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第11回宇宙地球同位体科学セミナー(2009年度)

speaker: 高田未緒 (海洋研究所 先端海洋システム研究センター/M2)
place: Room851 理学部1号館
time: 2009年 10月 8日〔木)、5:00 to 7:00 pm

セミナータイトル:
 「NanoSIMSを用いた炭素質コンドライトのAl-Mg年代測定」
内容:
 コンドライト中のCa-Al-rich inclusion (CAI)や、コンドリュールの形成年代差 を議論するために、消滅核種である26Al(半減期72万年)を用いた年代測定は非常 に有効である。本研究では、二次元高分解能二次イオン質量分析計(NanoSIMS)を 用いたAl-Mg年代測定法を確立し、CVコンドライトのコンドリュールに適用した。 セミナーでは、確立した分析手法の詳細と得られた結果について発表する。




第12回宇宙地球同位体科学セミナー(2009年度)

speaker: 賞雅朝子 (地震研 中井研究室 D3)
place: Room851 理学部1号館
time: 2009年 10月 15日〔木)、5:00 to 7:00 pm

セミナータイトル:
 「Tungsten isotope composition of terrestrial rocks: its constraints on core-mantle interaction and the accretion of the Earth.」
内容:
 消滅核種の182Hf-182W系列は、親核種Hfが親石性で娘核種Wが親鉄性であるこ とから、惑星のコア形成時期などの決定(Yin et al.2000など)や、マントルと コアの相互作用の検証について利用される(Schersten et al. 2004)。 地球のコア形成時期については、Two stage modelでは最後のコア形成が太陽 系形成から3000万年後であるとされている(Yin et al.2002など)。一方で、地 球集積時にコアとマントル(Hf-W系列)が完全に平衡に達したかどうかについて 議論がされており(Kleine et al. 2004など)、マントル内のW同位体比の不均 質を作る一因となり得る可能性がある。W同位体比の不均質性を作り出すもう一つの要因はコア-マントル 相互作用である。Collerson et al.(2002)によって南アフリカのキンバライト試 料のW同位体比からコア物質の寄与を示唆する同位体比の異常が検出された。し かしSchersten et al.(2004)によるキンバライトとハワイの試料のW同位体比 測定の結果からはW同位体比の異常は検出されていない。

 本研究では、地球マントル岩石中のW同位体比を多数かつ化学的端成分ごとに 系統的に測定した。さらにマントル鉱物(フォルステライト-エンスタタイト) 多結晶体中のWの拡散実験を行い、マントル内のWの挙動についても観察を行っ た。そして地球マントル中のW同位体比の不均質を作り出す 1) 地球集積時のマントルとコアの混合についてと 2)コア-マントル相互作用について検証した。 W同位体比の測定はMC-ICP-MS(Isoprobe(地震研設置)、Neptune(高知コア センター設置)を用いて、高精度の同位体比測定を行ったが、測定誤差を超えた 不均質性は観察できなかった。Wの拡散係数はSIMS(物質・材料研究機構設置)を 用いて測定を行った。W(+6価)では、非常に早い拡散係数が得られた。

 W同位体比とWの拡散係数の結果を併せて、コア-マントル相互作用について以 下の二点の可能性が提案できる。(a) コア物質はあるが、現在のW同位体分析の 精度で検出できるほどコア物質がマントル多結晶体中には固溶しない(コア物質 は<0.6%)、(b) プルーム上昇の開始領域までにコア物質が拡散しない(コア- マントル境界から30~40kmより上でプルームが発生)。地球集積時のコアと マントルの平衡については、W同位体比の測定誤差内での 非平衡があったという可能性が否定できないと考えられる。





第13回宇宙地球同位体科学セミナー(2009年度)

speaker: 山田明憲(地球惑星科学専攻 M2)
place: Room851 理学部1号館
time: 2009年 10月 22日〔木)、5:00 to 7:00 pm

セミナータイトル:
 「NanoSIMSを用いた炭素質コンドライトのAl-Mg年代測定」
内容:
 太陽系内の酸素同位体比についてのレビューをします。
 隕石の酸素同位体比測定から、Δ17O が-40‰ から +100‰ まで様々な非質量依存同位体分別が報告されている。それらの成因としてCOセルフシールディングが提案されている。また、近年はCOセルフシールディングでは同位体比異常を説明できないと結論しているものや同位体比異常をつくる他の方法も提案されている。これらを紹介し、時間があれば最近の自分の計算結果についても発表します。




第14回宇宙地球同位体科学セミナー(2009年度)

speaker: 小嶋稔(地球惑星科学専攻 名誉教授)
place: Room851 理学部1号館
time: 2009年 10月 29日〔木)、5:00 to 7:00 pm

