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第1回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 比屋根 肇(地球惑星科学専攻 准教授)
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 4月 14日〔木)、5:00 to 7:00 pm

セミナータイトル:
 「初期太陽系における同位体異常」
内容:
隕石中にはさまざまな同位体異常が存在する。プレソーラー粒子ほどではないが、太陽系内で生成された粒子・鉱物についても、さまざまな程度に同位体異常が残されている。とりわけFUNと呼ばれる一部のCAIや、CMコンドライトに含まれるヒボナイト粒子の一部には、かなり大きな同位体異常を示すものがある。それらは太陽系の同位体組成が均一化するプロセスについて理解する手掛かりを与えてくれる。今回は、現在進めつつあるMurchison隕石(CM)中のヒボナイト粒子の同位体的・年代学的研究との関連で、初期太陽系における同位体異常についてレビューをしてみたい。




第2回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 佐野 有司
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 4月 28日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「Global flux of volatile elements and evolution of atmosphere」
内容:
固体地球から放出される揮発性成分元素(ヘリウム、アルゴン、炭素、窒素)のフラックスについて検討し、大気の起源・脱ガスモデルについて言及する。各元素の同位体組成について議論し、マントルや地殻など起源による違いをまとめる。古い堆積岩にトラップされた過去の大気中の窒素の同位体組成についてデータをまとめ、大気の進化について議論する。最後に背弧海盆の拡大軸の海洋底で、最近我々が行っているヘリウム・フッラクスの観測について述べる。




第3回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 山田 明憲
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 4月 28日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「太陽大気中のCO同位体比観測の進捗状況」
内容:
隕石の酸素同位体比測定から、Δ17O が-40‰ から +100‰ まで幅広い非質量依存同位体分別が報告されている。そのため、太陽系初期のイベントを知るためには平均的な太陽系の酸素同位体比が大問題となる。太陽系の質量の99パーセント以上は太陽にあるので、太陽の酸素同位体比を測ろうと試みている。太陽大気には温度が最小となる領域にCO 分子が存在することは知られている。これをACE (Atmospheric Chemistry Experiment) のデータを用いて、太陽の酸素同位体比を求める。誤差を2%程度に同位体比を決定することを目標としている。本発表では太陽のCO分光観測の途中経過を紹介する。




第4回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 賞雅朝子(地震研究所)
place: Room839 理学部1号館
time: 2011年 6月 2日〔木)、15:00 to 17:00

セミナータイトル:
 「海底熱水鉱床における硫化鉱物のウラン・トリウム放射非平衡年代測定」
内容:
「海洋下の大河」プロジェクトでは海底熱水活動の形成史やその周辺に生息する生物の発生や進化の解明のために、熱水活動の年代測定を行っている。海底熱水活動のタイムスケールは、鉱床の資源量、その周辺に発達する化学合成生物群集の種、遺伝子レベルでの分化などの「岩石-熱水-生命」の相互作用を議論する上で重要な要素となっている。
 海底熱水鉱床における年代測定にはいくつかの方法が試みられているが、熱水活動の変遷は数週間から数万年と年代幅があるため、複数の年代測定法を組み合わせることが必要である。一方で、230Thと234Uの間の放射非平衡年代測定法は200年〜40万年の年代測定が可能で、熱水活動の年代測定には有用である。ウラン・トリウム放射非平衡年代測定は、大西洋中央海嶺のTAG地域で応用されており、2000〜15000年前から、間歇的な熱水活動が続いていることが報告されている(You and Bickle,1998)。
 本研究ではプラズマイオン源質量分析計を用いて、1000年より若い活動が予想される沖縄トラフと南部マリアナトラフの海底熱水活動域の熱水噴出孔から採取した閃亜鉛鉱と黄鉄鉱を主とする硫化鉱物のウラン・トリウム放射非平衡年代を測定する方法を検討した。  沖縄トラフは伊是名海穴の試料で、酸分解により不溶の重晶石を分離した硫化鉱物を分析した。南部マリアナトラフは、岡山理科大学のアイソダイナミックセパレーターを用いて分離した硫化鉱物を分析した。重晶石(BaSO4)中のBaは、プラズマイオン源質量分析計によるウラン・トリウムの同位体分析時に妨害元素となり、精度の良い年代測定にはBaの分離が必要となる。鉱物分離により重晶石を除去し、さらに試料溶液をカラムクロマトグラフィーで分離し、ウラン・トリウムを精製した。
 伊是名海穴の試料の一部からは1000年よりも若い年代が得られた。しかしU/Th比が低く、精度の良い年代測定には、年代測定の前提条件となるTh/Uの初生比の検討が必要であることがわかった。マリアナトラフの試料では、高いU/Th 比を持つデータが得られた。特に電磁分離試料は、ウラン濃度が相対的に高くなり、U/Th 比も高かった。電磁分離による試料の8 点からは、740〜1800 年前からマリアナトラフのチムニーが活動をしていることが示唆された。また同試料は岡山理科大学でESR年代測定を行っており、その結果とも調和的であった。
 セミナーでは年代測定の開発や測定結果について議論していく。




