンダーネ山地南方のナンセン氷原でベルギーと合同の隕石探査を行った。この探査で標高約3000mのフィールドに1ヶ月半程滞在して約420個の隕石を回収した。今回のセミナーでは、この探査についての準備や探査の様子などについて紹介する。
 また、最近行っている研究として、急冷したアングライトに含まれるカンラン石外来結晶についての最新の成果を簡単に紹介する(隕石探査とは直接関係ありません)。特に、NWA 1670についてコペンハーゲン大のMartin BizzarroらとAl-Mg年代と鉱物学的特徴の関係について共同研究を行っているので、その分析結果について議論したい。




第2回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 山田 明憲
Place: Room 951 理学部1号館
Time: 2013年 4月 22日〔木)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「太陽大気中のCO同位体比観測」
内容:
 隕石中の酸素同位体比測定から, 鉱物ごとに測定された酸素同位体比異常(Δ17O)は -40‰ から 90‰ 隕石全岩測定では -5‰ から 3‰ を示すことが明らかとなっている。しかし、隕石の分析からは原始太陽系星雲の初期の酸素同位体比を測定することはできない。太陽系の質量の99%以上は太陽にあるので、太陽の酸素同位体比を測定できれば、太陽系初期の酸素同位体を知ることができる。太陽の酸素同位体比測定には、太陽風と赤外線分光が考えられる。太陽風の酸素同位体比はGenesisミッションによって測定された。しかし、太陽から太陽風への同位体分別は明らかになっていない。
 本研究は、太陽大気の赤外分光観測によって、CO分子の同位体比を誤差20‰程度で測定することを目指している。これまで先行研究は二件あり、δ18O ~0 (Scott et al., 2006), δ18O~100‰ (Ayres et al., 2006) と一致していなかった。先月、Ayres らが解析をやり直し、δ18O ~ -24‰ と発表した(Ayres et al., 2013, ApJ 765:46, doi:10.1088/0004-637X/765/1/46)。
 今回は、この Ayres et al., 2013 を紹介し、今後の研究方針を議論します。




第3回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 佐竹 渉
Place: Room 951 理学部1号館
Time: 2013年 5月 13日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「Relative comparison of the redox states of shergottites and HED meteoritesas inferred from iron micro-XANES measurement of maskelynite and plagioclase」
内容:
 酸素分圧は、形成される鉱物の組み合わせや化学組成が酸素分圧に強く依存することから、重要な情報としてこれまで様々な手法で見積もられており、地球の上部マントルの酸素分圧はlog fO2 = QFM -3 ~ +1と幅広い値をもち不均質であると報告されている (Ballhaus. 1993)。しかし、他天体においてはサンプルを入手する事が困難であり、希望する場所の岩石を入手する事ができないため、サンプル数が少なく酸素分圧の議論が困難である。特に、酸素分圧を調べる主な手法として用いられる鉄チタン酸化物酸素分圧計を用いることのできるサンプルは非常に少ない。そこで本研究は、斜長石とマスケリナイト(斜長石が衝撃を受けガラス化したもの)を、放射光FeマイクロXANESを新しく用いて分析することで、これまで分析が困難だった火星、小惑星ベスタの酸素分圧を相対的に評価した。その結果、これまで考えられていた火星のマントルソースでは説明できない、新しい種類のマントルソースの存在が明らかになった。また、小惑星ベスタにおいては、地球とは逆の傾向を持ち深くなるにつれて酸化的環境であることが明らかになった。



第4回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 羽場 麻季子(東大 地殻化学)
Place: Room 951 理学部1号館
Time: 2013年 5月 27日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「New 207Pb–206Pb age of zircon found in mesosiderite: constraints on the timing of the metal-silicate mixing event on the parent body 」
内容:
メソシデライトはHED隕石に似た組成を持つシリケイト部分と鉄ニッケル合金からなるメタル部分から構成される隕石である.この隕石はメタルとシリケイトの混合イベントによって形成された後,母天体において複雑な変成作用を受けたため,形成年代を求めるのが難しく現在までに下限値のみ報告されている(44.7億年(Rubin and Mittlefehldt, 1993)).
 私達はこれまでにユークライト中のジルコンの主要元素および微量元素分析から,変成度の大きなユークライトではジルコン(ZrSiO4)が変成作用中に新たに形成もしくは過成長を起こした可能性が高いことを提唱している(Haba et al. 投稿中).この考えに基づくと,メソシデライトの形成時,溶けたメタルと反応し部分溶融を起こしたシリケイト部ではジルコンが形成もしくは過成長を起こした可能性が高い.そして,そのジルコンの形成年代はメソシデライトの形成年代を示すと考えられる.
 このような着眼点から,メソシデライトの中でも変成度の大きいEsthervilleについて分析を行ったところ,これまで小惑星起源隕石中で見つかっているジルコンの中で最も大きなジルコンを同定することに成功した.
 これまでに得られている反射電子像,カソードルミネッセンス像,ラマンスペクトルと周辺鉱物の詳細な観察とを併せて考察すると,このジルコンはメタルとシリケイトの混合イベント中に形成もしくは過成長を起こした可能性が極めて高い.また,ジルコンの高感度高分解能イオンマイクロプローブ(SHRIMP)を用いた207Pb–206Pb年代は4520±27 Maであった.この形成年代はこれまでに報告されているメソシデライト(Vaca Muerta)中のジルコンの207Pb–206Pb年代(4563±15 Ma(Ireland and Wlotzka, 1992))と比較して有意に若い.従って,メソシデライト中にはシリケイト部分に元々存在したジルコンと,メタルとシリケイトの混合時に形成したジルコンが存在し,本研究で同定されたジルコンの形成年代はメタル−シリケイト混合年代に対応すると考えられる.
本発表では,隕石中ジルコンの年代学的研究に加え、隕石中微小鉱物に着目した新しい年代測定法の確立に向けた研究も紹介したい.