セミナータイトル:
 「Possible origin of the CAI oxygen isotopic anomaly」
内容:
 Since the first discovery of the mass-independently fractionated oxygenin anhydrous, high temperature Ca-Al rich inclusion minerals in carbonaceous meteorites (CAIs) by Clayton et al. (Science,1973), their common occurrence in primitive meteorites has been regarded to reflect a fundamental process prevalent in the early solar nebula. Currently the most influential hypothesis to explain this extraordinary oxygen isotope is to appeal to the self-shielding absorption of UV radiation in CO also proposed by Clayton (Nature, 2000). However, this self-shielding scenario necessarily leads to an unusual prediction that a mean solar oxygen isotopic composition differs from most of planetary bodies including Earth, Moon, Mars, and meteorite parent bodies, but is close to the typical CAI.
 Here, we first elucidate the key characteristics of CAIs taking account of recent two outstanding observations, one by Young and Russell (Science, 1998) and another by Sakamoto et al. (Science, 2007) and Kobayashi et al.(Geochem. J., 2003), secondly we show that the self-shielding process cannot explain the central issue of the CAI oxygen isotopic anomaly, that is, the slope-one mass independent isotope fractionation, thirdly from the three oxygen isotope d17O - d18O systematics we elucidate the key process responsible to the slope-one characteristic, and finally we propose an alternative to the self-shielding scenario on the basis of the surface adsorption of oxygen of a CAI grain proposed by Marcus (J.Chem. Phys.,2004). We conclude that the CAI oxygen isotopic anomaly is primarily attributable to the chemical reaction of a CAI grain in a local scale, and not necessarily reflects the mean oxygen isotopic composition of the solar nebula.




第15回宇宙地球同位体科学セミナー(2009年度)

speaker: 藤谷渉(地球惑星科学専攻 D1)
place: Room851 理学部1号館
time: 2009年 11月 12日〔木)、5:00 to 7:00 pm

セミナータイトル:
 「隕石中の炭酸塩のMn-Cr年代...微惑星集積時期の推定を目指して」
内容:
水質変成を受けた炭素質コンドライトには、カルサイトなどの炭酸塩が普遍的に 存在する。そのうち微量元素としてMnに富むものは、Mn-Crの年代測定が適用で き、その形成年代や、母天体における変成の継続時間等を議論できる。 また、一方で炭酸塩の炭素、酸素の同位体比や微量元素の存在量から、その炭酸 塩が形成した環境、とりわけ温度に関する情報が得られる。 これらのデータを組み合わせれば、母天体のサーマルヒストリーに制約を加える ことができ、さらにはその集積時期にも示唆を与えることができると考えられる。 セミナーでは、二次イオン質量分析計NanoSIMSを用いた隕石および標準試料の分 析手法と、分析した隕石(ALH83100, Murchison)の年代データやその解釈を発 表する。




第16回宇宙地球同位体科学セミナー(2009年度)

speaker: 山田明憲(地球惑星科学専攻 M2)
place: Room851 理学部1号館
time: 2009年 11月 19日〔木)、5:00 to 7:00 pm

セミナータイトル:
 「酸素分子の光解離における同位体効果」
内容:
 アポロサンプルと月隕石の分析から、地球と月の酸素同位体比はほぼ完全に一致することが明らかになっている。しかし、月の表層にある金属粒子の表面から数百ナノメートルのところに埋め込まれた酸素は、 Δ17O が+26‰ [Ireland et al., 2006] と -33‰ [Hashizume & Chaussidon, 2009] という大きな正の同位体比異常を示すと報告された。Ozima ら [2008] は、この同位体比異常は酸素が地 球の上層大気(高度300 kmから400 km)から月まで運ばれて、月の表層に埋め込まれたことによるという仮説を発表した。この仮説を同位体比の面から検証したい。本研究では、地球上層大気中での紫外線によるO2光解離に注目し、地球から流出している酸素イオンの同位体比を求めることを目指している。
 今回の発表の前半では第一原理計算によってクロスセクションを求める手法を詳しく説明することを目指し、後半は最近の計算結果を紹介します。




第17回宇宙地球同位体科学セミナー(2009年度)

speaker: 吉田 敬 (天文学専攻 研究員)
place: Room851 理学部1号館
time: 2009年 11月 26日〔木)、5:00 to 7:00 pm

セミナータイトル:
 「星の進化における元素合成とプレソーラーグレインの同位体比」
内容:
この発表では星の進化過程における元素合成,特に中小質量星の最終進化段階であるAGB星と大質量星の最期である超新星における元素合成について発表する.そして,これらの星から放出された物質の同位体組成の特徴をプレソーラーグレインの同位体組成と比較しながら示す.




