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第1回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 杉浦 直治
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 4月 5日〔木)、5:00 to 7:00 pm

セミナータイトル:
 「accretion ages of meteorite parent bodies and the evolution of the solar nebula :An update」
内容:
各種隕石中の54Crの異常に基づいて、太陽系の進化に関する研究を続けている。
今回は、主に、HEDとangrite母天体の集積年代のrevisionについて報告する。




第2回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 福田 航平
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 4月 19日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「二次イオン質量分析計を用いた火星隕石のU-Pb同位体測定」
内容:
 火星隕石の大部分を占めるshergottiteグループはこれまでおよそ2億年の結晶化年代を示すと言われてきたが、全岩同位体測定で40億年という古い年代を示す結果を得ているグループも存在し、この議論には現在も決着はついていない。今回は広島大学設置のSHRIMPを用いたshergottite中に存在するリン酸塩鉱物の局所U-Pb同位体測定の結果を紹介する。また、発見数の少ないchassigniteグループの測定結果も併せて紹介する。




第3回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 青柳 雄也
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 4月 26日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「共存するゼオライトと粘土鉱物の交換性陽イオン組成の変化」
内容:
 The Kakkonda geothermal field in the Hachimantai, Iwate, is one of the largest geothermal areas in Japan. There is zonal distribution of alteration characterized by Na-rich minerals. In Kakkonda, Na-rich minerals change from Na-smectite, clinoptilolite, mordenite, analcime, and to albite with depth. The zonal sequence similar to that in Kakkonda without albite is also seen in Iburi area, southwestern Hokkaido. In order to understand the formation process of the Na-rich alteration zoning and the mechanism of cation exchange reaction, I determined the chemical compositions of zeolites and clay minerals involving exchangeable and non-exchangeable cations in the two fields. Based on the analyze, the percentage of exchangeable Na in clinoptilolite in the Kakkonda increased with depth, while those of clay minerals increased with depth. In the Iburi, the increasing of exchangeable Na with depth was hardly seen in any of zeolites and clay minerals, because the alteration zone may have been modified by the superimposed influence of hydrothermal water rich in Ca.
 In the present study, it was assumed that zeolites and clay minerals coexisting in the same depth must have been in equilibrium with a common solution and the effect of temperature on elemental partitioning was negligible for simplicity. By considering the partition coefficients of zeolites and clay minerals, the concentration of cations in the solution was estimated from the ratio of exchangeable cations in the crystals. The results of Kakkonda region indicated that the composition of considerably Na-enriched solution was expected for the formation of alteration zoning of Na-rich minerals.




第4回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 佐竹 渉
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 5月 10日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「マイクロXANESによる火星隕石結晶化時の酸化還元状態の相対評価」
内容:
  火星隕石最大のグループであるシャーゴッタイトは、約数億年前に結晶化した超塩基性岩であるが、岩石学的特徴により、玄武岩質、カンラン石フィリック質、レールゾライト質に分類される。また、岩石学的分類とは独立に、軽希土類元素の含有量や同位体組成などによっても、軽希土類元素が欠乏している"Depleted"なもの、軽希土類元素に富んでいる"Enriched"なもの、これら2つの中間的な値を持つ"Intermediate"なものの3つに分類できることが近年明らかになって来ている。さらに、化学的分類には、マグマの酸化還元状態が関連しており、Depletedなシャーゴッタイトは還元的な環境下(logfO2=QFM-3程度)で、Enrichedなシャーゴッタイトは酸化的な環境下(QFM-1程度)で形成された事が指摘されている。マグマの酸化還元状態はシャーゴッタイトの起源となるマントルの状態を強く反映しているために、火星の火成活動やマントル組成を考える上で極めて重要な要素であるが、これまでには僅かなシャーゴッタイトについてしか見積もられていない。
  本研究では、より早い段階でマグマから結晶化する斜長石に注目して、放射光を用いたマイクロXANES分析を用いてFe3+/ΣFe比を得ることで、シャーゴッタイトの酸化還元状態の相対的な推定を行なった。得られたFe3+/ΣFe比が軽希土類元素の含有量や同位体組成と連動しているかを考察する。