第5回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 小嶋 稔
Place: Room 951 理学部1号館
Time: 2013年 6月 3日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「太陽系希ガス再考:原始太陽系星雲、太陽風、地球大気、の希ガス」
内容:
太陽系希ガス(ソーラー希ガス)同位体比存在度は太陽系の起源・進化を議論する上での最も基本的なパラメターの一つであるが、依然として未解決である。最近この問題にかんし2〜3の影響力の強いグループによる論文が出版された(1−3)。今回のセミナーではこれらの論文を例に、はじめに現今の慣例的な理解の欠陥―太陽風(SW)希ガスと太陽系希ガスの混同―を指摘する。この混同はCAI酸素を太陽系酸素と同一視するGENESISグループの解釈(4)の誤りとも共通である。
 次に太陽風希ガスと太陽系希ガス間の同位体比分別の機構、とりわけ太陽風内の同位体比分別機構を議論する(5)。
 最後に始原的隕石に含まれるQ―ガスを太陽系希ガスとする新しい見地(5)からの太陽系希ガス同位体比存在度を提唱する(6)。この結果は地球希ガス、とりわけ20Ne/22Ne = 13.8 とする慣習的な仮定の上に築かれた多くの地球大気起源論の見直し求める事になる。
1. Holland G., Cassidy M., Ballentine C.J., Science, 326, 1522, 2009.
2. Mukhopadhyay S, Nature, 486, 101, 2012.
3. Halliday A. N., GCA, 105, 146, 2013.
4. McKeegan K.D. et al., Science, 332, 1532, 2011.
5. Ozima M., Suzuki T.K., Yamada A., Podosek F., MAPS, 47, 2049, 2012.
6. Ozima M., & Marty B., Abstract submitted to Goldschmidt Conference 2013.



第6回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: Mizuho Koike
Place: Room 951 理学部1号館
Time: 2013年 6月 10日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「ALH84001のリン酸塩鉱物におけるシングル・グレインU-Pb年代分析」
内容:
太陽系希ガス(ソーラー希ガス)同位体比存在度は太陽系の起源・進化を議論する上での最も基本的なパラメターの一つであるが、依然として未解決である。最近この問題にかんし2〜3の影響力の強いグループによる論文が出版された(1−3)。今回のセミナーではこれらの論文を例に、はじめに現今の慣例的な理解の欠陥―太陽風(SW)希ガスと太陽系希ガスの混同―を指摘する。この混同はCAI酸素を太陽系酸素と同一視するGENESISグループの解釈(4)の誤りとも共通である。
 次に太陽風希ガスと太陽系希ガス間の同位体比分別の機構、とりわけ太陽風内の同位体比分別機構を議論する(5)。
 最後に始原的隕石に含まれるQ―ガスを太陽系希ガスとする新しい見地(5)からの太陽系希ガス同位体比存在度を提唱する(6)。この結果は地球希ガス、とりわけ20Ne/22Ne = 13.8 とする慣習的な仮定の上に築かれた多くの地球大気起源論の見直し求める事になる。
火星隕石ALH84001は、他のSNC隕石より著しく古い結晶化年代(> 4.1Ga)を持ち、太古の火星環境について情報を与えるという点で重要である。またこの隕石は複数回の衝撃加熱・変性イベントを経験しており[1]、その複雑な歴史はまだ十分に解明されていない。一方で、隕石中に含まれるリン酸塩鉱物(apatite, merrillite)はUやThなどを濃集し年代分析に利用される。SHRIMPを用いた先行研究では、ALH84001の複数のリン酸塩グレインを分析し4018 ± 81 Maというconcordantな全U-Pb年代を報告している[2]。しかし、個々のグレイン内部のU-Pb系については、技術的な制約から確かめられていなかった。隕石の複雑な熱史を知る為には、より微小なスケールでの元素の振る舞いを調べる必要がある。本研究では非常に高い空間分解能を持つNanoSIMSを用いて、隕石中のリン酸塩鉱物のシングル・グレインでのU-Pb, Pb-Pbアイソクロンを決定し、年代を得た。これまでの結果から、50µmサイズのグレイン内でconcordantが保たれていたこと、および初生ウラン濃度に不均一が存在したことが示唆されている。また、ウランの濃度分布を調べたところ、coreからrimへ向かうzoning が見られた。リン酸塩鉱物が形成される際に生じた濃度の不均一が,現在まで保存されていると解釈出来る。さらに、得られた結果をアパタイト結晶中のウランと鉛の拡散速度の観点から考察する事で、隕石が火星表層で経験した衝撃イベントでの温度・冷却条件に制約を与えた。今回のセミナーでは、これまでの結果に基づく考察、および新たに得られたデータ・今後の展望についてお話ししたい。皆様からのご意見・ご助言を是非とも頂きたいと考えている。

