太陽惑星系科学

太陽惑星系科学

私たちの住む地球も含め、太陽系内の惑星は、太陽や惑星を取り巻く宇宙空間の影響を常に受けています。太陽からは、太陽放射と太陽風と呼ばれる物質流が放出されていますが、その変動は太陽活動に起因しています。本講座では、太陽惑星系のエネルギー源となる、太陽黒点の変動、太陽フレアの発生、コロナの加熱問題に、スーパーコンピュータを使った大規模シミュレーションなどを駆使して挑むとともに、オーロラや放射線帯変動、ジオスペースストームといった宇宙天気現象を引き起こすメカニズムの解明に、あらせ(ERG)等の国内外の科学衛星観測、レーダーなどの地上観測、および数値実験を組み合わせて、取り組んでいます。
惑星は、太陽からの距離、大きさ、固有磁場、大気など、様々な点で異なった特徴を持っています。太陽惑星系はこれらが複雑に相互作用する複合システムですが、異なる条件をもった他惑星の研究を行うことで、特定の要素の影響を切り出すことが可能となります。例えば、地球のように強い固有磁場を持たない火星や金星の研究をすることで、惑星の固有磁場が惑星表層環境の変動に与える影響を明らかにできると考えています。本講座では、ひので(太陽観測)、ひさき(惑星望遠鏡)、MAVEN(火星)、BepiColombo(水星)など、国内外で進行・計画中の太陽・惑星探査計画との連携を重視して比較惑星研究を推進しています。
以下では、主な研究テーマについてご紹介いたします。

太陽研究

太陽軟X線全面像(JAXA宇宙研提供)

太陽は地球にもっとも近い恒星で、古くから研究されている身近な天体ですが、数多くの謎の舞台でもあります。太陽活動が極大期に近づくと、フレアと呼ばれる爆発現象が数多く発生します。現在の太陽系における最大級のエネルギー解放現象です。磁気エネルギーが磁気リコネクションという機構で一気に解放されるのですが、いっぽうでその物理理論はまだ完璧ではありません。また、太陽の最外層大気であるコロナは内側より高い数百万度もの温度を持っており、熱伝導とは異なる、磁場に依存したエネルギー輸送が重要だというところまでは同意ができています。しかし、その輸送の具体的な物理機構については詳細はいまも謎のままです。太陽磁場の起源についてはこちら(ダイナモへのリンク)を参照ください。

地球磁気圏、宇宙天気現象の基礎研究

あらせ衛星による地球磁気圏でのプラズマ・
電磁波動観測

固有磁場を持つ地球は、太陽風プラズマと相互作用して磁気圏を形成しています。この地球磁気圏は太陽風や地球超高層大気を起源とするプラズマで満たされていて、太陽風の変動に伴い大規模でダイナミックな現象が見られます。例えば、磁気リコネクションに伴うオーロラ現象や、放射線帯などにおける高エネルギー粒子加速は、太陽風のエネルギーが磁気圏に輸送・蓄積され引き起こされます。これらのエネルギー流入やプラズマ輸送・加速機構を観測的・理論的に解明することを目指して研究を進めています。2016年度には放射線帯電子や環状電流を担うイオンの加速機構などの解明を目指して「あらせ(ERG)」衛星が打ち上げられ、地上観測や数値実験と連携しながら、国際的な共同研究が展開されています。本講座は、ERGプロジェクトの衛星観測、数値実験において重要な役割を担っています。こうした研究は、ジオスペース(Geospace:地球周辺の宇宙空間)の環境を解明し、人類の宇宙利用のための社会基盤(人工衛星・宇宙ステーションなど)の発展にも寄与します。

太陽惑星系の多様性と普遍性を知る比較惑星研究

火星の気候変動と火星探査機MAVEN(©NASA)

地球は惑星表面の約70%を海に覆われた水惑星であり、適度な大気圧と温室効果ガスを含む大気が、私たちの住むこの星を、温暖湿潤で地球型生命にとり生存可能な(ハビタブルな)環境に保っています。惑星が地球型生命生存に適したハビタブルな環境を持つことができるかどうか、惑星表層環境の理解には、大気圏の役割を考慮することが不可欠です。太陽系内の惑星は、太陽からの電磁放射(太陽放射)と質量放出(太陽風)の両方に常に曝されて進化してきました。例えば、火星は、宇宙空間への大気流出により、かつて温暖湿潤だった気候を失ったと考えられていますが、そのメカニズムはよくわかっていません。中心星である太陽の進化に対し、太陽惑星系がどのように応答し進化してきたのか。水星、金星、地球、火星、太陽系にある地球型惑星の表層環境が大きく異なるものになった理由は何なのか。本講座では、NASAの火星探査機MAVEN他、関連する惑星探査機のデータ解析と数値シミュレーションを組み合わせて、太陽惑星系の多様性と普遍性の解明を目指して研究を進めています。また、固有磁場強度が惑星からの大気流出に与える役割の研究など、太陽系惑星の知見を系外惑星に応用する研究も行っています。

外惑星磁気圏の研究

ひさき衛星が明らかにした木星周辺の
重イオンが放つスペクトル

木星や土星などの太陽系外惑星は地球の何倍もの強力な固有磁場を持っています。そのため、極域におけるオーロラ発光や、相対論的な粒子加速現象など興味深い物理現象が数多く繰り広げられています。また、激しい活火山や分厚い氷の下に隠された地下海など、多種多様な特徴をもつ衛星を数多く有しており、重イオン供給や磁場擾乱などを通して惑星磁気圏全体に対して様々な影響を及ぼしています。私たちの研究グループは、木星探査機Galileo(NASA)や、土星探査機Cassini(NASA)、ハッブル宇宙望遠鏡(NASA)、また2013年から木星観測を続けている宇宙望遠鏡ひさき(JAXA)のデータを用いて、地球と大きく異なる磁気圏環境の理解を目指した研究を行っています。

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