第5回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 山田 明憲
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 5月 31日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「太陽大気中のCO同位体比観測」
内容:
隕石中の酸素同位体比測定から, 鉱物ごとに測定された酸素同位体比異常は -40‰ から 90‰ を示し、隕石全岩測定では -5‰ から 3‰ を示すことが明らかとなっている。しかし、隕石の分析からは原始太陽系星雲の初期の酸素同位体比を測定することはできない。
 太陽系の質量の99%以上は太陽にあるので、太陽の酸素同位体比を測定できれば、太陽系初期の酸素同位体を知ることができる。太陽の酸素同位体比測定には、太陽風と赤外線分光が考えられる。太陽風の酸素同位体比はGenesisミッションによって測定された。しかし、太陽から太陽風への同位体分別は明らかになっていない。本研究は、太陽大気の赤外分光観測によって、CO分子の同位体比を誤差20‰程度で測定することを目指している。
 カナダの人工衛星が太陽光の赤外分光スペクトルをとっている。ノイズの低いデータが8年分の蓄積があるので、このデータを使わせていただき、太陽の同位体比の測定を試みている。誤差評価はこれからなので希望的観測を話すことになりますが、現在の進捗状況を発表します。




第6回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 比屋根 肇
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 6月 7日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「ヒボナイト包有物から初期太陽系の同位体不均一を探る」
内容:
 マーチソン隕石などに含まれるヒボナイト包有物のあるものについては、26Alなど星の核合成起源の短寿命放射性核種が太陽系に持ち込まれる以前に形成された可能性が議論されている。ここでは、ヒボナイト包有物に関する最近の論文についてレビューした上で、我々が進めつつある研究について紹介し、今後の研究の方向性を考えたい。
 ヒボナイト包有物には、その形態的特徴と同位体的特徴に明瞭な相関があることが知られている。(1)SHIBs(スピネル−ヒボナイト球状包有)は、初生26Al/27Al比が〜5E-5と通常のCAIと同じカノニカル値に近い値を示し、Ca, Tiなどに同位体異常は見られない。(2)一方、PLACs(ヒボナイト板状結晶)や、BAGs(青色凝集物)は、初生26Al/27Alが非常に低い値を示し、しばしば48Ca,50Tiに大きな同位体異常を示す。後者については、単純な26Al-26Mg系の年代学的解釈によれば、26Al壊変後の遅い時期に形成されたことを示唆するように思われるが、それだとCa, Tiの大きな同位体異常がなぜ遅い時期まで保存されたのかが説明困難である。むしろ逆に、後者は26Alなどが太陽系に持ち込まれる以前の、通常のCAIよりも前の時代に形成されたと考えた方が、Ca, Tiの大きな同位体異常の存在と整合的である。もしその解釈が正しいなら、ヒボナイト包有物を調べることにより、太陽系形成の最も初期の物質進化について情報を得ることができるかもしれない。
 このようなモチベーションのもと、マーチソン隕石から実際にヒボナイト包有物を抽出し、SIMS (大気海洋研の NanoSIMS および 産総研の ims-1270)を用いてマグネシウム同位体分析をおこなった(佐々木修論2012)。その結果は、SHIBsとPLACsについては先行研究と整合的なものであるが、それ以外に、非常に大きなマグネシウムの質量依存同位体分別(>50パーミル/amu)を示す新しいタイプの包有物を発見した。この包有物は初生26Al/27Alが低く、いわゆるFUN包有物と関連があるかもしれない。現在、その生成条件などについて検討中である。これらの結果を紹介した上で、今後の研究の方向性について議論したい。




第7回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 岩上 直幹
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 6月 7日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「大気組成の分光測定」
内容:
 私はこれまでオーロラ・大気光、オゾン層、金星探査などに関わってきた
一見バラバラだが「光学遠隔測定」特に分光測定が縦糸となっている
来7月、ハワイ・マウナケアのIRTF 3m鏡で予定している
金星地上観測の作戦検討をネタに分光定量を解説する
主目的はO2大気光のK波変調検出
副目的は欧州の金星探査機との気温測定比較
副副目的は・・・Oの16/17/18比も検討中