[1] Treiman (1998) Meteorit. Planet. Sci. 33, 753-764.
[2] Terada et al. (2003) Meteorit. Planet. Sci. 38, 1697–1703.




第7回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 鹿児島 渉悟
Place: Room 951 理学部1号館
Time: 2013年 6月 17日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「硫黄・ハロゲンの中央海嶺フラックスと地球表層における物質循環の推定」
内容:
硫黄・ハロゲンは地圏・生物圏において多様な化合物を形成する揮発性元素であり、それらの物質循環に関する知見は重要である。しかし火山活動に伴う物質輸送が盛んな中央海嶺からの硫黄・ハロゲンのフラックスは良く分かっていない。MORBの急冷ガラス縁は上部マントル由来のマグマの揮発性元素組成を保持すると考えられているが、その全岩組成を基にした硫黄やフッ素のフラックスの推定値は過大評価であることが指摘されている [1]。本研究ではMORBガラスの気泡中に保持される火山ガスの組成を基にすることで、より確からしい硫黄・ハロゲンのフラックスの推定を行った。
 東太平洋海膨・大西洋中央海嶺・中央インド洋海嶺上の6か所で採取されたMORBガラスについて、気泡部分を凍結破砕法 [2]で、固体部分をSIMSで分析した。フラックスの推定は、気泡・全岩における硫黄・ハロゲンのヘリウム−3に対する濃度比と既知のヘリウム−3フラックスとを掛け算して行った。濃度比を利用することで空隙率の違いに起因する揮発性元素濃度の多様性を無視して議論することが可能となった。
 分析の結果、気泡中の硫黄・フッ素・塩素のヘリウム−3に対する濃度比は全岩の濃度比に対し2-3桁低いことが分かった。気泡組成を基にした硫黄・フッ素のフラックスの推定値は、従来の全岩組成を基にした推定値に対してそれぞれ1/10倍, 1/1000倍程度の大きさとなった。本発表では新たに得られたフラックスを基に硫黄・ハロゲンの物質循環、地球表層環境の形成史に関する議論を行う。

[1] Tajika E. (1998) Geophys. Res. Lett., 25, 3991-3994.
[2] Kagoshima T. et al. (2012) Geochem. J., 46, e21-e26.



第8回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 永井 友一朗 (東工大地惑専攻 横山研究室D2)
Place: Room 951 理学部1号館
Time: 2013年 6月 24日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「Development of tungsten isotope analysis for the study of chronological constraints for metal components in CAI」
内容:
 Ca, Al-rich inclusions (CAIs) have formed in the early solar system. They include not only primary solar nebula condensates but also inclusions which have a complex history involving partial melting and secondary alteration. Flemdlinge (complex aggregates of metal grains, sulfides, Ca-phosphates, oxides and silicates which are rich in refractory siderophile and some refractory lithophile elements) are one of the inclusions in CAIs, but it is unclear when they have formed. To provide chronological constrains by tungsten (W) model age [1], here we have developed highly precise W isotope analysis using N-TIMS.
 High precisions (< 0.2ε for 182W/184W; Mr. Okabayashi, Pers. Comm.) are required for obtaining resolvable age of Flemdlinge from CAIs. Instrumental mass fractionation was corrected by the exponential law (186W/184W = 0.9276716 [2]). For efficient ionization of W, samples were loaded on Re filaments, and covered with La, Gd-nitric acids. Reproducibilities of 100ng of standard solution (NIST 3163) were 17.3ε, 0.26ε and 0.26ε for 180W/184W, 182W/184W and 183W/184W, respectively (n = 4, 2SD). Hence lower amounts of W are measured with comparable precisions for analyzing W isotope compositions of Flemdlinge.
[1] Markowski et al. (2006). EPSL, 242, 1-15. [2] Volkening et al. (1991). Int. J. Mass Sectrom. Ion Processes, 107, 361-368.