第18回宇宙地球同位体科学セミナー(2009年度)

speaker: 山崎 絵里香(東工大 地球惑星科学専攻 D1)
place: Room851 理学部1号館
time: 2009年 12月 10日〔木)、5:00 to 7:00 pm

セミナータイトル:
 「スズ同位体分析法開発とその考古学・地球化学的応用」
内容:
 青銅器は銅(Cu)・スズ(Sn)・鉛(Pb)の合金によって作られ、鉄器が普及す る以前にもっとも広く使用されていた金属器である。青銅器はリサイクルが行われていたことが知られており、リサイクルの検証法と してSn同位体の利用が提案されている。これは、Snが揮発性元素であり、青銅器を作る過程での蒸発によって同位体分別 を受けると予想されるためである。しかしながら、Sn同位体分別によってリサイクルの検証を行うには、原料となるスズ石(SnO2) がもつSn同位体組成が地域によらず均一であるという前提が必要になる。現状では、報告されているスズ石の同位体データが少ないため、本研究ではまずスズ石に含まれるSn同位体データを蓄積し、その後、青銅器製作過程の同位体分別検証を行う予定である。
 今回の発表では先行研究のレビューを行い、地球化学分野への応用可能性についても触れる。




第19回宇宙地球同位体科学セミナー(2009年度)

speaker: 山田 明憲(東大院理・地球惑星科学専攻 M2)
place: Room851 理学部1号館
time: 2010年 1月 7日〔木)、5:00 to 7:00 pm

セミナータイトル:
 「酸素分子の光解離における同位体効果と地球風仮説の検証」
内容:
これまでのセミナーで話した内容を、修論発表会で話すことを念頭にまとめます。
 隕石の酸素同位体比測定から、Δ17O が-40‰ から +100‰ まで幅広い非質量依存同位体分別が報告されている。そのため、太陽系初期のイベントを知るためには平均的な太陽系の酸素同位体比がいくらであったのかが大問題となる。太陽系の質量の99パーセント以上は太陽にあるので、太陽の酸素同位体比を測る試みがなされた。アポロ計画が持ち帰ってきた月サンプルには長年太陽風が打ち込まれていると考えられ、月の表層の金属粒子に埋め込まれた酸素同位体比が測定された。Δ17O が+26‰ [Ireland et al., 2006] , +33‰ [Hashizume & Chaussidon, 2009] と -20‰, [Hashizume & Chaussidon, 2005] という大きな正負の同位体比異常を示すと報告された。この測定に対して、Ozima ら [2008] は、この同位体比異常は酸素が地 球の上層大気(高度300 kmから400 km)から月まで運ばれて、月の表層に埋め込 まれたことによるという仮説を発表した。
 本研究の目的はこの仮説を、同位体比の面から検証することである。地球の上層大気では同位体比に影響を与え得る同位体交換反応や紫外線による分子の解離、イオン化が起こってい る。そのうち紫外線による光解離に注目し、その反応速度を量子力学の方法で同位体ごとに計算し、光解離の同位体効果を定量的に議論する。




第20回宇宙地球同位体科学セミナー(2009年度)

speaker: 佐竹 渉(東大院理・地球惑星科学専攻 宮本研究室 M2)
place: Room851 理学部1号館
time: 2010年 1月 14日〔木)、5:00 to 7:00 pm

セミナータイトル:
 「Iron micro-XANES analysis of Martian meteorites: Implications for the redox states of shergottites」
内容:
 シャーゴッタイト火星隕石は岩石学的特徴により玄武岩質、レールゾライト質、カンラン石フィリック質に細分され、また化学的特徴によって独立にDepleted、Intermediate、Enrichedに細分されている。シャーゴッタイトの化学的特徴はマグマの酸化還元度合いと対応しており、火星マグマの起源を考える上で重要な情報となっている。これまでに見つかっているレールゾライト質はすべてIntermediateの化学的特徴を持つが、最近発見されたシャーゴッタイトの中には、岩石学的にレールゾライト質に似ているが、カンラン石フィリック質の特徴も併せ持つものが見つかっている。これらの試料は、Enrichedな化学的特徴を示すことが分かっているが、これまでに見つかっているシャーゴッタイトと同じく酸化的な特徴を示すかは明らかにされていない。そこで我々は、これらの新しいシャーゴッタイトと、結晶化時の酸化還元状態が他のシャーゴッタイトと差があるかを主に鉄マイクロXANES分析により調べた。