第9回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 牛久保 孝行(ウィスコンシン大学マディソン校)
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 9月 27日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「Acfer 094隕石のFine-grained CAIの酸素同位体比と26Al/27Al初生値」
内容:
Fine-grained CAIは細粒の鉱物からなるCAIで、原始太陽系星雲内でガスから凝縮して出来たと考えられる。従って太陽系形成当時の環境を知るのに適した試料と考えられる。しかし、その鉱物学的な特徴から母天体の変成作用に弱く、形成当時の情報を得るのが難しい。
Acfer 094は炭素質隕石の中では最も始原的な隕石の一つで、原始太陽系星雲内で形成した微粒子の特徴を調べるのに適した試料である。そこで、Acfer 094のFine-Grained CAIに注目し、酸素同位体比と26Al/27Al初生値の相関を調べてみることにした。
今回は、これまでに得られたデータを紹介する。

参考:Ushikubo et al. (2011) LPI contribution No 1639, p9086
(Abstract of the Workshop on Formation of the First Solids in the Solar System)[Abstract](pdf, 349KB)




第10回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 山口保彦 (東大大気海洋研究所D3)
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 10月 4日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「アミノ酸窒素同位体組成を用いた生物地球化学」
内容:
アミノ酸は地球環境中の有機物の主要成分であり、生物・土壌・海洋沈降粒子・海洋表層堆積物などでは全有機物の数十%を占める。隕石など地球外物質からも、アミノ酸は数多く検出されている。アミノ酸の同位体組成(炭素、窒素、水素など)を分析することで、対象とするアミノ酸の起源や生成・分解プロセスなど、量や組成のデータだけでは分かりにくい情報が得られると期待できる。しかし、同位体組成分析の初の報告から50年近くが経ったが、実は地球化学分野ではあまり普及していない。一方で宇宙化学分野では隕石アミノ酸の異常な水素・窒素同位体組成の報告などの成果が挙がっているほか、ここ数年は生態学分野における応用(アミノ酸窒素同位体組成による動物食性解析)が急速に進んできた。
 本発表では、私の研究テーマである「アミノ酸窒素同位体組成を用いた生物地球化学」(微生物中の同位体分別ルールの制約など手法開発、海洋堆積物中の有機物動態解明への応用)および、アミノ酸同位体組成分析技術の現状や課題を紹介したい。





第11回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 杉浦 直治
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 10月 11日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「Did mesosiderites see the FU Orionis outbursts of the solar nebula?」
内容:
FU Orionis outburstsは T Tauri のmass accretion rate の大きな状態と考えられている。 したがって初期太陽系でもこのoutbursts が起きた可能性は高い。
隕石がこれを目撃するには、(1)早い時期に集積する、(2)太陽の近くで集積する、(3)母天体の表面近くに存在した、ことが必要である。
mesosiderites はこれらの条件を満たしており、outbursts を目撃した可能性は高いと思われる。




第12回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 山田 明憲
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 10月 18日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「太陽大気中のCO同位体比観測」
内容:
隕石中の酸素同位体比測定から, 鉱物ごとに測定された酸素同位体比異常(Δ17O)は -40‰ から 90‰ 隕石全岩測定では -5‰ から 3‰ を示すことが明らかとなっている。しかし、隕石の分析からは原始太陽系星雲の初期の酸素同位体比を測定することはできない。
 太陽系の質量の99%以上は太陽にあるので、太陽の酸素同位体比を測定できれば、太陽系初期の酸素同位体を知ることができる。太陽の酸素同位体比測定には、太陽風と赤外線分光が考えられる。太陽風の酸素同位体比はGenesisミッションによって測定された。しかし、太陽から太陽風への同位体分別は明らかになっていない。本研究は、太陽大気の赤外分光観測によって、CO分子の同位体比を誤差20‰程度で測定することを目指している。
 カナダの人工衛星 ACE が太陽光の赤外分光スペクトルをとっている。ノイズの低いデータが8年分の蓄積があるので、このデータを使わせていただき、太陽の同位体比の測定を試みている。その進捗状況を報告します。




