セミナータイトル:
「Deciphering the early Solar System chronology and planetary chemistry using meteoritic zircon」
内容:
太陽系初期には,宇宙塵の蒸発・凝縮,集積,微惑星形成,ジャイアントインパクト,コア形成,マグマオーシャン形成など,その後の惑星の運命を大きく左右するようなイベントが,<10Myrの間に起こっていたと考えられる.これらのイベントが,いつ・どのように起こったかを正確に知ることは,太陽系及び惑星進化を理解する上で,必要不可欠である.これらの初期太陽系イベントの年代測定には,短寿命核種を用いた同位体年代法が多く用いられている(例えば,Hf-W年代法は凝縮過程やコア形成,Nb-Zr年代法はマグマオーシャンの固化の年代測定に適用できる).しかし,短寿命核種同位体年代法は,相対的な年代順序しか与えないため,年代分析結果を絶対年代になおすためには,短寿命核種を用いた相対年代法に絶対年代基準を与える必要がある.具体的には,太陽系初期のあるイベントについて,短寿命核種同位体年代法と,U-Pb同位体を用いた絶対年代法を,両方適用することにより,相対年代法と絶対年代法を相関させることが可能となる.これまでに,いくつかのイベントについて,相対年代法と絶対年代法の両方が適用されてきたが,それらの結果は調和的ではない;相対年代法により求められる複数のイベントの年代差は,絶対年代法から求められるそれと,矛盾している.この矛盾の原因として,次のような点が考えられる.
speaker: Daniele L. Pinti
(Universite du Quebec a Montreal and visiting professor of Ocean Research Institute, the University of Tokyo)
place: Room851 理学部1号館
time: 2009年 7月 9日〔木)、5:00 to 7:00 pm
セミナータイトル:
「Mantle noble gases in a passive continental margin: What is going on in
Eastern North-America?」
内容:
Sparse studies in the last decade showed that continental fluids
(natural gas and groundwater) in the Eastern North-American passive
margin (New York, New England, Pennsylvania) show relative high mantle
noble gas signature with 3He/4He ratio up to 1.6 Ra. Recent work in the
intracratonic Michigan Basin showed “lower mantle” signatures with solar
Ne. We analyzed He to Xe isotopes in brines from Quebec in the foreland
bulge of the Appalachians and we found He, Ne and Ar of mantle origin.
Although somehow ambiguous, some signature suggests the possible
injection of mantle fluids with “lower mantle” isotopic composition, in
particular solar Ne. Magma aging models suggest a magmatic source
emplaced in the last 150 Ma which could corresponds to the passage of
the Great Meteor hot spot, which might be responsible for the formation
of the alkaline magmatism of the Monteregian Hills. If this localized
source could explain our data it is to question whether a much larger
continental-scale processes could have contaminated with mantle noble
gases the brines and natural gas accumulations of the eastern
North-American passive margin.
セミナータイトル:
「Mantle noble gases in a passive continental margin: What is going on in
Eastern North-America?」
内容:
中央アフリカ・ガボン共和国に存在するオクロ・オケロボンド・バゴンベウラン鉱床は,今から約20億年前に大規模な核分裂連鎖反応を自然発生的に起こした特異的な場所(天然原子炉)である。天然原子炉試料内の同位体組成は核分裂反応,中性子捕獲反応,放射壊変の組み合わせによって変動しているため,同位体組成を調べることによって,原子炉稼働条件の見積もりや長期間における放射性核種ならびに核分裂起源核種の移行挙動を調べることが可能である。また,使用済み核燃料の地層処分の安全性を評価する上で,天然原子炉試料内の核分裂起源核種の長期間における地球化学的挙動を調べることは重要な知見をもたらす。
本発表では,オクロ地域で発見されている16か所の原子炉ゾーンのうち,核分裂による発生エネルギーが高く,風化の影響をほとんど受けていない原子炉13の試料を用いた2つの研究を紹介する。
1.Zr,Mo,Ru,Pb,U同位体組成からみた金属微粒子の形成メカニズム
核分裂起源核種の中でも,Mo,Tc,Ru,Rh,Pdは核燃料内で金属微粒子を形成することが知られており,同様の化学組成を持つ金属微粒子がオクロ天然原子炉中からも発見されている。本研究では,原子炉13から採取した試料について電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いた主成分元素定量分析を行い,金属微粒子の同定を行った。次に,同定された粒子について高感度高分解能イオンマイクロプローブ(SHRIMP)を用いたZr,Mo,Ru,Pb,U同位体分析を行った。 99Ru/101Ruは天然のRuと核分裂起源Ruの2成分混合では説明できない同位体異常を持つことが明らかになった。99Ruは半減期約21 万年の99Tcによって生成されるため,TcがRuより選択的に金属微粒子に取り込まれることで99Ruの過剰を示すことが報告されているが(Hidaka et al., 1999),本研究で観察された99Ru/101Ruは過剰と減少の両方を示した。この結果から,金属微粒子の形成環境は局所的に酸化還元状態が異なっていた可能性があり,核分裂起源RuとTcは幅広い割合で化学分別を起こし粒子内に取り込まれたと考えられる。
天然原子炉での235U/238Uは235Uの核分裂反応のため一般に減少する傾向にあ
るが,本研究での金属微粒子においては減少と過剰を示した。原子炉部分に存在する238Uは中性子捕獲反応を起こすと239Pu(半減期24100年)を生成し,239Puは235Uへα壊変をする。金属微粒子内の235U/238Uの過剰は,239Puがまだ原子炉内に存在している間に,Uとの間で化学分別を起こし,金属微粒子内に取り込まれたためであると考えられる。
2.高エネルギー粒子の照射によって生成されるナノスケールダイヤモンドの検
出(進行中)
多結晶質ダイヤモンドであるカルボナドの成因として,核分裂の際に放出される高エネルギー粒子が天然に存在する炭質物に照射されたことによって出来たとする仮説(カミンスキー仮説)を物質科学的側面から実験的に検証するために,原子炉13試料中の炭質物を用いてダイヤモンド成分の存在の有無を確かめる。原子炉ゾーンで発生した核分裂による放出エネルギーは,通常のウラン鉱床の自発核分裂がもたらすそれと比較すると少なくとも数十万倍に及ぶ。また,これらのウラン鉱床中でかつて核分裂反応を起こしていた部分には多量の炭質物が含まれていることが報告されている。カミンスキー仮説が正しければ,天然原子炉試料中にダイヤモンドが存在している可能性は極めて高い。
本研究では,原子炉13からの試料を用いて,ダイヤモンドが濃集していると予想されるフラクションを化学分離することを試みている。分離するダイヤモンドはナノスケールであることが予想されるため,化学操作は炭素質コンドライト隕石からナノメートルサイズの微小ダイヤモンドを分離する手法(Amari et al.,1994)に基づき行っている。