第5回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 三河内 岳(宇宙惑星科学講座 准教授)
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 6月 9日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「ナクライト火星隕石の鉱物学と起源岩体の層状構造」
内容:
ナクライト火星隕石はこれまでに8個が見つかっており、鉱物学的特徴および 結晶化・宇宙線照射年代が各試料でよく似ていることから同じ岩体を起源とし ていると考えられている。ナクライトはオージャイトを主要構成鉱物とし、少 量のカンラン石と石基から成る集積岩であるが、詳細に個々の試料を比較する と、試料ごとに鉱物学的特徴や鉱物組成に差が見られる。これらの差は、起源 岩体が冷却する過程でオージャイト・カンラン石が集積し、形成された深度の 違いによって生じたと考えるとうまく説明ができる。本発表では、ナクライト の鉱物学的研究により推測されたナクライト起源岩体の構造を紹介し、また、 この岩体が火星のどの場所に存在していたかを火星探査のデータを用いて議論 する。




第6回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 藤谷 渉(宇宙惑星科学講座 D3)
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 6月 16日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「CI, CMコンドライト母天体の集積年代とその内部における物質進化過程」
内容:
炭素質コンドライトの多くは様々な程度に水質変成の痕跡を示す。本研究では特に水質変成の激しいCI, CMコンドライトに関して、母天体の集積とその内部における物質進化の過程を解明するため、(i)炭酸塩のMn-Cr年代測定、(ii)炭酸塩の炭素同位 体分析、に取り組んでいる。発表ではまず炭酸塩の年代データを示し、そこから制約される母天体の集積時期と熱史について述べる。次に、炭酸塩の炭 素同位体からわかることおよび分析の進捗状況について述べる。




第7回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 山崎 絵里香(東工大地惑 D3)
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 6月 23日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「スズ同位体分析法開発とその地球化学・考古学的応用」
内容:
スズ(Sn)は古代より人類が使用してきた金属の一つであり、天然では主にカシテライト(cassiterite, SnO2)として産出する。地球化学においてはやや親鉄性元素に分類され、全元素中最多となる10の安定同位体を持つが、鉱石であるカシテライトの同位体分析の例はまだ少ない(McNaughton and Rosman, 1991; Clayton et al., 2002; Haustein et al., 2010)。 これは、カシテライトの分解やスズの回収の難しさ等が理由として挙げられる。
 本研究ではこのような前処理法を含めた同位体分析手法の開発を行い、日本のカシテライトについて分析を行った。その結果、先行研究(Haustein et al., 2010)で示されたように、日本のカシテライトについてもわずかながら有意な同位体組成変動が観測された。また、考古学分野においてスズ同位体は青銅器のリサイクルを検出できる可能性が示唆されている(Budd et al., 1995)。今回は青銅器試料の分析結果も紹介し、リサイクルトレーサーとしての可能性について言及する。




第8回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 小嶋 稔
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 6月 30日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「初期太陽系星雲の進化と太陽系元素(酸素、希ガス)同位体比」
内容:
1. 地球の酸素同位体比は太陽と異なるか?
2. 希ガスからの結論