第13回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 明星 邦弘
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 10月 18日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「消滅核種を用いたCO及びCVコンドライト隕石中のCAIの年代学、及び重元素安定同位体に関する研究」
内容:
 始原的隕石に見られるCalcium and Aluminum rich Inclusion (CAI)は難揮発性鉱物の包有物で、初期太陽系で最初に凝縮した物質である。これまで多くの同位体的研究が行われ、CAIの起源に関する議論が行われてきた。特に長寿命核種による絶対年代法と消滅核種による相対年代法の組み合わせは有用であり、CAI形成の時期と期間が明らかになった。相対年代法では親核種の同位体組成が初期太陽系において均質であったと仮定している。CAIの研究で最も頻繁に用いられる26Al-26Mg系と比べ、10Be-10B系は親核種(10Be)の初期太陽系における均質性が疑問視されている。10Bの均質性を確認し、Be-B系が年代測定法として適用できるのか確認するため、本研究では2つのCOコンドライト(Moss、Felix)と1つのCVコンドライト(NWA2364)に含まれるCAIの10Be-10B年代と26Al-26Mg年代を求め、比較した。COコンドライトはCVコンドライトと構成要素(CAI・コンドリュール)の存在度が類似しているが、CVに比べて各々が非常に小さい(<100μm)ため、SIMSによる分析はほとんど行われていない。この細粒なCAIを分析するため、1次イオンビーム径をサブミクロンまで絞り込める高空間分解能型二次イオン質量分析計NanoSIMS, 東大大気海洋研)を利用した。まず、Mossの10Be-10B相対年代はAllende CAIと誤差の範囲内で一致した。Felix及びNWA2364のCAIからは10Bの過剰を観察するのに十分なBe/B比を得ることができなかった。Al-Mg系ではMoss, Felix, NWA2364のAl-Mg相対年代はいずれもAllende CAIと誤差の範囲内で一致す結果が得られた。試料数は少ないが、この結果からは、10Be-10B系は初期太陽系において均質に分布していたことが示唆される。
 一方、CAIに対する年代的情報と重元素安定同位体情報を直接結び付ける試みとして、NanoSIMSで年代測定をしたmm-cmサイズのCAIをマイクロドリルで試料採取し、TIMSを用いてSr安定同位体比(84Sr/86Sr比)の測定を行った。この測定はCVコンドライト(NWA2364)に含まれる十分に大きいCAIに対して行った。その結果、Allende CAIはスタンダード(NIST987)に比べ84Sr/86Sr=+77±10ppmの異常が見られ、先行研究と一致したが、NWA2364のCAIには異常が見られなかった。これは、初期太陽系におけるSr同位体の不均質性を示唆するが、NWA2364の試料採取でマトリックスを巻き込んだ可能性があり、今後さらなる測定、実験手法の改善が必要である。




第14回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 鹿児島 渉悟
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 11月 1日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「中央海嶺における硫黄・ハロゲンのフラックスの推定」
内容:
反応性が高く様々な化合物として地球表層に存在する硫黄・ハロゲンは、地圏・生物圏において不可欠な役割を果たす元素でありそれらの物質循環に関する知見は地球科学的・産業的に重要であるが、十分な制約条件は与えられていない。その主な原因は、物質輸送の大部分を占める中央海嶺における上部マントルから海洋への硫黄・ハロゲンのフラックスが不明瞭なことである。中央海嶺からの揮発性元素のフラックスを推定するための最も素直で簡単な方法は、中央海嶺玄武岩(MORB)の急冷ガラスを破砕することで気泡に含まれている揮発性成分を気相に抽出し、目標の揮発性元素とヘリウム-3との濃度比を決定することである。ヘリウム-3の中央海嶺フラックスは既知である(527±102 mol/yr: Bianchi et al., 2010)ため、これと濃度比とを掛け合わせることで目標元素のフラックスを推定できる。しかしながら、硫黄・ハロゲンは反応性が高いためヘリウムとの同時抽出・精製が難しく、MORB全岩における元素濃度とMORB生成速度を基にフラックスの計算がなされてきた。この方法論で決定されるフラックスは上限値と考えられ、硫黄に関しては地球の継続的な脱ガス史を仮定した時に期待されるフラックスの2倍以上、フッ素に関しては40倍以上の大きさになることが指摘されており(Tajika, 1998)、過大評価であると考えられる。
 本研究ではMORBガラスを凍結したアルカリ溶液中で破砕することにより硫黄・ハロゲンを溶液中に、ヘリウムを気相に別々に抽出することで従来の破砕実験における問題点を解決し、ヘリウム-3で規格化した硫黄・ハロゲンのフラックスの推定を試みた。今年の9月末に大気海洋研究所に導入されたイオンクロマトグラフシステム:ICS-2100(Thermo Scientific Dionex)は高感度・高分解能によるppbレベルでの硫酸・ハロゲンイオンの定量が可能であり、フラックスの正確な推定が期待される。本発表では、現在の研究の進展状況についてお話しさせて頂く。