第8回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 永井 友一朗 (東工大地惑専攻 横山研究室D2)
Place: Room 951 理学部1号館
Time: 2013年 6月 24日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「Development of tungsten isotope analysis for the study of chronological constraints for metal components in CAI」
内容:
 Ca, Al-rich inclusions (CAIs) have formed in the early solar system. They include not only primary solar nebula condensates but also inclusions which have a complex history involving partial melting and secondary alteration. Flemdlinge (complex aggregates of metal grains, sulfides, Ca-phosphates, oxides and silicates which are rich in refractory siderophile and some refractory lithophile elements) are one of the inclusions in CAIs, but it is unclear when they have formed. To provide chronological constrains by tungsten (W) model age [1], here we have developed highly precise W isotope analysis using N-TIMS.
 High precisions (< 0.2ε for 182W/184W; Mr. Okabayashi, Pers. Comm.) are required for obtaining resolvable age of Flemdlinge from CAIs. Instrumental mass fractionation was corrected by the exponential law (186W/184W = 0.9276716 [2]). For efficient ionization of W, samples were loaded on Re filaments, and covered with La, Gd-nitric acids. Reproducibilities of 100ng of standard solution (NIST 3163) were 17.3ε, 0.26ε and 0.26ε for 180W/184W, 182W/184W and 183W/184W, respectively (n = 4, 2SD). Hence lower amounts of W are measured with comparable precisions for analyzing W isotope compositions of Flemdlinge.
[1] Markowski et al. (2006). EPSL, 242, 1-15. [2] Volkening et al. (1991). Int. J. Mass Sectrom. Ion Processes, 107, 361-368.




第9回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 福田 航平
Place: Room 951 理学部1号館
Time: 2013年 7月 1日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「FUNヒボナイト包有物に関する同位体的研究」
内容:
 難揮発性包有物(CAI)の中にはFUN包有物と呼ばれるマイナーなグループが存在し、それらは3つの同位体的特徴(1. O, Mg, Siなどにおいて重い同位体に富んだ質量依存同位体分別を示す 2. 安定同位体(特に48Ca, 50Ti)に起源の不明な同位体異常を持つ 3. 26Al壊変起源である26Mgの過剰が見られない)を示すことから、一般的なCAIとは区別される。26Mgの過剰が見られないことから、FUN包有物の形成時期は26Alが完全に壊変した後かもしくは26Alが太陽系に持ち込まれる以前であったことが考えられるが、48Caや50Tiに同位体異常がみられる事実はそれらが太陽系最初期に形成された可能性を示唆する。FUN包有物の起源は未だ詳しく理解されておらず、これらの形成プロセスを理解することは、太陽系材料物質の起源や、同位体均一化のプロセスを考察する上で非常に重要である。
 我々は太陽系材料物質の起源・初期太陽系における同位体均一化プロセスを明らかにすべく、始原的隕石に少量含まれるヒボナイトに着目し、二次イオン質量分析計(SIMS)を用いた同位体分析を行っている。今回は、分析した包有物のうち大きな質量依存同位体分別(<50‰ per amu)と初生26Al/27Al比が誤差の範囲でゼロ、さらにCaおよびTiの安定同位体に異常もつ3つのFUNらしき包有物を発見したので報告する。近年のFUN包有物の研究を踏まえ、この3つの包有物の成因について議論したい。




