Abstract
火星隕石、特にシャーゴッタイトは、火星から脱出する際に強い衝撃を受けた可能性があり、様々な衝撃組織を示す。中でもカンラン石の黒色化は火隕石に特有であり、これまでその形成過程や形成条件がNWA 2737(シャシナイト)の研究にもとづいて議論されてきた(e.g., Treiman et al., 2007; Van de Moortèle et al., 2007; Bläß et al., 2010)。しかし、NWA 2737は複雑な衝撃履歴を持つと考えられており(e.g., Bogard and Garrison, 2008)、NWA 2737中の黒色カンラン石はシャーゴッタイト中の黒色カンラン石とは異なる様相を示すため、黒色カンラン石の形成過程・条件はシャーゴッタイトとNWA 2737とで異なると考えられる。本研究ではシャーゴッタイト(及び黒色カンラン石)を様々な手法(偏光顕微鏡、SEM、EPMA、TEM及びSTEM、SR-microXANES、Raman分光)で観察、測定し、衝撃回収実験(及び加熱衝撃回収実験)やiSALEによる衝撃シミュレーションを組み合わせることで多方面から黒色カンラン石の形成過程、形成条件を制約し、黒色カンラン石を含む隕石の衝撃温度圧力履歴の解明をおこなった。