第15回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 小嶋 稔
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 11月 8日〔木)、17:30 to 19:00

セミナータイトル:
 「福島第一原子力発電所事故 ― 再臨界の可能性は? オクロ天然原子炉の教訓
(此の研究は羽場麻希子さんー地殻化学実験施設との共同研究です。詳しい内容は近く岩波:科学に掲載される予定―。) 」
内容:
原子力安全基盤機構が公開した福島第一原子力発電所事故の解析結果は、核分裂連鎖反応の臨界固有値は1号機から3号機の全てで1を超えており、臨界に達してもおかしくない状況であったことを示している。にもかかわらず、臨界暴走が起きなかった主な理由として、事故当初に淡水の代わりに注水された海水中の塩素―35が、中性子吸収材として予想もしなかった臨界抑制効果を発揮したことを指摘している。淡水注入が不可能になり苦肉の策として行った海水注入により再臨界と言う最悪の事態が回避出来たのは僥倖と言う以外に言いようが無い。
 オクロ天然原子炉は235Uが3%程度に濃縮されたウラン燃料が豊富な水と接していた場合、いくつかの条件を満たせば天然でも臨界に達する可能性があることを示している。福島第一原子力発電所の溶融燃料とオクロ天然原子炉の状況は、濃縮したウラン燃料が水に浸かっている点ではオクロ天然原子炉の稼働時とよく似ている。オクロ天然原子炉の研究は今後の再臨界を防ぐ対策で大きな教訓を与えてくれる。