第10回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 青柳 雄也
Place: Room 951 理学部1号館
Time: 2013年 7月 8日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「Almahata Sittaユレイライトに見られる鉄・鉄化合物の共存組織」
内容:
 ユレイライト隕石中に見られる金属鉄には、ケイ酸塩鉱物の粒間を埋めるように存在する初生的なものと、ケイ酸塩鉱物が炭素によって還元されてできた二次的なものがある。ケイ酸塩鉱物に比べ、それら金属鉄に関しては詳細な研究はあまり行われていないが、Almahata Sittaユレイライトのケイ酸塩鉱物間に存在する金属鉄には他の隕石には見られない特徴的な組織が報告されている。その組織は、結晶構造が異なるα鉄(bcc)とγ鉄(fcc)が共存するもの、それら鉄の相に加えcohenite ([Fe,Ni]3C)やschreibersite([Fe,Ni]3P)が様々な割合で混ざり合ったものなどがある。先行研究ではある一つのサンプルにのみ見つかっていた組織であったが、他のAlmahata Sitta破片に含まれる金属鉄においても同様の組織を発見した。サンプルによって量や形態は多少異なってはいるが、これら金属鉄の組織はAlmahata Sittaユレイライトの全てにおいて見られるものであることが示唆される。
 これら金属鉄の共存組織はユレイライト母天体上での何らかの熱史を記録していると考えられる。また、金属鉄から得られる情報をケイ酸塩鉱物から得られる情報と組み合わせることにより、さらにユレイライトの理解に近づくことが期待される。今回はそれら鉄・鉄化合物組織や各々の鉱物相についての分析・観察結果をご報告する。またFE-EPMAの導入によって従来以上の高解像度で観察ができるようになり、より詳しく金属鉄組織に迫れるようになった。これらから分かる金属鉄組織の成因や形成について、地球における製鉄プロセスも考慮に入れながら議論していきたい。




第11回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 木多 紀子(ウィスコンシン大学)
Place: Room 951 理学部1号館
Time: 2013年 7月 11日 (木)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「コンドリュールの酸素同位体システマティック:Rコンドライトの例から」
内容:
ウィスコンシン大学では複数のコンドライト隕石について、グループごとに数十個のコンドルールを選び、SIMS による詳細な酸素同位体比分析を行ってきた。その結果、コンドルール中のオリビンや輝石のMgO/(MgO+FeO) モル%(Mg#)と酸素同位体の間にはグループごとに特徴的な傾向があることがわかった。今回はコンドライト隕石中で全岩の酸素同位体比が最も16Oに乏しいことで知られるRコンドライトに着目し、角礫岩Rコンドライトの中の非平衡Rコンドライトクラストのコンドリュールを選び、詳細な酸素同位体比分析を行った。コンドリュールの酸素同位体は全岩に比べ16Oに富み、Mg#との相関も含め、普通コンドライトとよく似ていることがわかった。同時に、Rコンドライト母天体には全岩の酸素同位体比よりもさらに16Oに乏しい水成分が集積したことが、強く示唆される。



第12回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 山口たかお(飯塚研究室)
Place: Room 951 理学部1号館
Time: 2013年 7月 22日 (木)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「太古代バーバートン玄武岩のLu-Hf同位体分析〜マントル初期進化の解明に向けて〜」
内容:
 地球史を通じたマントルの進化は, Sm-NdやLu-Hfの放射壊変系列の同位体比で研究されている。これはマントル起源岩石のNdやHfの同位体組成が, その当時のマントルの化学分化の度合いを反映するためである。しかし, 地球初期マントルのこれらの同位体組成については, いまだに議論が続いている。その原因として, 太古代の試料数が少ない点, 存在していても変成変質の影響から初生的な値を保持していない可能性がある点, 試料の多くがフェルシックな岩石やそれを母岩とする鉱物(例えば, ジルコン)であるため, 太古代マントルの情報を直接的に反映してない点が挙げられる。そこで我々は, 南アフリカバーバートン地域のPillow lavaのHf同位体分析を行っている。バーバートン地域には, 約35億年の変成度の低い岩石が多産する。この地域からは既にコマチアイト試料でHf同位体比が報告されている。一方、我々は現世の玄武岩と類似した試料を用いて, 太古代と現世で似通った化学組成を持つ玄武岩の同位体組成を直接比較することを目指している。また, 35億年前のコマチアイトと玄武岩のHf同位体組成を比較することで, 顕生代以降殆ど見られないコマチアイトの成因に新たな制約を与えられる可能性がある。  今回の発表では, 本研究の重要性, 期待される成果, そしてこれまでに行ってきた分離手法の開発について報告をする。




第13回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 杉浦 直治
Place: Room 851 理学部1号館
Time: 2013年 10月 7日 (木)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「隕石の表面の特徴と火球の形成」
内容:
火球のいわゆる”爆発”がどのようにして起きるのかについてはその詳細は 不明な点が多い。
隕石の表面は、(多くの場合)この火球の中で形成されるので、火球の形成過程を記憶しているはずである。
この様な観点からchelyabinsk隕石の表面を眺めてみる。