第9回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 佐竹 渉
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 7月 7日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「放射光マイクロXANESによるユークライト中の鉄の酸化状態」
内容:
小惑星ベスタは直径が約500 kmあるため、その大きさから分化を経験していると考えられており、最近では水の存在も示唆されている。その重要性から2011年夏からNASAのDawn探査機が詳細な調査を行う予定であるなど、地球型惑星の進化過程を理解する上で重要な天体である。小惑星ベスタ起源とされる隕石グループの一つユークライトは、ベスタの地殻に相当すると考えられ、少なくとも10 kmの厚さがあると見積もられている。ユークライトは非常に還元的な環境で形成されたと考えられているが、本研究では、鉱物学的特徴の異なるユークライトに含まれる斜長石中の鉄の酸化状態を調べ、ベスタの内部に酸化的な部分が存在した可能性がないか考察を行っている。
今回のセミナーでは現段階での分析の結果と考察について紹介する。




第10回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 杉浦 直治
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 7月 14日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「mixing in and evolution of the solar nebula」
内容:
隕石中の54Crの異常を母天体形成領域の時間変化と考える。54Crのデータと母天体形成時期のデータを整理する。advective diffusionのsumulationを行って、その意味を考える。Larsen et al.(2011、Ap.J.)の様に、26Alの分布が一様でない場合、どのような修正が必要かも議論する。




第11回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 佐々木 翔吾
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 7月 21日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「CMコンドライト中のCAIに対するAl-Mg系を用いたデータ解析」
内容:
CMコンドライト 中にふくまれるヒボナイト粒子にはとりわけ大きなMg同位体異常を示すものがある。その同位体異常は母天体形成の過程を知る手掛かりとなる。その中でも、FUN包有物と呼ば れるものは、非常に大きな同位体異常を持っているものである。そのFUN包有物は、発見例が非常に少なく、今までは偶然に見つかるような産物であった。本研究で見つかったFUN包有物候補には、構造に共通点が見られた。本発表では、現在行っているMurchison隕石(CM)に含まれる、今回研究対象としたヒボナイトの形態学的特徴と解析結果についての考察、およびFUN包有物に対す る新たな可能性を発表する。




第12回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 太田 祥宏
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 7月 28日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「Shergottites隕石で見られる2つの年代の謎とデータ解析の現状」
内容:
火星隕石の1つのグループであるShergottites隕石はおよそ2億年程度の若い年代を持つとこれまで言われてきたが、40〜43億年という古い年代を持っていると主張するグループも存在している。現時点でリン酸塩やジルコニウム鉱物を用いた局所分析による古い年代の報告はほとんどなく、この年代に関する議論が続いている。本発表ではShergottites隕石の年代に関する議論を紹介しつつ、大気海洋研究所のNanoSIMSを用いた主にZagami隕石中のリン酸塩鉱物のU-Pb,Pb-Pb年代の結果と考察について発表する。




第13回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 鹿児島 渉悟
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 10月 6日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「中央海嶺からの硫黄、フッ素、臭素のフラックスの見積もり」
内容:
地球表層に存在する揮発性元素は火山活動などによる固体地球内部からの長期間に及ぶ脱ガスによって蓄積したことが分かっている。また、地球史を通じた脱ガスの様式については主として希ガスの同位体をトレーサーとして研究がなされてきており、地球初期にカタストロフィックな脱ガスがあったものと考えられている。本発表では、代表的な揮発性元素である硫黄とハロゲンのマントルフラックスと、それらが地球大気の進化モデルに与える制約について議論する。




第14回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 比屋根 肇
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 10月 13日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「質量依存同位体分別について」
内容:
マーチソン隕石(CM2)から分離したヒボナイト包有物の中には、Mg に50 パーミル/amu に達する非常に大きな質量依存同位体分別 (Mass-dependent isotopic frationation: MDF) を示すものが見つかった。これらヒボナイト包有物の初生 26Al/27Al 比を求める際には、MDF を正確に補正しやる必要がある。実は、MDF は、そのメカニズムや関与する分子種により、微妙に「質量依存性」に違いがある。今回は、MDF について書かれたいくつかの論文を紹介しつつ、あらためてMDFについて考えてみたい。




第15回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 藤谷 渉
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 10月 20日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「含水小惑星の水質変成」
内容:
隕石中の炭酸塩の53Mn-53Cr年代測定から、小惑星の水質変成のタイムスケールを考察する。また炭酸塩の炭素同位体比を用いて、小惑星内での有機物の変成について議論する。




第16回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 何人か
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 10月 27日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「アブストラクトの紹介」
内容:
今回は、11月7-9日にハワイで開かれる Workshop on Formation of the First Solids in the Solar System ( http://www.lpi.usra.edu/meetings/solids2011/ ) のアブストラクトの中から興味のあるもの選んで、一人10-15分程度で紹介することにします。