目次
A. オクロ天然原子炉:概要
B. オクロでは何故臨界暴走が起きなかったか?
C. 提案: 福島原発事故 ー 今後の臨界モニターリング





第16回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 小池みずほ
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 11月 15日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「ALH84001のリン酸塩鉱物における、シングルグレインU-Pb年代測定および水素同位体比分析」
内容:
火星表層にかつて液体の水が存在していたことが、近年の探査および火星隕石の分析によって明らかにされてきた。しかし、火星の水がいつ・どのように失われたかは、まだ十分に理解されていない。現在の火星大気の水素同位体比は地球の約5倍重く(δD ~ 4000)、大部分の揮発性物質が散逸した証拠とされている。多くの火星隕石でも非常に重い水素同位体比が報告されており、マグマと表層物質のミキシングによって惑星大気の情報が岩石中に保存されたことを示唆している。様々な形成年代を持つ火星隕石の元素濃度・同位体組成を調べることで、火星の表層進化プロセスに関する知見が得られることが期待される。
 ALH84001は、他の火星隕石より著しく古い結晶化年代 ( 4.50±0.03 Ga; Nyquist et al., 1995, 4.091±0.030 Ga; Lapen et al., 2010)を示し、太古の火星の情報を持つ唯一の隕石として注目されている。様々な鉱物種・年代系・分析手法において、この隕石の年代を決定する研究が為されてきた。SIMSを用いたその場分析では、リン酸塩鉱物のU-Th-Pb年代が求められ、Ar-Ar衝撃変成年代に近いことが明らかにされた(4018±8 & 3971±860 Ma; Terada et al., 2003)。一方で、アパタイト[Ca5(PO4)3(F,Cl,OH)] やウィットロカイト[Ca9(Mg,Fe)(PO4)6PO3OH] などのリン酸塩鉱物は、REEや水(OH基)・ハロゲン(F, Cl)などの揮発性成分を濃集するキャリアとしても重要である。これらの微量元素濃度や同位体組成から、マグマの起源や表層環境の進化が議論できると考えられる。
 隕石の形成年代と揮発性元素の濃度・同位体組成は、惑星から水が失われていくプロセスを理解する上で共に重要な情報である。ALH84001の年代および同位体比は様々な手法で調べられているが、年代と水素同位体比を同一グレインで決定した研究は報告されていない。本研究の目的は、リン酸塩鉱物のシングルグレインに対してU-Pb年代測定と水素同位体比測定を行うことで、年代と同位体情報を直接的に結びつけ、火星の表層進化プロセスに制約を与えることである。
 高い空間分解能をもつNano SIMS (東大・大海研設置)を用いてビームの径を絞り、50-100μmサイズのグレインを5- 10点程度のスポットで分析することで、1つのグレイン内のU-Pb年代を高い精度で求め、さらに同一グレインの水素同位体比を調べた。また、水素同位体比分析のスタンダードに用いる天然のアパタイトについては、1300℃・酸素雰囲気下での加熱実験を行い、マノメトリックな手法で水素濃度を求めた。
 本発表では、現時点での研究の進度をご報告するとともに、現状の課題点をお話しし、皆様からのご意見・ご指摘を賜りたい。




第17回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 中井 俊一
place: Room 739 理学部1号館
time: 2012年 12月 6日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「U-Th 放射非平衡年代測定による海底熱水鉱床の硫化鉱物の年代測定
−異なる方法による年代不一致の原因−」
内容:
海底熱水鉱床は鉱物資源として,生命活動の起源の候補地として注目されている.熱水活動の持続時間は鉱床のスケールを決め,生物の遺伝子レベルでの多様性を支配すると考えられている.
 これまで熱水から沈殿した鉱物の年代測定には,ウラン238系列の放射非平衡が使われてきたが,短い半減期の核種を用いることが多く,鉱物年代は百年以下の若い年代を示すことが多かった.放射能比測定のかわりに同位体比測定を用いることにより,微量の放射性核種の定量が正確さを増すことが期待できるため,230Th-234Uの放射非平衡により年代測定を行った.
 南マリアナトラフで採取した熱水を放出している硫化物マウンド試料の年代測定を行った.試料は長いところで17cmくらいの大きさがあり,ブロックに分けて各部分の年代測定を行った.このクラストは210Pb-226Ra法で数十年の年代が報告されている.分析の結果,234Uの壊変で生成した230Thが検出され,数百年から三千年程度の年代を得た.また230Th-234U放射非平衡年代は連続的に分布し,クラストが連続的に成長したことを示唆する.熱水鉱物が連続的に成長し,沈殿時に娘核種を含まず,鉱物形成後に閉鎖系が保たれた場合を考える.連続成長した各部分が均質に混ぜられるとすると,全体の年代は230Th-234U系では,ほぼ全体の平均年代になるのに対し,210Pb-226Ra系は最後に成長した部分の影響で若い年代がでる.今回の試料に見られた壊変系により年代が大きく異なる結果は連続成長により生じたと考える.このほかESR年代測定との比較についても紹介する.