第14回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 比屋根 肇
Place: Room 851 理学部1号館
Time: 2013年 10月 21日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「NWA801(CR2)コンドライト中に見つかった高圧鉱物相を含む火成岩的クラストの起源について」
内容:
NWA801(CR2)コンドライト中に見つかった火成岩的なクラストには、olivine のほか、Na-Al-rich な pyroxene (omphacite) や garnet が含まれ、その生成条件は、約1000度C、3-4GPaと見積もられた (Kimura et al., 2013, Amer. Mineral. 98, 387-393)。
このような高温・高圧の原因としては、大きな微惑星内部の静水圧か、あるいは微惑星どうしの衝突における衝撃圧が考えられる。静水圧で説明するには、半径1500kmの巨大な微惑星を考えなくてはならない。一方、衝撃圧の場合には、高温・高圧条件の継続時間が短い(最大10秒程度)ため、元素の移動を伴う高圧相の生成が可能か検討を要する。希土類元素分析、酸素同位体分析データや、拡散データなどを用いて考察した結果、衝撃圧起源説では説明困難で、静水圧による高圧を考えるべきだという結論になりつつある。本セミナーでは、執筆中の論文の骨子を紹介するので、いろいろとディスカッションしていただきたいと考えている。




第15回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 竹ノ内 惇志
Place: Room 851 理学部1号館
Time: 2013年 10月 28日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「炭素質コンドライトの宇宙線照射史は我々に何を教えてくれるか?」
内容:
 コンドライトは化学的に始原的であるといわれ,中でも炭素質コンドライトは熱変成を逃れたため最も始原的だと考えられている.故に炭素質コンドライトには太陽系初期の記録が得られると考えられる.我々の研究では炭素質コンドライトの中でも始原的であると言われ,試料数も豊富なCMコンドライトについて扱う.
 CMコンドライトは宇宙線照射年代が他の隕石とは異なる挙動を示す.普通コンドライトなどのグループの宇宙線照射年代の頻度分布は数Myr〜数十Myrに広がり,主に一つのピークを持つが,CMコンドライトの宇宙線照射年代の分布は7Myr以下であり,複数のピークを持つ.このピークはおそらく母天体脱出の衝突イベントを反映していると考えられているため,それぞれのピークに属する隕石の構造はその母天体の構造を反映しており,それらをピークごとに調べることでCMコンドライトの母天体の情報を得ることができる.今回は主に岩石学的な構造の定性的な比較でCMコンドライトの母天体についてを考察する.
(夏にNASAで2ヶ月間インターンとして行ってきたプロジェクトです)




第16回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 鹿児島 渉悟
Place: Room 851 理学部1号館
Time: 2013年 11月 11日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「MORBの気泡分析による硫黄・ハロゲンのMORフラックスの推定」
内容:
 硫黄・ハロゲンは地圏・生物圏において多様な化合物を形成する揮発性元素であり、それらの物質循環に関する知見は重要である。しかしMORBガラスの全岩組成を基にした硫黄やフッ素のフラックスの推定値は過大評価であり [1]、より確からしいフラックスの推定が必要である。本研究ではMORBガラスの気泡を凍結破砕法 [2]で、固体部分をSIMSで分析して、気泡・全岩における硫黄・ハロゲンのヘリウム−3に対する濃度比と既知のヘリウム−3フラックスとを掛け算することでフラックスの推定を行った。濃度比を用いることで、空隙率の違いに起因する元素濃度の多様性を無視して議論することができた。
 東太平洋海膨・大西洋中央海嶺・中央インド洋海嶺上の8か所で採取された試料を分析した結果、気泡中のヘリウムの同位体比および濃度は典型的なMORBの値を示した。フラックスの推定値は、硫黄が2.3E10–6.6E12 mol/yr、フッ素が7.1E8–3.4E12 mol/yr、塩素が1.5E10–1.6E12 mol/yr、臭素が<1.1E9 mol/yrとなった。硫黄・フッ素・塩素フラックスの下限は気泡組成を基にした推定値、上限は全岩組成を基にした推定値である。本研究の硫黄フラックスの下限値は、海洋地殻の変質によるフラックス(7.8E10 mol/yr [3])に近い。正味のフラックスは全岩組成を基にした推定値よりも桁で小さい、気泡組成を基にした推定値に近いと考えられる。本発表では沈み込み帯におけるフラックスについても触れ、地球表層における揮発性元素の物質循環を議論する。

[1] Tajika E. (1998) Geophys. Res. Lett., 25, 3991-3994.
[2] Kagoshima T. et al. (2012) Geochem. J., 46, e21-e26.
[3] Alt J. C. (1995) Geology, 23, 585-588.