第21回宇宙地球同位体科学セミナー(2009年度)

speaker: 白川慶介(地球惑星科学専攻 星野研究室 M2)
place: Room851 理学部1号館
time: 2010年 2月 18日〔木)、5:00 to 7:00 pm

セミナータイトル:
 「磁気回転系における乱流の生成」
内容:
 宇宙空間には中心星の周りにガスが円盤状に回転している構造が普遍的に見いだされる。これらガス円盤の中には、回転しているガスがゆっくりと中心星に落下しながら重力エネルギーを解放しているものがあり、特にこれを降着円盤と呼んでいる。回転している物体を落下させるには、物体のもつ角運動量を強力な粘性によって効率的に輸送する必要があるが、この強力な粘性の生成機構として磁気回転不安定性が生成する乱流の効果が指摘されている。磁気回転不安定性は1950-60年代にかけてVelikhovやChandrasekharによって提案されたプラズマ不安定であるが、天文学における重要性は1991年Balbus and Hawleyによって指摘された。以来、宇宙空間における応用が精力的に研究され、近年では惑星形成論においても重要な役割を果たす可能性が指摘されている。
 本セミナーでは、磁気回転不安定性の成長過程および不安定条件について議論する。また、磁気回転不安定性の理論の原始惑星系への応用についても議論したい。




第22回宇宙地球同位体科学セミナー(2009年度)

speaker: 白井厚太朗(地球惑星科学専攻 棚部研究室 PD)
place: Room851 理学部1号館
time: 2010年 2月 25日〔木)、5:00 to 7:00 pm

セミナータイトル:
 「ウナギの耳石酸素同位体局所分析による産卵水温・水深の推定」
内容:
 これまで成熟したウナギは海で採取された事がなく,ウナギの産卵生態は長年の間謎であった.ニホンウナギに関しては,生まれて数日齢のプレレプトセファルスが産卵期にマリアナ海嶺で採取されていたが,ついに2008年,成熟したニホンウナギがマリアナ海嶺で採取され,長年なぞに包まれていたニホンウナギの産卵 場所が明らかになった.しかし,ウナギの産卵水深や孵化水温はいまだにわかっていない.それらの知見は水産資源が激減している昨今において,未だ確立していない完全養殖を成功させるために必要不可欠な知見である.そこで本研究は耳石の酸素同位体比を二次イオン質量分析計を用いて局所高精度分析を行なう事で,ニホンウナギの孵化水温を明らかにすることを目的とした.まず,水温を一定に保った水槽でシラスウナギを飼育し,飼育期間に成長した部位のみを分析する事で,微小領域における温度換算式を見積もった.その結果,酸素同位体比と水温は明瞭な負の相関を示す事がわかった.次に,ウナギの核の部分の酸素同位体比を分析し,温度換算式から孵化水温を見積もった.その結果ウナギの孵化水温は約26℃であり,水深150-170mに相当する事が明らかとなった.
 発表では,ウナギの生態についてを重点的に説明し,二次イオン質量分析計による局所酸素同位体分析がウナギの生態を研究する上でいかに新しい切り口となるかを紹介したいと思います.




第23回宇宙地球同位体科学セミナー(2009年度)

speaker: 比屋根肇(地球惑星科学専攻 准教授)
place: Room851 理学部1号館
time: 2010年 3月 11日〔木)、5:00 to 7:00 pm

セミナータイトル:
 「希土類元素の分別からみたNingqiang隕石細粒CAIの生成環境(2)」
内容:
Ningqiang隕石中のCAIから多くみつかった、『超難揮発性の重希土類が欠乏する 一方で比較的揮発性の高いCe-Eu-Ybが過剰に存在するようなパターン』をもに、 とくに細粒CAIの生成環境について議論する。

これら特徴的な希土類元素パターンの生成メカニズムとしては、
(1)超高温で凝縮相(超難揮発性ダスト=重希土類に富む)が取り除かれた 残りのガスからの凝縮パターン(グループII)の生成との関連で、それより少し 低温でダストが分離したため、軽希土類にも分別が起こり、その残りのガス からCAIが凝縮した、
(2)グループII 的なCAI(またはその前駆物質)が先に生成し、それがCe-Eu -Ybに富む比較的低温の領域に移動し、そこでCe-Eu-Ybの凝縮が生じた、 というふたつの可能性が考えられる。

今回は、とくにデータの解析に重点をおいて細粒CAIの生成条件を考察する。具 体的には、希土類元素の過剰・欠乏などの間の相関に注目し、データをさまざま なグラフにプロットすることにより、上記(1)、(2)の可能性を吟味する。 その結果は、強く(2)を示唆する。
そしてそこから示唆される細粒CAIの生成環境は・・・




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