第18回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 福田 航平
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 12月 13日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「大きなMg同位体分別を示すヒボナイト包有物に関する研究」
内容:
ヒボナイトは星雲ガスからの初期凝縮物であると考えられており、太陽系進化過程における最初期の情報を保持している可能性がある。現在私たちは、マーチソン隕石からヒボナイトを分離・抽出し、SIMSを用いたAl-Mg, Ca,Tiなどの同位体測定を行っている。今回は先行研究をレビューしつつ、主にMg同位体分析の結果、〜50‰/amuに達する質量依存分別を示した2つのヒボナイト包有物に焦点を当てて発表したい。また、最近取り組みはじめたCa,Ti測定の現状についても紹介する。




第19回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 青柳 雄也
place: Room 936 理学部1号館
time: 2012年 12月 20日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「AlmahataSittaユレイライトのmetalについて」
内容:
ユレイライトはエコンドライトに属し、主にオリビンとパイロキシンからなる隕石である。それに加えて粒間を埋める炭素やFe-Niメタル、トロイライトなどを含む。メタルはユレイライト以外の還元的な隕石にも含まれることのある隕石の主要な構成物質のひとつであるが、研究例はあまり多くなく、ユレイライトメタルの研究例についても限られている。その先行研究では、AlmahataSittaユレイライトのあるサンプルのメタルに関してメタル内部が均質ではなく、鉄の高温で安定な相や鉄炭化物、鉄リン化物などが共存する組織が確認されている。そのような複雑な構造のメタルは先行研究で見つかっているサンプル一つでしか発見されていないが、今回、他のAlmahataSittaサンプルでも同様の構造が確認できた。今回は、そのようなメタルの構造の観察結果と、相の同定に用いた手法であるEBSDに関して発表させていただく。




第20回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 竹之内 惇志
place: Room 936 理学部1号館
time: 2013年 1月 17日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「火星隕石中黒色カンラン石の電子顕微鏡観察によるナノ粒子観察とその形成過程の解明」
内容:
火星隕石,特にシャーゴッタイトグループには黒〜茶色に着色したカンラン石がよく観察される.この着色したカンラン石は以前よりカンラン石の酸化によると考えられているだけで詳しく研究されていなかったが,近年カンラン石が真っ黒になったシャシナイトが発見された事により詳しく研究されるようになった.最近までに透過型電子顕微鏡による観察や磁化率・反射スペクトルの測定などが行われてきた.その結果この着色の原因はカンラン石中に晶出した鉄メタルやマグネタイトのナノ粒子であることが分かってきた.しかし,黒色化したカンラン石の研究例は決して多くはなく,その原因であるナノ粒子の形成過程や衝撃との関係等についてはあまり深く解明されずにいる.例えば,カンラン石中の鉄が鉄メタルになる場合は鉄の還元,マグネタイトになる場合は鉄の酸化であるが,実際どのような反応が起きているのか分かっていない.今回の研究では磁化率の測定から鉄粒子とマグネタイトが共存すると言われるNorthWestAfrica1950という隕石を観察してその形成過程や衝撃との関係の手がかりを探した.観察によるとこの隕石中のカンラン石にはナノ粒子以外にもサブミクロンサイズの鉄粒子が規則的に配列している構造が見られた.また鉄ナノ粒子の周りに殻状に別な鉱物が析出しているという構造も見られた.これらは先行研究では言及されておらず,この構造について詳細に調べることでナノ粒子の形成過程や衝撃との関係性について新たな知見が得られると考えられる.今回のセミナーではこれらの新しく見つかった構造について(まだ十分な議論考察が行えていないが)観察結果とこれからの展望を含めて発表させて頂く.