第17回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 佐々木 翔吾
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 11月 10日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「Hibonite-bearing inclusions from Murchison (CM2) meteorite: A Mg isotopic study using a NanoSIMS」
内容:
CMコンドライト中に含まれるヒボナイト粒子には非常に大きなMg同位体異常を示すものがある。その同位体異常は母天体形成の過程を知る手掛かりとなる。
その中でも、FUN包有物と呼ばれるものは、非常に大きな同位体異常を持っているものである。そのFUN包有物は、発見例が非常に少なく、今までは偶然に見つかるような産物であった。本研究で見つかったFUN包有物候補には、構造に共通点が見られた。





第18回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 中井 俊一
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 11月 24日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「リチウム同位体の地球化学」
内容:
リチウムは6と7の同位体がある.地球表層での岩石と水の相互作用により,同位体比は大きく変動し,水側に重い7Liが選択的に濃集する.海洋底堆積物,熱水変質を受けた海洋地殻などは重いリチウムを持つ.地球表層で重い同位体を持つリチウムが濃縮した物質がマントルへ沈み込んだ後に,沈み込み物質がリサイクルした海洋島玄武岩などに重い同位体比を持つリチウムが確認されるか種々の試料が分析されたが,海洋島玄武岩のリチウム同位体比は予想以上に均質であった.
 沈み込んだ海洋地殻や堆積物がマントル内に滞留するあいだにリチウムの拡散が起り,元の物質の同位体比が保存されないことが主な原因のようである.




第19回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 小嶋 稔
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 12月 1日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「太陽の酸素同位体比」
内容:
GENESIS-MissionのSWデータから太陽の酸素同位体比を結論するには、
   1. 実験装置/SW―間の同位体分別
   2. SW/太陽―間の同位体比分別
に対する補正が不可欠である。前者については同じGENESIS-Missionで得られた希ガスデータに基いた基礎実験から極めて説得力のある同位体比分別補正がなされた。アポロ月試料の結果とも整合的で、SWの希ガス同位体比(平均値)は略確立された、と見る事が出来よう(1)。しかし2については Heber et al., 自らが述べているように (1)、循環論法的な推測を試みたに過ぎない。我々は新しい見地からこの問題の定量的推定を行い、SW/太陽―間の同位体比分別はMcKeegan et al. (2)が推測した価のほぼ倍近くとなる事を示した。さらに、この結果は、SW/太陽 間の同位体比分別補正後のGENESIS SW-酸素同位体比は、CAIの酸素同位体比の価と大きく異なり、地球酸素に略近い価となる。 したがって太陽の酸素同位体比はCAIの酸素同位体比と等しい、とするClayton (3)の主張とは相反する。
1. Heber et al., MPS 46, 493, 2011.
2. McKeegan K.D. et al., Science, 332, 1528, 2011
3. Clayton R.N., Nature, 515, 860, 2002.




第20回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 太田 祥宏
place: Room739 理学部1号館
time: 2011年 12月 1日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「Shergottite中のリン酸塩の水の挙動と元素濃度」
内容:
火星隕石の水素同位体比の研究は数多く行われており、特に粒の中で同位体比が異なることが知られている(Greenwood et al. 2008)。またpyroxeneにおいて粒のcoreとrimの元素濃度を見ると熱水によって変成を受けたのではないかという報告もある(HY McSween Jr et al.)。今回NanoSIMSを用いてShergottiteに含まれるリン酸塩の水素同位体比、水の濃度、Mgの濃度を測定したところ、相互に相関が見られた。
 セミナーでは粒の中での同位体や濃度の変動に関する先行研究のレビューをしつつ、取得したデータからリン酸塩がどのような影響を受けたのかということについて議論したい。




第21回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 佐々木 翔吾
place: Room739 理学部1号館
time: 2012年 1月 12日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「二次イオン質量分析計を用いたマーチソン隕石中のヒボナイト包有物のAl-Mg同位体に関する研究」
内容:
CMコンドライト中に含まれるヒボナイト粒子には非常に大きなMg同位体異常を示すものがある。その同位体異常は母天体形成の過程を知る手掛かりとなる。
ヒボナイト粒子にはそのMg同位体異常が見られる粒子・見られない粒子があるという前回の発表を踏まえつつ、本発表では追加的な実験の加え、新たに考察する。