第17回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 青柳 雄也
Place: Room 851 理学部1号館
Time: 2013年 11月 18日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「Almahata Sittaユレイライトに見られる鉄・鉄化合物の共存組織と形成」
内容:
 ユレイライトは超塩基性のエコンドライトであり、主要な構成要素として金属鉄を含む。ケイ酸塩鉱物に比べて、金属鉄に関しての詳細な研究はあまり行われていないが、Almahata Sittaユレイライトのケイ酸塩鉱物の粒間に存在する金属鉄には、他のユレイライトや隕石には見られない特徴的な組織が報告されている(Goodrich et al. 2010, Mikouchi et al. 2011)。その組織は、組成に変化はないが結晶構造が異なるα鉄(bcc)とγ鉄(fcc)が共存するもの、それら鉄の相に加えcohenite([Fe,Ni]3C)やschreibersite([Fe,Ni]3P)といった鉄化合物が様々な割合で混ざり合ったものなどがある。先行研究ではある一つの試料にのみ見つかっていた組織であったが、他のAlmahata Sitta破片に含まれる金属鉄を詳細に観察すると、同様の組織を見つけることができた。またこれらの組織がAlmahata Sittaにのみ見られるものなのか、全てのユレイライトにおいて普遍的に見られるものなのかを調べるため、極地研の南極隕石をお借りして同様の観察を行なった。するとあまり顕著ではないものの、南極ユレイライトにおいても同様の鉄・鉄化合物組織が観察された。サンプルによって量や形態は多少異なってはいるが、これら金属鉄の組織は全てのユレイライトにおいて普遍的に見られるものであることが示唆された。
 以上のことから、これら鉄・鉄化合物の共存組織はユレイライト母天体上での何らかの熱史を記録していると考えられる。また、金属鉄から得られる温度情報はケイ酸塩鉱物に記録されているものよりもより低い温度領域のものであることが期待される。それら鉄・鉄化合物組織や各々の鉱物相についての組成や組織の分析・観察結果をご紹介し、金属鉄組織の成因や形成について、地球における製鉄プロセスとの比較も考慮に入れながら議論していきたい。加えて、観察された金属鉄と同じ組成の出発物質を作成し、溶融後、還元的な環境下で冷却速度をコントロールして同様の組織ができるのかどうかを確かめる実験を予定している。それに際し、出発物質の作成ならびに出発物質自体の観察を行なった。その結果も合わせてご報告する。





第18回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 小池 みずほ
Place: Room 851 理学部1号館
Time: 2013年 11月 25日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「隕石リン酸塩鉱物の同位体比分析から探る火星表層環境の進化史」
内容:
 地球型惑星の環境進化において、水は様々な役割を果たす重要な物質である.近年の調査によって、火星表層にかつて液体の水が存在した事が解明されつつあるが、水の存在規模や存在期間、散逸プロセスについては共通理解が得られていない.一方で、幅広い年代値が報告されている火星隕石は、火星の過去から現在に至る進化史を紐解く鍵として期待されている.特に、隕石中に含まれるリン酸塩鉱物は、マグマの様々な微量元素を濃集し、結晶化当時の環境を記録する.さらにU, Thなどの長寿命放射性元素に富み年代分析にも利用できる為、リン酸塩鉱物から年代の情報と環境の情報を同時に得ることが可能である.
 本研究では、NanoSIMSの高い空間分解能を利用し、最古の火星隕石であるALH 84001のリン酸塩鉱物グレインについて局所U-Pb年代分析を行い、隕石の熱史に制約を与えた.また、同一グレインの揮発性元素濃度・水素同位体比を調べることで、太古の表層環境を推定することを試みる.
 セミナーではこれまでの結果とともに、最近新たに行った分析についてもご紹介し、皆様のご意見をお聞きしたいと考えている.




第19回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 福田 航平
Place: Room 851 理学部1号館
Time: 2013年 12月 2日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「二次イオン質量分析計を用いたFUNヒボナイト包有物に関する同位体的研究」
内容:
 近年の物質科学的研究から、大部分の太陽系固体物質に含まれる主要元素同位体組成は0.01%の程度で一様なことがわかってきた。一方で、始原的隕石中には均一化された収束値から著しい同位体異常を示す物質(プレソーラー粒子)が発見されている。プレソーラー粒子は太陽系材料物質の生き残りであると考えられており、太陽系は様々な星における核合成を起源とする物質の集合体からスタートしたことが伺える。このことは、太陽系の材料物質は異なる起源を持つ同位体的に著しく不均一な物質の集合体であったが、太陽系形成の最初期段階において、起源物質を大規模に混合する過程が存在し、同位体組成の均一化が起こったことを示す。
 我々は初期太陽系における大規模な物質混合・同位体均一化プロセスに言及することを目的とし、二次イオン質量分析計を用いたヒボナイト包有物に対するマルチ同位体分析を進めている。Al-Mg同位体、CaおよびTi同位体分析の結果、大きな質量依存同位体分別 (Mg : ~55‰/amu)と初生26Al/27Al比がゼロ、さらに安定同位体に異常をもついわゆるFUN (Fractionation and Unidentified Nuclear effects) 包有物を3つ発見した。今回はこれら3つの包有物に対して新たに酸素同位体分析を行ったので、その結果を踏まえ、3つの包有物の来歴、さらには初期太陽系における物質混合モデルへの制約について議論したい。