第21回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 鹿児島 渉悟
place: Room 936 理学部1号館
time: 2013年 1月 31日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「中央海嶺からの硫黄・フッ素・塩素のフラックスの推定」
内容:
硫黄・ハロゲンは多様な化合物を形成して地球表層環境に影響を与える揮発性元素であり、それらの物質循環に関する知見は重要である。しかしながら、固体地球内部から表層への物質輸送の大部分を占める中央海嶺フラックスに関する硫黄・ハロゲンの議論は不明瞭である。中央海嶺玄武岩の急冷ガラスは上部マントル由来のマグマの揮発性元素組成を保持すると考えられているため物質循環の議論によく用いられるが、その全岩組成から推定される硫黄やフッ素のフラックスは過大評価であることが指摘されている。そもそも中央海嶺から放出される揮発性成分を
(1) 減圧によりメルトから脱ガスして熱水として放出される成分
(2) メルトに含有されたまま表層に運搬される成分
の2つに分けて考えた場合、急冷ガラスの全岩組成からは後者に基づく議論しか出来ないという問題がある。そこで本研究では、熱水・メルトそれぞれの成分の中央海嶺フラックスに対する寄与を分けて考えるため、急冷ガラスの気泡部分の組成(熱水;減圧による脱ガス成分がトラップされたもの)と固体部分の組成(メルト)を別々に分析した。気泡部分については破砕実験で、固体部分についてはSIMS分析でその組成を決定した。また、破砕実験では気泡中の硫黄・ハロゲンと共にヘリウム−3の濃度を測定し、硫黄・ハロゲンのヘリウム−3に対する濃度比と既知のヘリウム−3のフラックスを基にして議論をすることにした。濃度比を利用することでガラス中の気泡体積分率の違いに起因する揮発性元素濃度の多様性を無視できるため、簡単に硫黄・ハロゲンのフラックスを推定することが出来る。分析の結果、気泡組成における硫黄・フッ素・塩素のヘリウム−3に対する濃度比は固体組成の濃度比よりも2-3桁低いことが分かった。気泡組成を基にした硫黄・フッ素のフラックスの推定値は従来考えられていた値に対してそれぞれ1/10倍, 1/1000倍程度の大きさを持つ下限値として与えられる。もしも中央海嶺フラックスに対して熱水が支配的であるならば硫黄・ハロゲンの物質循環・脱ガス史に関して新たな制約条件が与えられるかもしれない。




第23回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: Dr. Kaley A. Walker
 (Department of Physics, University of Toronto, CANADA)
place: Room 936 理学部1号館 (Room 936, 9th floor of Science building No.1)
time: 2013年 2月 28日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「Spectroscopy from Space: Using the Atmospheric Chemistry Experiment to Study Atmospheric Composition from a Low-Earth Orbit」
内容:
 My research takes laboratory spectroscopy to extremes - we use spectrometers located on satellites and high altitude balloons and in remote observatories to study the Earth's atmosphere. By measuring high-resolution absorption spectra (using the Sun as the radiation source), we can estimate the chemical composition of the atmosphere. This remote sensing technique allows us to determine the concentrations and altitude distribution of a wide range of trace gases.
 This talk will introduce the spectroscopic remote sensing technique and the considerations needed to make measurements of the Earth's atmosphere. Then, I will use the example of the Canadian Atmospheric Chemistry Experiment (ACE) mission on the SCISAT satellite to illustrate how we can use spectroscopy to study atmospheric composition. I will focus on the infrared Fourier Transform Spectrometer (ACE-FTS), the main instrument on board SCISAT/ACE. Specific results to be discussed include measurements of minor isotopologues of ozone and comparisons with the JEM-SMILES and SMR instruments and the solar spectrum measured by ACE-FTS.




第24回宇宙地球同位体科学セミナー(2012年度)

speaker: 比屋根 肇
place: Room 936 理学部1号館 (Room 936, 9th floor of Science building No.1)
time: 2013年 3月 7日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「NWA801(CR2)コンドライト中に見つかった火成岩的クラストの起源について」
内容:
NWA801(CR2)コンドライト中に見つかった火成岩的なクラスト(Sugiura etal., 2008)には、olivine のほか、Na-Al-rich な pyroxene (omphacite) やgarnet が含まれ、その生成条件は、約1000度C、3-4GPaと見積もられた (Kimuraet al., 2013, Amer. Mineral. 98, 387-393)。このような高温・高圧の原因としては、大きな微惑星内部の静水圧か、あるいは微惑星どうしの衝突における衝撃圧が考えられる。静水圧で 説明するには、半径1500kmの巨大な微惑星を考えなくてはならない。一方、衝撃圧の場合には、高温・高圧条件の継続時間が短い(最大10秒程 度)ため、元素の移動を伴う高圧相の生成が可能かどうか、検討を要する。本セミナーでは、あらたに得られた希土類元素分析、酸素同位体分析の結果 と、拡散データなどを用いて、この火成岩的クラストの起源について議論する。



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