第22回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 藤谷 渉
place: Room739 理学部1号館
time: 2012年 1月 19日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「水質変成のfluid-chemistry」
内容:
炭素質コンドライトは様々な程度に水による変成を受けている。今回のセミナーでは、水溶液および気相のケミストリーを考察し、各種ガスやイオンのfugacityやactivityについて言及する。また、それをもとに、隕石中のカルサイトの形成条件を議論する。



第23回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 山田 明憲
place: Room739 理学部1号館
time: 2012年 1月 26日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「太陽大気中のCO同位体比観測の進捗状況報告」
内容:
隕石の酸素同位体比測定から、Δ17O が-40‰ から +100‰ まで幅広い非質量依存同位体分別が報告されている。そのため、太陽系初期のイベントを知るためには平均的な太陽系の酸素同位体比が重要となる。太陽系の質量の99パーセント以上は太陽にあるので、太陽の酸素同位体比の測定を試みている。太陽大気には温度が最小となる領域にCO 分子が存在することは知られている。これの濃度を人工衛星ACE (Atmospheric Chemistry Experiment) のデータを用いて測定し、太陽の酸素同位体比を求める。誤差を2%程度に同位体比を決定することを目標としている。
 本発表では太陽のCO分光観測についての現状を報告し、2-3月のトロント大学訪問でやりたいことを説明する。




第24回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 飯塚 毅(固体地球科学講座)
place: Room739→843→710に移動 理学部1号館
time: 2012年 2月 16日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「ウランー鉛年代既知エイコンドライトのニオブ―ジルコニウム同位体学」
内容:
92Nbは半減期360Myrで92Zrに壊変する消滅核種である.NbとZrはマントルの部分溶融の際に分別するために,Nb-Zr同位体系は惑星マントルの初期分化に制約を与えうる.この同位体系を適用するためには太陽系初期の92Nbの量(92Nb/93Nb),及び均質性についての理解が必要であるが,これまでに報告されている92Nb/93Nbの値は,10-5〜10-3と大きくばらついており,未だに議論が続いている.この理由の一つとして,これまでの多くの先行研究が,隕石中の極端に高い若しくは低いNb/Zrをもつ相のZr同位体組成から太陽系初期の92Nb/93Nbを予測していたことが挙げられる.そこで,本研究では,既にU-Pb絶対年代が調べられているエイコンドライトから,様々なNb/Zrをもつ鉱物を同定し,それらのNb-Zr同位体組成から隕石試料それぞれについてアイソクロン年代を決定することにより,太陽系初期の92Nb/93Nbを予測しようと試みている.この発表では,これまでに得られた先駆的結果を報告したい.



第25回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 松田伸太郎(地殻化学実験施設 D3)
place: Room739→839 理学部1号館
time: 2012年 2月 23日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「Moorabie(L3.5-3.8)に含まれる黒色包有物の、レーザー希ガス同位体分析と母天体集積過程の解明」
内容:
普通コンドライトMoorabie中にはpyroxeneの細粒を主とする黒色包有物が含まれている。
 化学組成や鉱物学的特徴が母岩であるMoorabieのマトリックスと異なり、保持されている始原的希ガス成分も異なるものであった。今回のセミナーでは、レーザー抽出法による希ガス同位体分析の利点や特徴を紹介した後、黒色包有物中とマトリックス中の希ガス成分を比較し、そこから考察されるMoorabie母天体の集積過程における黒色包有物の混入時期などを議論する。




第27回宇宙地球同位体科学セミナー(2011年度)

speaker: 牛久保 孝行(University of Wisconsin-Madison)
place: Room851 理学部1号館
time: 2012年 3月 8日〔木)、17:00 to 19:00

セミナータイトル:
 「コンドリュールの酸素同位体比の特徴」
内容:
StardustのCometary Chondruleの酸素同位体比分析結果を踏まえ、それらの起源を理解するためには隕石のChondruleの酸素同位体比を詳しく理解する必要性を痛感しました。そこで、Chondruleの網羅的な酸素同位体比研究を提案し、ウィスコンシン大学の隕石研究のメンバー全員で協力して研究を進めています。
今回の発表では、主に炭素質コンドライトのChondruleの酸素同位体比にみられた特徴について、概要をお話したいと思います。




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