第20回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 小嶋 稔(東京大学名誉教授)
Place: Room 851 理学部1号館
Time: 2013年 12月 9日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「福島原発メルトダウン・デブリの核分裂再臨界の可能性
  ―オクロ天然原子炉から学ぶ事ー」
内容:
 現在福島第一原発1号炉の底には約50トンのウラン核燃料・デブリ(炉心溶融物)が溜まっているが、極度に強い放射線のため観測が困難でその状態は殆ど分かっていない。核燃料デブリには、核分裂連鎖反応を起こす235Uが濃縮されているため、将来ウラン核分裂連鎖反応(再臨界)をおこす可能性が危惧される。この深刻な問題へのアプローチとして、地球化学的立場から、オクロ天然原子炉の研究成果の活用が有用である。 このセミナーでは、オクロ天然原子炉を中心に、福島第一原発の現状(Physics Today, Nov. 2013、20ページ:これは実にショッキングなレポート)、;原子炉−核分裂連鎖反応の基礎概念、等について述べる。

参考文献:藤井勳、天然原子炉、UPアースサイアンス、東大出版会、1985年。




第21回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 山田 明憲
Place: Room 851 理学部1号館
Time: 2013年 12月 16日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「太陽大気中のCO同位体比観測」
内容:
 隕石中の酸素同位体比測定から, 鉱物ごとに測定された酸素同位体比異常(Δ17O)は -40‰ から 90‰ 隕石全岩測定では -5‰ から 3‰ を示すことが明らかとなっている。しかし、隕石の分析からは原始太陽系星雲の初期の酸素同位体比を測定することはできない。
 太陽系の質量の99%以上は太陽にあるので、太陽の酸素同位体比を測定できれば、太陽系初期の酸素同位体を知ることができる。太陽の酸素同位体比測定には、太陽風と赤外線分光が考えられる。太陽風の酸素同位体比はGenesisミッションによって測定された。しかし、太陽から太陽風への同位体分別は明らかでない。赤外分光については、これまで研究は3件あり、δ18O ~ 100‰ (Ayres etal., 2006), δ18O ~ 0 (Scott et al., 2006), δ18O ~ -24‰ と発表した(Ayreset al., 2013)。いずれも誤差が大きく、初期太陽系でのガスから粒子への化学反応を議論することはできていない。本研究は、太陽大気の赤外分光観測によって、CO分子の同位体比を誤差20‰程度で測定することを目指している。
 これまでの赤外分光による太陽大気の同位体比観測はスペースシャトル搭載の赤外分光計ATMOSのデータを用いて行われた。本研究ではカナダの人工衛星ACEに搭載されているFTSを用いる。もっとも大きなアドバンテージはデータが多いことである。観測のエラーがランダムなばらつきであれば、「多数のデータの平均をとるという操作で誤差を小さくできる」という作戦です。この方法が使えるかを検討したので、報告します。




第22回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 新原 隆史 (国立極地研究所 SHRIMPラボラトリー)
Place: Room 851 理学部1号館
Time: 2014年 1月 20日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「衝撃を受けたバデレアイトのU-Pb同位体系:火星隕石(シャーゴッタイト)の結晶化年代の理解を目指して」
内容:
 火星隕石であるシャーゴッタイトからは様々な同位体系を用いて年代測定が行われており、その多くは約2億年(500-170 Ma)という若い年代を示している。BouvierらのグループはICP-MSを用いてシャーゴッタイトのPb-Pb年代を求め、41億年という古い年代を報告した。この年代の解釈として、41億年という年代こそがシャーゴッタイトの結晶化年代であり、2億年という若い年代は衝撃変成もしくは水質変成によりリセットした年代であると主張しているが、その根拠は示されていない。
 Herdらは、火星隕石に含まれるバデレアイトに着目し、鉱物年代測定を試みている。バデレアイトは一般的に熱に強い性質をもつとされるが、U-Pb系が、衝撃変成による高圧・高温状態よってどのような影響を受けるかどうかについて、実験データは存在していない。このため、衝撃変成による影響を理解するため、年代既知のバデレアイトを用いた衝撃圧縮実験およびその後の加熱実験を行った。さらに火星隕石であるRBT 04261に含まれているバデレアイトについて、改良型メガマウントシステムを用いたSHRIMP年代測定を行ったので、併せて報告する。




第23回宇宙地球同位体科学セミナー(2013年度)

Speaker: 山田・鹿児島・青柳・小池・福田
Place: Room 851 理学部1号館
Time: 2014年 2月 10日 (月)、17:00 - 19:00

セミナータイトル:
 「LPSC 2014 abstractの紹介」
内容:





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